「香港自治法」も米上院を通過、「香港人権法」より中国に痛い?

2020年06月28日 06:00

2019年9月、デモを取り締まる香港警察(Jonathan van Smit/Flickr)

米上院は25日、全会一致で「香港自治法」通過させた今後、下院通過大統領の署名を経て成立する。この法案は筆者が5の「“国家安全法”導入で米国が“香港人権法”発動、別の制裁案も準備」と題した拙稿で、「別の制裁案」として触れた二つの法案のうちの一つ。

法は民主党のクリス・バンホーレン上院議員と共和党のパット・トゥーメイ上院議員の共同起草。前稿で「強烈な中国制裁案」と書いたが、中国にはかなり厳しい内容のようだ。25日にバンホーレン議員がアップしたサイトには以下のように書かれている。(以下、拙訳を要約)

香港での中国共産党の増大する大胆な干渉に対して導入する「香港自治法」は、英中共同宣言香港基本法に基づいた中国の香港に対する義務に違反する団体に強制的な制裁を課す。またこの法律は香港基本法に違反してその団体と取引を行う銀行に強制的な二次制裁を課す。

本日、上院は中国とその代理人による香港の自由と民主主義を消滅させる継続的な取り組みに、責任を取らせるための意味ある行動をとった。この法律は米国が香港の人々と共にいるという超党派の強いメッセージを送我々は中国政府に、香港での自由を抑圧する継続的な取り組みをやめるよう要請する。彼らがそれを続けるなら代償を払う必要があ。下院の同僚遅滞なく取り上げるよう要請する。

トゥーメイ上院議員は「本日、上院は北京の共産主義政権に立ち向かい、香港の人々と一緒に立ち上がった」「この法案で制定された強制的な制裁措置は、香港の自律性を損な香港人に約束された基本的な自由を侵食しようとする中国にいる者を罰する」と述べた。

バンレン上院議員とトゥーメイ上院議員香港自治法は以下に対して制裁を課

  • 中国の義務違反について、実質的一因となる人物または団体。
  • 例えば、香港の抗議者を厳しく取り締まる警察部隊、あるいは香港に「国家安全法」を導入する責任を負う中国共産党当局者を含む場合がある。
  • 上記の個人または団体と「重要な取引」を行う金融機関。
  • この法律はまた、香港人が北京からの迫害や暴力に直面して危機にある場合、合法的に米国に入国する資格を得るのを認めることに支持を表明する。

バンホーレン議員のサイトにはThe bill text can be found hereとして法案のPDFにリンクが張られているので、興味のある方はご覧願う。

ここで香港に係る米国の国内法を整理すれば、先ず977月の中国返還と同時に「香港政策法」が成立した。同法では、共同宣言や基本法にある「一国二制度が守られる前提の下、香港での通商や投資に対し中国本土とは異なる優遇を認めるという米国の措置された

その後148全人代常務委員会は17に行われる香港行政長官選挙から、北京が認定する指名委員会の支持を受けた者だけが立候補できるとした。これに香港人は、いわゆる雨傘運動で対抗したものの失敗に終わった。15年には北京批判本を扱う銅鑼湾書店関係者の失踪事件が起きた。

2014年の雨傘運動(流璃/Flickr)

これらの事件で危機感を持った米議会は、「香港政策法」を強化見直しする「香港人権法」1411月に提出、17年まで継続審議されたが可決に至らなかった。そこへ19年春から「逃亡犯条例改正」に反対するデモが香港で始まり、6月以降、大規模デモに発展した。

米議会は6月、「香港人権法」に、米国市民への安全保障や輸出管理法に対する中国の違反行為の検証要求など加え1015日に下院、1119日に上院で修正通過、翌20日に下院が上院修正案を可決した。これを1127トランプ大統領署名して成立した

雨傘運動からは5年掛かったが、去年6月の大規模デモからは早かった。下院可決からトランプ署名まで1ヵ月半だ。「香港自治法」も上院は超党派の全会一致だし、対中問題での議会の結束を見れば7月中には下院を通過するだろう。大統領選を控えたトランプ署名しないはずがない。

中国は「国家安全法」施行に向け作業中だが、この「香港自治法」上院通過は、中国への牽制になるだろうか。ポンペオ国務長官は26日、香港の「高度な自治」を侵害した疑いのある中国共産党の複数の現職退官者(親族を含む)に対し、ビザの発給を制限する制裁を科すと発表した。

「香港自治法」では、大陸にいる中国人や団体やそれらと取引した外国銀行などを対象とする在米資産凍結や、その個人や団体取引する外国の金融機関の米銀との取引禁止ドル取引の制限)などが行われる。「国家安全法」の下で香港に置かれる中国の警察部隊も対象になる。

バンホーレン議員がロイターに述べた通り、「香港自治法」は中国共産党の「痛いところ」を突が、香港への副作用は「香港人権法」の方が強い。このまま北京が「国家安全法」強行すれば、やがて香港は沈み、香港人は目下の自由と繁栄を失うだろう。

旅券発給を表明した英国や受け入れに熱心な台湾と同様、「香港自治法」が「香港人が北京からの迫害や暴力に直面して危機にある場合、合法的に米国に入国する資格を得るのを認めることに支持を表明する」のは、北京への牽制と同時に香港沈没後の香港人救済を睨んでいる。「ああ哀れ、香港」。

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