上がる路線価、下がる先行き期待

2020年07月02日 14:00

相続税などの計算基礎となる1月1日付の路線価が発表され、昨年比1.6%増となり、5年連続の上昇となりました。ただ、都道府県別に眺めてみると東京の5.0%増を別にすれば沖縄(10.5%増)や北海道(3.7%増)といったリゾート地需要、福岡(4.8%増)、宮城(同)が目立つほかは前年比マイナスが26県もあるなどまばらという印象があります。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

また、この路線価が1月1日付の評価でコロナの影響が全く入っていないため、大きくブレた場合には先々修正する含みも持たせました。路線価は公示価格と共に景気のうち不動産に関するバロメーター的な役割を果たしているのですが、この先をどう評価するか、悩ましいところです。

実は私は今、東京である不動産を購入するか最終決定をするところにあります。数年前に狙っていた土地でしたが、当時は売主の気持ちが定まらず、流れていたのですが、コロナでディールが動いたのです。しかも価格は思ったより下がっています。ただ、私も今回は慎重にならざるを得ず、また当該不動産を見たのは3年も前。土地勘はあるとはいえ、私が日本に行けないので見ないで購入を進めるのもやや躊躇すると申し出たところ、更に5%ほど値段が下がりました。まるでバナナのたたき売りのようなもので価格的には申し分ない水準に落ちています。

こういう経済状況になると売りも買いも細ります。細ると誰が困るかといえば不動産仲介業者なのでしょう。仲介する物件がなければやっていけません。その時に大事にするのは誰か、といえば数少ない買い手なのかもしれません。

開発につきものの建築業者も手が空いてきています。ということはこちらも交渉余地が大いにありそうです。嵐の中でいつか晴れると思い、事業を進めるのはリスクはありますが、常識的な水準からはかなり下回っており、ヘッジは効くのだろうと思います。

私はここバンクーバー近郊でも開発案件を進めているのですが、同様に変わったと思うのは建築ブームが去って業者の手が空いてきているのです。私が土地用途申請や交渉で役所に何度か行った際もほとんど他業者を見かけることはなく、建築業者の選定段階に入った今、いくらでも業者の候補はあるのです。数年前には業者が「どうしてもというならやってやる」ぐらいの勢いでした。今は180度変わりました。

さて、日本の不動産。需要はあるのか、といえば賃貸住宅の場合、限られたパイの奪い合いということかと思います。外国人労働者は当面増えないとみていますので安い価格で提供していたタコ部屋、価格重視型のシェアハウスは厳しい状況に追い込まれると思います。

また、全般的に賃貸価格の競争が激化する可能性がありますので当然賃料は低下するサイクルに入ると思います。となれば一般的には古い物件は不利になりますのでそのあたりで賃借人の物件間の移動はあり得るのだろうと思います。ただし、一定年齢以上の高齢者で収入が少ないような方の場合には逆に動けず、古い物件に「いつく」形になるかもしれません。

日本の不動産賃貸価格は二極化しており、安い物件となると経済水準、生活水準的にみて比較しやすい北米、アジア主要都市と比べかなりお得感があります。都心からさほど離れなくても一人住まい用の部屋で選ばなければひと月6-7万円程度でしょう。そんな賃料は当地の高級ホテル1-2泊分程度と同等です。日本人の勤労者の一般的な収入が低いことと住宅費のウェイトを減らしてでも飲食、服飾、娯楽向けの支出に振り向ける傾向が強いのかもしれません。

いずれにせよ、今後はリモートワークができるようなスペースがある住宅など工夫次第で需要は生み出せるのですが、アパートローンに懲りた銀行がそもそもお金を貸したがらない時代の上に景気の先行きも不透明なことから5-6年続いた不動産ブームも終わりが近いのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年7月2日の記事より転載させていただきました。

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