地盤培養行為としての金銭授受を事実上容認していたかのような解説は危険

2020年07月06日 06:00

私は政党の支部長として様々な選挙の現場を見てきたが、地盤培養行為としての金銭授受が事実上容認されている、などという認識を持ったことは一度もない。

お歳暮であちらこちらに鮭を贈って、警察の捜査を受けて大変な目に遭った衆議院の立候補予定者がいたことは地元の選挙雀の間で評判だった。

お中元やお歳暮を贈るだけで贈った人も贈られた人も全員事情聴取の対象になってしまうのだから、いくら地盤培養行為などと如何にも政治活動の一環のような体裁を繕っても、現金を封筒に入れて配るような人は普通はいない。

陣中見舞いや当選祝いとして1万円を包んで選対に届けることは確かにあったが、これはいわゆる社交儀礼の範囲内のことで、10万、20万、30万などという大金を当選祝いや陣中見舞いとして届ける人はいない。

一応社交儀礼の範囲内と思われる1万円の陣中見舞いでも、公明党の議員の陣営からは、これは受け取れません、などと言ってわざわざお返しに来られることがあったくらいである。

選挙の現場にいる方々は、金銭の授受には結構敏感である。

かつて、ある選挙区で、地域支部の経費に充当してもらう趣旨で、一律に10万円入りの封筒を市会議員の下に届けた候補者がいた。地盤培養行為と言えばこれこそまさに典型的な地盤培養行為だろうが、結局は、渡した本人も受領した市会議員も全員逮捕され、全員議員辞職を余儀なくされた。

確かに警察と検察では法の解釈運用に若干の違いが生じることがあるが、取調べ当局が黒だと認定している時に、部外者が白だ、白だ、以前はこんなものは摘発されなかった、などと言っても何の役にも立たない。

所によっては地盤培養行為の一環としての金銭の授受が事実上容認されているように思えるようなところがあるのかも知れないが、大方は密室でのやり取りで、両当事者とも頑強に金銭の授受を否定しているか、かりにあったとしても一方の供述だけで、金銭授受を裏付ける具体的な証拠がなく、検察当局として立件を躊躇せざるを得ない場合ではなかろうか。

地盤培養行為としての金銭授受だと抗弁するためには、政党支部から政党支部への正規の金銭提供であることを示すために銀行振り込みにするのが普通であって、第三者がいないところで現金入りの封筒をそっと渡したり、相手の懐に捻じ込んだりはしないものである。

選挙の現場を経験したことがない方は、あれこれ理屈を捻り出されるが、どうも実態とかけ離れており、鵜呑みにはされない方がいい。

選挙のことは、選挙の実際を知っている人に聞かれた方がいい。
まあ、本当のことをそう簡単に教えてくれる人はいないだろうが…。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2020年7月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。

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