都知事選、落選者の顔

都知事選は想定通りの結果となり、報道各紙はおおむね、「小池都政、難局の第2期目」といったトーンが多いと思います。1期目も難局だったと思うし、誰がいつの時代にやっても難しいのですからもう少し考えたヘッドラインにしてもらえないかと思います。

(編集部撮影)

(編集部撮影)

さて、今回の都知事選は22名も候補者が飛び出したのが話題になりましたが、候補者は300万円の供託金を預けます。このお金が返ってくるのは有効投票数の10分の1以上を取った場合です。有権者数1150万人、有効投票率55%として633万票の10分の1、つまり、概ね63万票を獲得しないと300万円は没収になります。本原稿を書いている開票率95%の時点で63万票を取っているのは小池氏、宇都宮健児氏、山本太郎氏まで。それ以外の方は残念ながら没収となりそうです。

それでも立候補するのは売名なのか、自信過剰なのか、ウケ狙いなのか、本気だけどハードルがみえないぐらい高すぎたのかいろいろあると思います。しかし、300万円で一応メディアに登場できるし、自分の履歴に「2020年都知事選候補」と書けるので私は悪いディールではないと思います。

以前、桜井誠氏が10万票が候補者として認知されるかどうかの一つの境目、と述べていました。氏は前回の都知事選は11万票で票数だけ見れば「よくできた」と自分でも満足だったようです。その桜井氏、今回は17万票まで数字を伸ばしてきていますので「成長の過程」は見て取れると思います。ちなみにこの10万票の壁を乗り越えたのは小池、宇都宮、山本、小野、そして桜井氏の5名のみであります。

ところで今回の選挙戦の報道を見ていて気になったのは「主要5氏」というくくりです。ほぼすべてのメディアがこの5氏とその他、つまり、フロントラインとバックダンサー的な表現でした。ただ、その5名のうち、若干一名、なぜフロントラインなのだろうと思ったのが立花孝志氏。衆参それぞれ1議席ずつ持つからなのでしょうか?そう考えれば山本太郎氏のれいわ新撰組は参議院に2議席あるからということなのでしょう。

しかし、立花氏は現時点で4万票に届かないのです。選挙で何連敗されているのかもう数えられませんが、ホリエモン新党などとして選挙ポスターで両脇を固め、あの籠池さんの顔写真を入れるところは全くいけていません。それなのに主要5氏?私は形式より実態を取るべきだったのではないかと思います。とすれば今回は主要4氏ないし、桜井氏を入れて主要5氏だったと思います。

もうすこし、落選者を見てみましょう。選挙公報をみると圧縮表記をする候補者もいるせいか、まるで週刊誌の吊り広告のような感じです。多くの落選者の共通点は一点突破型。「庶民と動物に優しい東京に」「消費税廃止」「風営法の緩和」「未来の薬局を目指す」「コロナ治療薬と新薬を発明しました」「コロナはただの風邪」。中には「台湾の祖国日本復帰」なんていうのもあります。

さて、有力候補で野党からのバックアップがあった宇都宮氏が83万票で100万票にすら行かないのはなぜなのでしょうか?山本太郎氏と票を食い合ったという説明もありますが、二人合わせても150万票に届きません。小池氏は360万票近くになりますから二人がかりでも足元にも及ばなかったということになります。

宇都宮氏の敗因は訴えたいことがなかったのだろうと思います。公報を見るとわかるのですが、彼の公約はブレーキをかけることが主役で東京という経済の中心でアクセルを踏み込み、リーダーシップをとるという部分が欠落しています。確かに都民には高齢者もより増え、保守的な人も多く、変わることを求めない人は多いのですが、都政を考えると世界の顔役を打ち出さないと難しいでしょう。

山本太郎氏はなぜ10万円のバラマキに固執するのか全然わかりません。国からその財源をと言いますが、コロナでヘリコプターマネーをするよりも安心安全をまずは売り込まねばダメではないのでしょうか?トークのうまさと10万円に釣られた方もいらっしゃると思いますが、世の中、そんなに甘いものではないと思います。

こう見ると小池氏以外は泡まつ候補だったのでしょうか?都政のコントロールは国政とのリンクも密接ですのでプロか本当に向いている方がやらないとまた投げ出すことになるのでしょう。言い換えれば都知事はなるまでよりなってからの方が大変ともいえるわけで小池氏はその点、第1期に合格点が与えられたといえるのでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年7月6日の記事より転載させていただきました。