「バイデン政権誕生を悲観するべからず」、ウォール街がエール送る

2020年07月08日 06:00

カバー写真:Jens Schott Knudsen/Flickr

トランプ政権の最大の功績は、税制改革法案の成立でしょう。

法人税(35%→21%)を始め所得税、相続税の引き下げなどが盛り込まれ、2018年の成長率は2.9%増とトランプ政権の目標値3%近くへ導いたものです。しかし、バイデン政権が誕生すれば、同氏が6月29日に「ほぼ全てのトランプ減税を撤廃する」と断言した通り、法人税は少なくとも21%から28%へ引き上げられるでしょう。

また、最低賃金の引き上げも盛り込まれ企業の打撃となること必至です。さらに、高所得者層を中心に所得税減税が巻き戻される見通し。所得税減税は2025年までの時限措置のところ、一部で延長が期待されていただけに高額消費を中心にダメージを与えかねず、バイデン大統領の誕生は米株安要因と目されてきました。

しかし、バロンズ誌のコラムで登場し、年始のビックリ10大予想で知られるブラックストーンのバイロン・ウィーン氏を始め、ウォール街はバイデン政権誕生イコール米株安という方程式を覆そうとエールを送っています。

JPモルガン・チェースの株式ストラテジストは、バイデン政権誕生をめぐり「米株にとってわずかにポジティブあるいは中立」と判断しました。JPモルガンと言えば、最高経営責任者(CEO)は反トランプ寄りとして知られ、かつては「立候補すればトランプ氏に勝てる」と発言し話題に上がったジェイミー・ダイモン氏です。

トランプ政権でNEC委員長に就任する前のコーン氏(左)と肩を並べる、ダイモンCEO(左から2列目)=出所:Financial Times/Flickr)

そのJPモルガンは、法人税引き上げなどネガティブ材料が①インフラ投資②対中追加関税の引き下げ――の主に2つの柱によって相殺される見通しと分析します。

またJPモルガンは、バイデン氏が当選後「現状の脆弱な景気動向、ビジネスや雇用の回復状況を踏まえれば、成長を抑え2022年の中間選挙を危機にさらすような政策からシフトする」と予想。その上で、バイデン候補の最優先事項はコロナ禍以前の水準の経済回復に据えるとし、法人税率の引き上げも28%以下にとどまってもおかしくないと指摘します。

バイデン政権下での利点と関連推奨銘柄は、以下の通り。

・対中関税引き下げ:中国売上比率が高い企業の売上改善
→ボーイング、3M、P&G、ナイキ、デュポン

・最低賃金引き上げ:個人消費押し上げ
→アップル、ツイッター、フェイスブック、グーグル、ビザ

・オバマケアとメディケアの拡充:医薬品やドラッグストアの売上増加
→ジョンソン・アンド・ジョンソン、CVS

・環境重視の政策への転換:再生可能エネルギー、代替エネルギーなどへの税控除復活
→テスラ、ニコラ

個人的には、財政赤字が5月までの会計年度で既に1兆2,885億ドルと前年比で約2.5倍へ膨らむなか、インフラ投資の実現性に疑問を禁じえません。また、コロナ第2波懸念とブラック・ライブズ・マターの影響で関心が逸れがちとはいえ、対中感情は最悪な状況。

チャート:米国人の対中感情

(作成:My Big Apple NY)

ただバイデン政権が誕生してしまえば、通商法301条を根拠にトランプ大統領が米通商代表(USTR)を通じ対中関税を引き上げたように、その逆が可能となります。中国の元高官は「バイデン大統領の誕生はグローバリゼーションの復活と欧州各国など同盟国の結束を招き中国に不利」といった主張を展開し始めていましたが、果たして本当にそうなのでしょうか。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年7月7日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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