破天荒トランプ!大統領選もものともせずWHO脱退を通知

国連報道官は7日、米国がWHOからの脱退を通知してきたと発表した。トランプ大統領は5月18日、テドロスWHO事務総長に宛てた書簡で、昨年12月(あるいはそれ以前)からのCOVID19に関するWHOの不手際とその中国寄りの姿勢を縷説した上で、こう述べていた。

WHOが次の30日以内に大幅な実質的改善を約束しない場合、WHOへの米国の資金提供の一時的な凍結を恒久的なものにし、組織のメンバーであることを再検討することを私が貴殿に伝えるのは、それが米国大統領としての私の義務だからです。米国の納税者は私に、現状は明らかに米国の利益に役立たない組織に資金を提供し続けることを許しません。(拙訳)

筆者はこの30日間、テドロスの対応を注視した。が、6月1日のネット会見で、「米政府と米国民の世界の保健に対する数十年にわたる貢献と寛大さは計り知れず、世界中の公衆衛生に大きな変化をもたらした」、「この協力関係が続くことはWHOの願いだ」と述べたのみだった。

WHOと米国との実務者協議が一度報じられたが、WHOは何も発表しないまま期限を終えた。トランプは良く我慢しているなあ、と思っている矢先の報道に、米国では共和党内からも異論が出ているようだが、筆者は、さすがトランプ、とこの挙を高く買う。

Voice of Americaは7日、米国が正式にWHOからの撤退を開始」との記事で国内のトランプ非難ぶりを報じた。ライバルのバイデンは、「大統領になった初日にWHOに復帰する」とし、「米国がグローバルヘルス強化に従事していれば、米国人はより安全だ」と述べた。

感染症学会会長は、「我々が席を放棄すると、ウイルスと戦うための国際的な意思決定や、ワクチンや治療法を開発してアクセスする取り組みから外れ、COVID-19に脆弱なまま国際衛生の指導的立場を弱める。米国は、WHOなしではパンデミックの健康上のリスクに適切に対応できない」と嘆じた。

国連財団の会長は、「撤退は、ワクチンへのアクセスの拡大やポリオ、マラリア、HIVのような病気との闘いから保健体制の強化への取り組みに至るまで、米国人にとって重要な、世界的健康の優先事項で数十年にもわたって勝ち取った進歩をどこまでも危うくする」とした。

民主党では、ペロシ下院議長がトランプの決定を「実に無意味」とし、「何百万人もが危険に晒されているのに、大統領はウイルスを倒すための国際的な取り組みをやり辛くする」と非難、メネンデス上院議員もWHOを放棄すると「米国人は病気になり、米国は孤立する」と難じる。

Fox Newsは「ペンス、WHOからの撤退の批判に反発」との記事で、共和党アレキサンダー上院議員の「確かにWHOが間違いを犯したか見抜く必要がある。が、それを行うのは危機の最中でなく、対処の後だ」とし、「大統領の決定に同意しない」と談話を報じた。

そうかも知れぬと思いつつも筆者は、WHOと中国がこのパンデミックの最中、台湾になした酷い仕打ちを想起せざるを得ない。米議員らがトランプの執ったこの行動を挙って非難すればするほど、では台湾はどうなのか、との抑えようのない怒りが込み上げてくる。

ペンスは、「WHOは、中国で始まったこのパンデミックについて米国や世界に知らせず、1月と2月に不当な助言を出して世界を落胆させた」とし、「バイデンのやり方なら、数千万人以上の中国人が我が国に来てパンデミックを広め、さらに多くの米国人を危険に晒しただろう」と同僚議員に反論した。

欧州に目を転ずれば、独仏外相は6月25日にジュネーブでテドロスと共に会見、パンデミックと戦うべくWHOにより多くの資金、すなわち、ドイツは5億5,000万ドル以上と設備を、フランスはリヨンのWHO研究センターへの寄付1億ドルと、他にも5,600万ドルの寄付を行うと述べた。

この申し出にテドロスは、「私たちは今日、政治的および財政的に必要なすべての支援を得た。独仏両国はWHOと世界の健康の長い間友人だ」と感謝した。如何にもトランプへの当て付けがましいが、確かに19年に米国がWHOに寄付した推定4億1,900万ドルを補って余りある。

本人ツイッターより

昨今は米国のみならず世界中のメディアが、いくつもの課題に見舞われている目下のトランプの一挙手一投足を11月の大統領選挙と結びつけて報じる。だが、大統領選に無益とも思える今回のWHO脱退劇を彼らはどう捉えるのか。そしてなぜトランプはこの破天荒な行動に出たのか。

筆者はここにトランプの一貫した戦いぶりを見る。国境の壁、パリ協定脱退、人種差別抗議デモを煽るアンティファ批判、そしてWHO脱退、一見これらに脈絡はない。だが、トランプには、同じ敵がその背後で蠢くのが見えるのだろう。彼の強固な支持層の一部にも。

それはグローバリズム(最近はディープステートとも)と称されるものと、それに背乗りする共産主義的全体主義、すなわち中国共産党ではなかろうか。すなわち、環境ビジネス、難民ビジネス、そして国連機関に巣食うビジネスなどと、それらをバイアスを掛けて報じるメディアだ。

EUの枠組みで独り勝ちしたドイツがWHOに多額の支援をし、また再エネを拡大して、太陽光パネルで世界を席巻する中国を利するのは、東独出身のメルケルが一皮剥けば赤いからか。原発が主力のフランスがそれに付き合うのは、マクロンのナイーブさと武漢研究所設立に加担した贖罪だろうけれど。

斯様に孤軍奮闘のトランプだが、その書簡といえば金正恩宛のそれを思い出す。滋さんを亡くした横田早紀江さん宛の励まし書簡も記憶に新しい。今回のWHO脱退を見れば、トランプ書簡は必ず意味を持つ。正恩はトランプのこの暗喩を果たして理解するか。