一に人物、二に能力

以前あるインターネット調査で、「あなたご自身やあなたの生活にとって、現在、必要でないと思うもの」を問うた結果、1位「学歴」(28.6%)・2位「資格」(22.2%)・3位「車」(20.7%)・4位「生命保険」(14.0%)、といったものがありました。「学歴」で言うと、「男性の全年代で1位~3位、女性の全年代で1位~2位(中略)男女とも年代が高くなるほど必要としないと回答して」いたようです。

例えば私どもSBIでは、学閥・門閥・閨閥・性別・国籍等この類の全てを問いません。ですから入社時の私の最終面接では、「学校の成績がどうだったか」や「大学の出身はどこか」、あるいは「大学を出ているか否か」等々に触れることはありません。私が多くの人を採用し登用する基準は、一に人物、二に能力や知識です。能力を見る場合は、その人の持つポテンシャルが極めて大切だと思っています。

これまで身に付けた知識・経験を重視するというよりも、その人間がどれ程の伸び代を有しているかを何時も見ようと心掛けているわけです。学歴というのは、過去のものです。此の学歴に頼って何かを示すとしたら、ある程度のIQの高低、及び勤勉家・努力家か否か、といった程度でしょう。

世の中には、全く勉強しなくてもIQがとても高く、大変な潜在力を持つ人がいます。彼等彼女等に様々な動機づけを行って、仕事に対する意欲を持たせると物凄く伸びるわけです。そういう意味で私は、此のポテンシャルが非常に大事だと思っています。更には、決まった仕事を熟(こな)すことに秀ずる人がいる一方で、決まった所からどんどん食(は)み出て行くような世界の中で力を発揮できる人もいます。色々ありますが、之も言ってみればポテンシャルということでしょう。

私が挙げた上記2点に比して、学歴・資格・車・生命保険といった類は殆ど意味を為しません。何故かと言うと、それら全ては成功すれば時間の問題で得られるからです。昔から「売り家と唐様で書く三代目…初代が苦心して財産を残しても、3代目にもなると没落してついに家を売りに出すようになるが、その売り家札の筆跡は唐様でしゃれている。遊芸にふけって、商いの道をないがしろにする人を皮肉ったもの」と言いますが、之は人物が出来ていないからです。

非常に裕福な家庭に生まれ莫大な相続財産もある人は、言うまでもなく車や生命保険など容易く手に入るでしょう。また学歴もお金で買うか、家庭教師を一生懸命雇う等して得られるかもしれません。そして資格に関しても、資金や時間に余裕があれば専門学校にも通え、楽に取得できると思われます。

しかし事の本質は、人間力と成長のポテンシャルにあるのです。それらが不十分だと、車や生命保険あるいは学歴や資格が満たされても、何時その家が没落して行くかといった話になるでしょう。此の本質を見極めることが求められます。私は之こそが、結婚相手としても一番大事ではないかと思っています。


編集部より:この記事は、北尾吉孝氏のブログ「北尾吉孝日記」2020年7月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。