「緊急事態条項がなくても法律でできる」論の問題点とは

こんにちは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。

政策勉強会2日目も盛り沢山な内容でしたが、メインは井上武史先生による憲法論議でした。

井上武史先生は昨年の研修会、また年初の維新塾 in Tokyoでも講師を務めていただいた、新進気鋭の憲法学者です。

参考過去記事:
憲法9条、どう変える?3つの案「9条2項削除」「自衛隊明記(加憲)」「実力組織明記」

今回はコロナで一躍注目を浴びた、憲法における「緊急事態条項」について。今回の新型コロナウイルス対応においては、

①憲法の緊急事態条項を適用した国
→イタリア、スペイン、スイス
②憲法に緊急事態条項があるが、法律で対応した国
→フランス、ドイツ、韓国など
③憲法に緊急事態条項がほとんどなく、法律で対応した国
→アメリカ、カナダ、イギリス、日本など

に分類されるとのことで、国際比較から憲法のあり方を考える貴重な講義内容でした。

日本国憲法(首相官邸サイトより:編集部)

特に目からウロコだったのは、

「憲法に緊急事態条項がなければ、むしろ人権が後退する危険がある

という指摘です。

とかく緊急事態条項の憲法論議になると「政府によって強権が発動されて、人権が制限される!立憲主義の危機だ!」という声が大きくなりがちですが、それはむしろ逆であると。

むしろ憲法によって、「法律でできるのはここまでですよ」と歯止めをかけておくことが重要であり、それがなければ「公共の福祉」を理由に人権が無限後退に陥る危険があるとのこと。

実際、現在の災害対策基本法の緊急措置(109条)には

災害緊急事態に際し国の経済の秩序を維持し、及び公共の福祉を確保するために緊急の必要がある場合においては(中略)内閣は、次の各号に掲げる事項について必要な措置をとるため、政令を制定することができる。

という条文があり、議会すら通さず「政令」で人権が制限される可能性が示唆されています。

憲法裁判所がない我が国においては、

「憲法には手を付けなくても、法律でできる」

論で突っ走っていくと、いざ過剰な人権制限が行われたときに違憲裁判を速やかに起こす仕組みすら不十分であると言えます。

現在の憲法改正反対運動は、「9条」に手を出されたくないあまり、本来は人権を守るために必要な改正内容すら議論されないという隘路に陥ってしまっています。

こうした状況を打破するため、

・憲法裁判所の設置
・人権を守るための緊急事態条項の議論

が必要であると改めて痛感したところです。

特に参議院では長きに渡り憲法審査会すら開かれていない体たらくでありますが、秋の臨時国会でも引き続き憲法論議について強く声をあげていきたいと思います。

それでは、また明日。


編集部より:この記事は、参議院議員、音喜多駿氏(東京選挙区、日本維新の会)のブログ2020年7月12日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。