連載① 美術館・博物館のオンライン情報発信に潜む課題

2020年07月14日 06:00

東京国立博物館(Wikipedia)

ダイヤモンドオンラインに「コロナ禍の美術館長期閉鎖で見えた、「アート鑑賞」の新潮流」という有料記事が出ていた。記事のエッセンスは次の通りだ。

感染症の蔓延で長期休館を余儀なくされた美術館・博物館がオンラインでの情報発信を始めた。学芸員による解説が作品の魅力をさらに引き出し、学芸員ファンも生まれている。今後は、オンラインで学んだ人々が「本物を見たい」と美術館・博物館を訪問するようになるだろう。

同種の記事は朝日新聞オンライン(6月11日)にも出ていた。交通アクセスが悪い「飛驒みやがわ考古民俗館」が無料のオンラインツアーを開催したところ、約200人が参加した。この数は年間入館者数の約3分の2に相当するという記事だ。これから、この民俗館への入館者が増えるとすれば、それは「本物を見たい」と心を動かされたファンだろう。

東京国立博物館は「オンラインギャラリーツアー」と題する動画をYouTubeのチャンネルTokyoNationalMuseumに掲載している。最新は、「日本の仮面 舞楽面・行道面」。

興味深い内容だが、一点問題がある。字幕がついていないのだ。美術専門用語をカバーしていないYouTubeの字幕機能は使い物にならないから、聴覚から情報が取得できない人には内容は伝わらない。

東京国立近代美術館の動画には英語字幕がデフォルトで表示され、YouTubeの字幕機能をオンにすると、美術館が提供した日本語字幕が表示されるようになっている。これなら、日本語がわからない外国人にも聴覚から情報が取得できない人にも内容を伝えることができる。東京国立博物館にも同様のアクセシビリティ対応を求めたい。

美術館・博物館などの教育系の公共施設に訪れる人は多様である。障害をもつ人も高齢者も、感染症もあり今は激減しているが外国人観光客も入館する。実際に訪問する前にネットで情報を集め、知識を深めようという人も、ダイヤモンドオンラインが言うように、これからは増えていくだろう。

「本物を見たい」という動機付けをするチャンスがアクセシビリティへの非対応で損なわれるのはもったいない限りだ。

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山田 肇
ICPF理事長、東洋大学名誉教授

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