マンション管理会社のカイゼン策は「管理人」に学べ

2020年07月14日 06:00

みんと。/写真AC

以下の記事によると、マンション管理会社は、日常業務では利益を出せていないようです。大規模修繕工事で埋め合わせすることも。

三菱地所がマンション「自主管理」を推す理由 東洋経済オンライン

筆者の実家のマンションをモデルに、マンション管理会社の収益改善策について、考察してみたいと思います。

様変わりしたマンション

久し振りに実家に帰省しました。

実家は、築年数が長く汚れが目立つ、暗いマンションでした。ところが、数年ぶりのマンションは、手入れが行き届いた植栽、丁寧に磨かれた床など、すっかり明るい雰囲気に一変。長年売れなかった空き部屋も、最近完売したとか。

いったいなにがあったのでしょうか?

新しい管理人さん

「管理人が変わったのよ」と母。「一番変わったのは、そこ」。指さしたのはゴミ庫でした。

以前は、散らばったゴミ袋や空き缶、はみ出た段ボールなど、ひどい有様でした。ところが、ゴミ庫に入ってみると、以前とは様変わりしていました。

管理人さんの仕事は「カイゼン」そのもの

規則正しく並んだゴミ収納大袋。的確にゾーニングされた不燃物置場。そして、ピカピカに磨き上げられた床。この管理人さん、只者ではありません。

管理人さんは60代後半。管理員業務は初めてだそうです。しかし、才能をゴミ庫で開花させ、さまざまな「カイゼン」活動を行いました。

効果が大きかったのは、週1日のゴミ庫閉鎖でしょう。ゴミ庫を開ける日を、週6日から5日に、思い切って減らし、1日を「ゴミ庫清掃の日」に。清掃に多くの時間が割け、これまでできなかったカビ除去などができるようになりました。

管理人さんはECRSの原則を実施していた

製造業で用いられる「ECRS」という言葉をご存知でしょうか。

ECRSは、Eliminate(排除)、Combine(結合)、Rearrange(再配置)、Simplify(単純化)の頭文字をとった、業務改善の原則です。もっとも効果が高く、難しいのは「E」。取り除くことです。取り除く=やめれば、コストや時間が節約できるので、効果は絶大です。ですが「なぜその作業をやっていたのか」「その作業は必要だったのか」など熟考する必要があるため、実施は困難なのです。

今回行った「1日ゴミ庫閉鎖」はE=やめる、に該当します。1日とはいえ、ゴミが出せなくなってしまう。反対の声は多く、マンション管理組合の合意を得るのに難航したそうです。ですが、実施後、綺麗になったゴミ庫や清掃状況は、住人の方々に称賛されました。

管理人さんは、「製造業」的な手法で業務改善を行ったのです。

マンション管理会社の課題

しかし、この管理人さん、最近あまり元気がない様子。母が聞くと、コロナ禍でも勤務時間が長く、手当も全く出ないとか。マンション住人の多くが、管理会社のアンケートで高く評価しているにもかかわらず、待遇は改善されないようです。

管理人さんへの対応から、この管理会社の課題が見えてきます。

もっとも重要なのは、自社の行っている業務を「サービス業」と強く認識し、サービス業的な施策を導入することです。サービス業では、直接顧客と接する従業員を最重要視し、従業員の質の向上に注力します。

美容院などが分かりやすいでしょう。美容院は、美容師によって品質が大きく異なります。個人差を少なくするため、閉店後にカット指導などの教育を行う店も。美容師の質が、顧客満足度、ひいては収益に大きく影響するためです。

管理会社の場合、顧客満足度向上につながるのは、管理人の仕事ぶりです。上述の管理人さんのような方に、長く務めてもらう。他の管理人の質を向上させる。そのためにはどのような策が有効なのか。具体的に考えてみましょう。

モチベーション向上

まず、モチベーション向上策が有効です。

管理会社が、管理人を正社員として雇用することはほとんどありません。この管理会社もパートとして雇用しています。そのため、管理会社と管理人の接点が少なく、評価体制が脆弱です。労働環境も良くありません。

施策として
・監督者の訪問頻度増による、適切な評価
・危険手当の導入よる労働環境改善
などを行って、モチベーションを向上させるべきです。

マニュアル化

マニュアル化も有効でしょう。

このマンションは、管理人が変わる都度、品質が大きく劣化しています。前管理人のマニュアルが粗く、引継ぎが不十分なためです。

また、今回のように管理人が「カイゼン」を行っても、属人的な技術にとどまり、組織全体のノウハウとして浸透していません。改善のやり方や、他マンションにも流用可能なノウハウをまとめ、マニュアル化すべきです。そのうえで、マニュアルを使った教育や、ノウハウの共有を行えば、管理人全体の質向上が期待できます。

顧客満足度向上で収益獲得を

管理人は気に入ったが、管理会社は気に入らない。そのため、管理会社だけ別会社に変更し、管理人は継続。そういったケースも多発しています。管理会社にとって大きな損失です。

管理人の質を上げ、顧客満足度が向上すれば、契約継続はもちろん、管理委託費の増額や大規模修繕の受注なども期待できます。

管理人には優秀な方が数多くいらっしゃいます。自社の人的資源である「管理人」を有効に活用し、日常業務でも、利益を獲得していただきたいと思います。

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