新型コロナ対策は仕切り直して「インフル並み」に

2020年07月17日 06:01

「東京除外」を発表する赤羽国交相(NHKニュースより)

政府は7月22日に始まる国内旅行の補助金「Go Toトラベル」の対象から、東京を発着地とする旅行を除外する方針を決めた。7月16日には東京で過去最多の286人の感染者が出て、感染の拡大を懸念する声が強まったためだ。

このGo Toトラベルは、何のためにやるのだろうか。これは4月7日に緊急事態宣言を出したとき、それと同時に決まった16兆円の補正予算の一部だが、緊急事態宣言で国民の移動を制限すると同時に、移動にインセンティブをつけて奨励するのは矛盾している。世界中に、そんな政策をとっている国はない。

最初は8月の予定だったが、二転三転したあげく、国土交通省が22日に前倒しした。これにはさすがに全国の知事から批判が噴出して、東京を除外せざるをえなくなった。しかしどうやって東京都民を区別するのか、首都圏のツアーはどうなるのか、国の補助から都民だけ除外するのは差別ではないか、など難問山積である。

東京都で新規感染者数が200人を超えるのは4月以来だというが、そのころニューヨーク州の感染者は毎日1万人、死者は毎日1000人だった。感染者数が700人に減った6月19日に、クオモ州知事は収束宣言を出した。ニューヨークを基準にすると、東京は最初から感染が収束しているのだ。きのうの東京の重症患者数は7人で1人減った。死者は90代の男性1人で3週間ぶりだ。

こういう過剰反応が始まったのは、3月下旬だった。それまで東京オリンピック開催とからんで自粛に慎重だった小池都知事が、その延期が決まった3月24日を境に急旋回し、25日に「感染爆発の重大局面」という記者会見を開いて危機感をあおり、安倍首相に緊急事態宣言を出すよう求めた。

このとき小池知事と一緒に記者会見した西浦博氏が「このままでは東京の累計感染者が2週間後には1万人、1ヶ月後には8万人になる」という被害想定を政府に売り込み、安倍首相はそれをもとにして緊急事態宣言を出した。

これは当時の最悪の場合の計算としては、まったくありえないシナリオではなかった。数値目標を明確にしたことも悪くなかった。企業のPDCAサイクルのように数字で目標を設定し、達成できなかったら改善することは政策にも必要である。

過大な被害想定による「8割削減」が観光業を殺した

しかしこの被害想定は、大幅な過大評価だった。宣言から2週間たった4月21日の東京の累計感染者数は3307人(これは報告ベースの数字なので接触削減と無関係)。このとき想定の誤りを検証し、計算をやり直すべきだったが、逆に西浦氏は厚労省で記者会見して「全国で42万人死ぬ」という荒唐無稽なシミュレーションを発表し、パニックを引き起こした。

彼のいう「8割削減」が政府の方針になり、旅行・観光業の売り上げは97%減った。その休業補償が今月中に切れると、旅行・観光業で大量の倒産が出る。そこであわててGo Toを前倒しし、それが批判を浴びて東京を除外、という行き当たりばったりの対策である。

もともと8割削減がナンセンスな目標だった。きのう発表された全国で622人という新規感染者数は、インフルエンザの流行期よりはるかに少ない。今シーズンのインフル患者は730万人で、コロナの360倍。インフルの死者は7000人を超えると推定され、コロナの7倍である。

ウェザーニュースより

つまり日本では、コロナはインフル未満の風邪なのだ。だからその警戒態勢も、指定感染症の指定を解除して、インフル並み(5類)でいい。インフルの患者数をいちいちカウントしない(上の数字は推定)ように、コロナの検査も必要ない。もちろん移動制限も必要ない。8割削減を撤回すれば、Go Toキャンペーンも必要なくなる。

ただし今後、日本に来る感染症がこの程度ですむとは限らない。インフルが毎年来るように、コロナもこれから毎年来るだろう。致死率50%以上のエボラ出血熱のような感染症が来たら、今回のような場当たり的な対策では大変なことになる。そのときのためにも今回の過剰反応を総括し、客観的な被害想定とチェック体制を考え直す必要がある。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長(学術博士)

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