習近平氏の四面楚歌

習近平国家主席が今年の北戴河会議にどう対処するのか、注目が集まり始めました。この会議は非公式ながら中国共産党を制する上で最も神経を使う長老たちとの断続的な会議や秋以降の重要な施策を検討するするのですが、ある意味、習氏の通信簿にもなりえます。

(新華社サイトより:編集部)

(新華社サイトより:編集部)

習近平氏の四面楚歌とはコロナ、水害、アメリカ、そして自身を取り巻く長老や派閥、野心家との激しい戦いであります。対策を取るならこの順番が優先度になるかと思いますが、中国の場合はこのさかさま、つまり、権力闘争、アメリカ、水害、コロナかもしれません。中国の長い歴史の中で国が割れ、闘争をし続けた中で多くは権力との戦いであり、国を潤すのではなく、いかに自分の資産を増やし地位を築くのか、ということに腐心してきました。中国人のマネーと肩書に対する執着は貪欲そのものであり、経営とは自分のマネーを増やすこと以外の何物でもなく、政治家もマネーの匂いにしばしば心地よい酔いを感じています。

仮にアメリカとの関係がさらに悪化すれば、外国にひそかに築いた長老や幹部たちの資産が差し押さえになるリスクが顕在化し、習近平氏への風当たりは氏を追い込むほどになりかねません。しかもアメリカと今、喧嘩をすれば元に戻れない事態になることは自明の理です。貿易戦争も第一弾をかろうじて終えた状態にとどまっています。にもかかわらず、習氏は香港の国家安全法の施行を急ぎました。

これでファイブ アイズ(アメリカ、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)の団結はより一層強まりました。英国はファーウェイによる5Gを禁止、香港人の英国への居住を受け入れます。オーストラリアも同様でモリソン首相は中国へ強硬な姿勢を示しています。温厚なカナダのトルドー首相も国内で湧き上がる反中国、中国で身柄を拘束されている二人のカナダ人問題などで明白な姿勢を打ち出しています。

トランプ大統領が署名した香港優遇策撤廃への署名は対中国制裁の第一歩にすぎません。金融制裁が進めばドルと元の取引がやりにくくなるでしょう。あるいは国際送金システムのSWIFTから中国の銀行を外すことすらできます。そもそも中国は元の国際化を目指しており、IMFの通貨バスケットにも入り込むことに成功していたのに真逆の方向に進んでいます。

NYタイムズが香港支社を韓国ソウルに移すと発表しました。今後、香港にある外国企業がアジアの新拠点を求めて大移動するでしょう。シンガポールは物理的に遠いこともあり、東アジアがその対象になると予想され、その受け入れを期待し、東京都や政府も本腰を入れ始めたところです。

個人的には日本は行政の壁が厚くバイアスもかかっているため、香港のような情報とマネーが自由に行き来するような世界と比較するとやりにくいかもしれません。だったら特区を作った方が手っ取り早いかもしれません。個人的には中国に地理的に近く空港の利便がよい福岡か用地がまだある大阪でしょうか?東京ではない気がします。

中国がより一層やりにくくなるのはトランプ大統領が再選した場合です。今回の選挙戦は国内世論が消去法的にバイデン氏に向かっています。とすれば大統領選では異例となる外交政策を駆使し、コロナでストレスをためる国民を一体化させるという手法が残っており、中国をやり玉にトランプ大統領が11月に向けて吠えるという戦略は大いにあり得るとみています。

日本は二階幹事長の立場が厳しくなるかもしれません。既に相当ご機嫌斜めと報じられていますが、習近平氏の国賓来日は香港の対応を考えると一般論からは当然、棚上げです。ご当人はどうにか実現させようとしていますが、日本政府がどっちつかずの態度をとるのはよくありません。それでは朴槿恵政権の際の中国とアメリカの二股外交と同じになってしまいます。正論と外交を堂々と扱えるぐらいの器量を日本も持つべきだと思います。

中国は本当の民主化が進むべきで共産党による人民支配は過去の遺産だということを世界に知らしめるべきであります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年7月17日の記事より転載させていただきました。