メキシコ経済が伸び悩む元凶はアムロ大統領

ラテンアメリカにおける2つの大国ブラジルとメキシコは、コロナウイルスによるパンデミックへの取り組みが影響して両国の大統領への企業や国民からの信頼は次第に薄れている。

アムロ大統領(メキシコ大統領府サイトより)

ブラジルのボルソナロ大統領がパンデミックを無視した派手な行動に走ってブラジル国内を始め世界から批難を浴びているのに対し、メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(アムロ)大統領も目立たないが、世界保健機構や疫学者の忠告を同様に無視。感染がまだ収まっていないのに、封鎖を解除したり、マスクの着用は無視し握手や抱擁したりしている。(参照:marca.com

それがアムロだけの問題として収まるのであればそれも容認される。ところが、アムロのこの身勝手な行動と同じように自国の経済についても自らの左派思想から生まれた固定観念から脱却しようとしないことからメキシコの経済回復に問題を提起している。

メキシコは80年余り制度的革命党(PRI)と国民行動党(PAN)によって政権が担われて来た。アムロは左派の民主革命党(PRD)を離党して2011年に同じく左派の国民再生運動(MORENA)を創設して選挙に臨んだ。

PRIとPANの2大政党による汚職政治にうんざりしていた国民はアムロを支持。53%の得票率で大統領に選ばれた。国民はアムロにメキシコの政治改革を期待した。一方の主要企業は当初から左派思想のアムロの勝利を期待していなかった。

ところが、アムロが大統領に就任した2018年12月から1年半が経過しているが、メキシコの経済の再生が見られないのである。もちろん、このパンデミックの影響で経済が後退しているのは頷ける。しかし、パンデミックになる以前においても再生の兆しは見えなかった。問題はアムロの経済に取り組む姿勢が発展とは逆の方向に向いているということなのである。

例えば、メキシコシティー新空港の建設にそれを観ることができる。この建設はペーニャ・ニエト前大統領の時から始まり既に55億ペソ(253億円)を投入していたにもかかわらず、アムロはその建設を中止したのである。これが建設されていれば、ハブ空港として発展する可能性をもっていた。

新空港のかつての建設予定地の空撮(Wikipedia英語版)

ところが、アムロはそれに代わる空港として、現在使用されているベニト・フアレス空港から45キロ離れた空軍基地となっているサンタ・ルシアを空港として利用するための建設を決めた。建設が中止された新空港の半分の広さである。これが完成すればメキシコシティーを囲んでベニト・フアレス、トルカ、サンター・ルシアという3つの空港が存在することになる。

つまり、これは航空会社にとって、その運用は容易ではなくなる。メキシコシティー新空港が出来ていれば、この空港をハブとして使い、ベニト・フアレスをサブ空港として使用できたはずだった。この決定は投資家にとってメキシコに投資する関心を失わせた一番の要因となった。さらに、投資家を幻滅させたアムロの決定には次のようなものがある。

バハ・カリフォルニア州のメキシカリ市に建設が予定されていた米ビール会社コンステレーション・ブランズが10万ドルを投資してビールの生産工場の建設を予定していた。ところが、アムロはその地域の住民に投票を募って同社の進出に賛成か否か問うたのである。

結果は、工場が建設されればその地域の水の供給に支障を来すようになるとして住民の76%がその建設に反対したのである。コンステレーション・ブランズは水の供給の住民への影響は1%以下だと表明していた。(参照:reuters.com

左派系の政党によくある傾向で、住民投票を実施したがる。アムロも例外ではなかった。この住民投票によって地元の住民が雇用される可能性も経済発展の可能性も完全に消滅した。

さらに投資家にとって理解に苦しむ次のような決定をしている。アムロはドス・ボカス港に隣接してメキシコ石油公社の製油所の建設やマヤ鉄道の建設を決めている。メキシコは石油産油国でありながら、70%を米国から石油を輸入している。

また、マヤ鉄道は産業都市を結ぶ鉄道ではない。果たして採算性があるのか疑問視されている。収益性の乏しいこの二つのプロジェクトの資金の拠出をどうするのかという問題もある。

このように、投資家から見れば的外れのプロジェクトを実施しようとするアムロの政策に強い不審の念を抱いている。だから、それを反映するかのように、カーニー社の直接外国投資指数によると、今年は投信の対象国となる上位25か国からメキシコは外された

アムロの政権が始まった昨年でさえ、メキシコにとってこれまでで最低の25位にランキングされた。メキシコへの投資家の関心が強かったのは2010の8位と2013年の9位であった。寧ろ、アムロ政権になってから資金の外国への流出が増加している。ペーニャ・ニエトの政権時と比較して資金流出は16倍となっている。(参照:elfinanciero.comejecentral.com

4月13日付メキシコ経済紙『El Fianciero』は「(アムロ)大統領の問題は自らのナルシシズムに閉じ籠ってしまい、(他人の意見を)聞こうとしないことだ。彼のビジョンの不足が集団死を招き、メキシコ合衆国と呼ばれる国家はバラバラになる」と指摘した。

SPIN-TCPの調査によると、2018年12月3日から2020年4月10日までにアムロが発言した内容で虚言は2万3759回あったそうだ。このような指摘がされるようになっているのも、アムロが国民から信頼を失っているということである。

筆者が彼の発言を聞いていて一番気になったのは、何事を説明するにも前置きが長すぎることだ。(参照:eleconomista.com