バロンズ:米銀大手の貸倒引当金、米国経済の苦難を示唆か

2020年07月20日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーは年金に焦点を当てる。米株市場が急落した後に大幅反発し、高いボラティリティの波が遅い個人の年金運用はその波にさらされている。3月の急落で株式を売却した投資家には、それ以降は様子見を決め込む者も多い。

ただ、低金利環境を背景に債券のように依存してもリターンを取りづらい。コロナ禍により、貯蓄に頼るケースも増え、引退する機会が失われつつある。そこでバロンズ誌は、米国で即時開始一時払年金(SPIA)を始め年齢や資産に合わせた年金運用先を紹介する。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週のカバーは大手銀の決算を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

カバー写真:Dave Center/Flickr

経済に強い警告を発する大手銀の貸倒金引当―Banks’ Loan-Loss Reserves Send Sharp Warning on Economy.

投資家にとって最良と最悪の時期があったのかという議論には、大手銀の4~6月期の決算が明らかにしてくれるだろう。決算内容には、コロナ禍から生じた危機と政策対応の影響が及んでいるのだから。

JPモルガン・チェースやゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、シティグループなどは、大幅増収を記録した。ゼロ金利政策再開や無制限の量的緩和の導入、さらには緊急貸出制度など3月に講じた米連邦準備制度理事会(FRB)による政策対応が影響したものだ。S&P500 は3月の安値から40%上昇し、投資適格級の社債発行高も過去最高を更新している。

最悪期はこれからだ。ウェルズ・ファーゴなど大手銀6行は将来発生しうる不良債権に備え約360億ドルの貸倒引当金を計上した。JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、決算後のカンファレンス・コールにて「これは通常の景気後退ではない」と発言、また「景気後退のような状況は今後続くだろう」と警告した。

これまでのところ、約3兆ドルの景気刺激策(筆者注:給与保証プログラムが増額などを受け当初の約2.2兆ドルから増えたため)により中低所得層に1人当たり最大1,200ドルの小切手が支給され、失業保険が600ドル拡充されたこともあり、コロナ禍の打撃は限定的だ。小売売上高はコロナ直後に急減した後、5月に記録的な増加を遂げ、6月も堅調だった。

しかし、これらは過去の数字に過ぎない。米新規失業保険申請件数をみると7月11日週分は130万人、継続受給者数も1,730万人と高止まりしている。個人消費の動向は、7月末に終了する失業保険の拡充次第だろう。

チャート:米新規失業保険申請件数の動向

(作成:My Big Apple NY)

米議会は今週再開し、新たな刺激策について議論する予定だ。AGFインベストメンツのグレッグ・バリエール首席ストラジテストは、混迷を予想。例えばトランプ大統領は給与税減税を求め、マコーネル上院院内総務はコロナ禍での企業に対する訴訟を回避する策を目指し、民主党は失業の急増と歳入減で予算悪化に直面する州政府・地方政府への支援を要請する状況だ。

こうした議論は、フロリダ州やテキサス州、カリフォルニア州、アリゾナ州を始め新型コロナウイルス感染者の急増し経済活動再開を一時停止し、規制を再導入する前の話だ。

JPモルガンのジェシー・エドガートン米国担当エコノミストによれば、不幸にも、米経済と新型コロナウイルスの関連性は崩壊していない。例えばダラス地区連銀が発表するモビリティ・エンゲージメント指数やグーグル検索数、JPモルガン・チェース銀行のデビットカードやクレジットカードの動向をみると、その証左は明らかだ。マスクの着用や感染者の接触追跡を徹底した欧州とは、雲泥の差だという。

TSロンバードのエコノミストであるスティーブ・ブリッツ氏によれば、フィラデルフィア連銀を始め製造業景況指数では楽観的な見方が高まっている。ただし、10~12月期末にかけての景気回復は、失業率が高止まりしコロナ禍が成長が阻害現状で非常に見込みづらい。少なくとも、大手銀の貸倒引当金は米株市場が見込んでいない今後の経済悪化を予想したものと捉えられよう。S&P500種株価指数は足元、過去最高値から5%にまで迫っている。


ここで、大手米銀の決算を振り返ってみましょう。

(作成:My Big Apple NY)

大手6行の貸倒引当金は、合計354億ドルでした。未曽有のコロナ禍なだけに2008年の金融危機を上回る水準となります。こうなると、現時点で9月末までとはいえFRBが大手銀に自社株買い禁止しを配当を制限するはず。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年7月19日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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