賢人支配としてのエンダウメント・モデル

2020年07月21日 06:00

現代社会において、支配の仕組みは凡人による集団支配であるが、そこでは、専門的能力をもつ少数の凡人によって構成される執行部門、執行部門を代表する指導者、冷静な判断能力をもつ少数の凡人によって構成される監視部門を分立させることで、独裁化、衆愚による無秩序と無決定などの弊害を排除している。

例えば、企業においては、優れた執行能力をもつ凡人の経営者は、自己評価において自己を賢人化しやすいので、冷静な判断能力をもつ凡人が構成する取締役会は、経営者を冷静に客観評価するのである。

投資の意思決定の仕組みも同じである。ここでいう投資とは、年金基金等の機関投資家が行う職務としての投資であるが、例えば、米国のエンダウメントで採用されている仕組み、エンダウメント・モデルは有名である。

エンダウメントというのは寄付金のことで、寄付金から形成されている財団をも意味する。米国には、大学の財団などの巨大財団が数多くあり、機関投資家の代表的存在として、極めて重要な役割を演じているのである。

エンダウメント・モデルでは、専門的能力の大きさに応じて、最も優れた個人が最高投資責任者に任命され、そこに投資成果に一番大きな影響を及ぼす資産配分の決定権限が集中され、各資産のなかの戦略配分、その戦略を実行する外部の投資運用業者の選任については、次段階の複数の投資責任を負う担当者に権限移譲されている。

監視体制としては、最高投資責任者の独裁を阻止するために、投資判断の決定の各段階において、投資責任を負う担当者からなる意思決定の委員会がおかれ、最高投資責任者を委員長として、集団統治の形態が整えられ、そして、頂点には財団の理事会があって、そこで下部の専門家の決定を承認する手続きがとられているわけである。

エンダウメント・モデルでは、頂点に凡人の集団統治の仕組みとして財団理事会がおかれているにしても、実質的権限は、賢人に近い位置づけの最高投資責任者、および、その下の賢人に準ずるような担当者に大胆に委譲されているので、賢人統治が目指されているといっていい。

投資は、最高度に知的な創意の発現として、賢人統治に馴染むのではないか、また、それ故にこそ、優れた投資成果を実現できているのではないか、そのような問題意識から、エンダウメント・モデルが注目されてきたのである。

森本紀行

HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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