連載⑫コロナ第2波、日本とイスラエルの比較 モンテカルロシミュレーションで検証

2020年07月26日 06:00

イスラエル空軍の労い飛行を見上げる医療関係者(Israel Defense Forces/Flickr)

一昨日、日本以外で第2波が見られるイスラエルのデータを日本のデータに重ねてプロットして見ると、日本とあまりの一致に驚いて考察も書かず速報しました。本日はシミュレーションを用いて、コロナ第2波の日本とイスラエルの比較考察です。

図1(線形表示)、図2(対数表示)は、連載⑪で速報した、日本の新規陽性者、死亡者のデータ(青線)、連載⑩で導入した「弱毒種」、「従来種」によるシミュレーションの計算結果(黒線)、これにイスラエルのデータ(赤線)を重ねたものです。

イスラエルのデータは、第1波の始めを10日遅らせ、第1波と第2波の谷のところで13日シフトさせて時間変動を合わせていますが、絶対値はそのままです。第1波のイスラエルの死亡者数が日本の死亡者数と比較して低めですが、ほぼ完璧に日本のデータと重なります。人口が日本の7%しかないイスラエルの陽性者、死亡者がほぼ日本と等しいということ自体、驚愕すべきことです。

余談ですが、週毎の周期的変動まで同期しているように見えます。日付のシフトのずれと、イスラエルの安息日が金、土曜ですので休日のずれが、偶然重なったのだと思います。

第1波と第2波の新規患者数の振舞いが日本とイスラエルでこれほど一致しているので、日本の先行事例として比較検討の良い材料になると思い、モンテカルロシミュレーションを用いて考察しました。まず、日本を解析した手法で、イスラエルのデータをシミュレーションでフィットします。

図3(線形表示)、図4(対数表示)にイスラエルのデータとシミュレーションの結果を示します。パラメータの決定の仕方は従来と同じです。まず、初期分布と実行再生産数Rの初期値を与えて、第1波のピークを再現します。この部分は日本のデータと重なっていましたので、日本のパラメータをそのまま使いました。Rの初期値はR=0.89です。

次に、ロックダウンの日からのRを第1波の収束部の傾きから決めます。イスラエルは3月19日からロックダウンしたとなっていますが、計算では4月1日にロックダウンでR=0.89からR=0.25に減少させています。日本の場合、この収束部はR=0.31でしたから、イスラエル社会のロックダウンは、日本の非常事態宣言の自粛より厳しいものであることが分ります。

実際、イスラエルの邦人のブログ等をみると、イスラエルのロックダウンは、「100メートル以上の外出禁止」など相当厳しい制限が5月5日まで継続され、5月5日からは段階的に解除、5月20日にやっと制限付きでレストランが再開されたとあります。

この強烈なロックダウンのストレスは、解除後に爆発したようで、第2波の急激なV字型の立ち上がりに表れています。日本の解除後13日間の横ばい期間を完全に吹き飛ばし(図1、図2でイスラエルのデータを13日間シフトしています)、急激に立ち上がっています。この上昇角度は日本のものとほぼ同じく実行再生産数でR=1.78です。

図2で指摘したように第1波のイスラエルの死亡者数は日本の死亡者数より小数で、死亡率=死亡者数/陽性者数を見ると、イスラエルが3.0%、日本が7.6%です。この時期、日本のPCR検査は症状のあるものに限定されていた時期ですが、イスラエルは既にこの時期からPCR検査数1万人/日を行っていたので、現在の日本と同様、無症状、軽症のPCR検査陽性者をカウントしていたため死亡率が小さい値になっていると思われます。

一方、第2波の上昇期の死亡率は、イスラエルが0.60%、日本が0.38%です。両者とも第1波に比べて極めて小さい値で、大きな死亡者の増大は見られません。本連載では「弱毒種」という感染力が強く死亡率が低い仮想種を導入して第2波を解析しています。この詳細は次の連載「第2波の正体は何か」で書こうと思っていますが、イスラエル、日本、両国ともPCR検査の増大が、実際の感染の実態より急激な陽性者の増大を引き起こしていると思われます。

図4に示されるイスラエルの現況は、陽性者数、死亡者数の動向にピークアウトの兆候が見られます。そこで、シミュレーションで7月10日から実行再生産数をR=1.78からR=0.89に変化させてピークアウトを再現してみました。ピークアウトの兆候が小さいこと、その後のRを決める情報がないことから、この予測の誤差は大きいと思われます。


イスラエルと日本の振舞いが甚だ似ていて、イスラエルが日本の23日の先行事例になっていると考えられるので、日本場合も類似のピークアウトのシミュレーションをしてみました。

図5(線形表示)、図6(対数表示)に、日本の陽性者数、死亡者数の7月23日までのデータとシミュレーションの結果を示します。パラメータの値は、連載⑩と同じですが、第2波の立ち上がりをR=1.78からR=1.90に微調整しています。7月22日の厚生省のデータでベンチマークをしました。

ピークアウトは、7月20日に実行再生産数をR=1.90からR=0.89に変化させ実現しています。日本の場合、ピークアウトの兆候はイスラエルのようにはないので、この日付の誤差は大きいはずです。ピークアウト以降のRは、第1波の自粛前の値、また、自粛解除後の在来種のRと同じ値、R=0.89としました。

現在のところ誤差の大きい予測ですが、イスラエルいう先行事例を参考にできるので、より確度の高い予測ができるのではないかと期待しています。

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仁井田 浩二
一般財団高度情報科学技術研究機構 理学博士

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