米国黒人のルーツはナイジェリア人?

八幡 和郎

アメリカ大陸の黒人のルーツについてDNAと奴隷船の詳細な記録を相互参照した興味深い研究がアメリカの科学誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティクス(American Journal of Human Genetics)」に発表されたとAFPが伝えている

アフリカ大陸と米大陸の両方で、同意を得た5万人の遺伝子データを収集し、1515~1865年の間に1250万人という奴隷船に乗った人々の記録を分析したのである(約200万人は途上で死亡)。

それを見ると、だいたい、これまで私が感覚的なものも含めて理解していたのとほぼ一致しているが、その裏付けがとれたことはうれしい。

つまりアメリカの黒人はナイジェリア系が多く、また、白人との混血が多い。南米の黒人はアンゴラ、コンゴ系が多いらしい。「ルーツ」の舞台となった西アフリカ出身者はマラリアのためにあまりアメリカ大陸に子孫を残さず、あの話のようなケースは少ないらしい。

米大陸全体のアフリカ系住民の大部分のルーツは現在のアンゴラやコンゴ民主共和国にあり、これはもっとも過酷な奴隷狩りが行われた地域である。ただし、米国のアフリカ系ではもっと北のナイジェリアにルーツを持つ人が大きな割合を占めている。アメリカの黒人にはナイジェリア人と似ている人が多いという観察にも一致する。

逆に、アフリカ系米国人とセネガンビア地域(セネガルとガンビア周辺の西アフリカ)とのつながりは、北米で奴隷船をこの地方から来て下船した人数と比較して予想されていたよりも少なかった。これは下船後に北米の水田耕作などのプランテーションで働いた奴隷の多くがマラリアで死んだためではないかと推測されている。

米大陸に連れてこられた奴隷の60%以上が男性だったはずだが、遺伝子データでは、女性の関与が非常に強い。つまり、白人男性が女性の奴隷に生ませた子どもの子孫が多いということだ。報告書は「レイプしたことや、子どもをたくさん産めば奴隷状態から解放するという約束のような性的搾取が原因」という表現を使っているが、これは若干、政治的表現かもしれない。黒人同士なら自由な意思のもとでの子作りだったということはいえないだろうと思う。

しかし、まことに変なのは、アメリカでは混血だと白人の血の方が優勢でも黒人に分類することだ。ラテンアメリカでも欧州でも混血はあくまでも混血なのだから、少しでもまじったら黒人というのはおかしな話だ。