決算にみる日本の未来

2020年07月30日 14:00

4-6月の四半期決算の発表が続きます。まだ序盤戦ですが、大きなサプライズもありました。コロナ真っ只中の3カ月の決算だけを見て断言することはできませんが、コロナで決算が思った以上に下押しする企業はファンダメンタルズの弱さがより強く出やすいという傾向とも考えられます。さて、日本の経済の未来が透けて見えるでしょうか?

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

私にとって最大の衝撃は自動車2社の散々な決算でした。三菱自動車と日産自動車であります。三菱自動車の21年3月期の連結最終赤字予想は3600億円。うち工場の減損などが2200億円あり、パジェロを生産中止にするとしています。この会社の規模でこの最終赤字予想は申し訳ないですが、会社の存在価値が否定されても致し方ない気がします。

一方の日産自動車は21年3月予想で営業赤字が4700億円、連結最終赤字が6700億円と過去最大の赤字幅になると発表しています。ご承知の通り、日産と三菱は資本関係がありますが、正直両社とも立て直せるのだろうかと疑問視しています。

80年代に日本の自動車メーカーはいずれ3社になるといわれていた話は以前ご紹介したと思います。それなのにどの自動車会社もおらが村的経営、重層型の下請け構造、更には自動車産業の従事者数が労働市場にとって影響が大きかったことがあり、有効な手立てを打てませんでした。

それ以上に先に崩壊した電機産業をみてああならないためにも自動車産業を守らねばならないという守りの経営と技術の飛躍的変化に対して鈍重な対応だったのではないでしょうか?明らかに言えることは自動車はもはやあこがれのものではなく、移動手段としてのコモデティ化が進み、更には公共交通機関、ライドシェア、他の代替移動手段との激しい競合という異種混合のレッドオーシャンの最中にいるということです。既存常識に基づくクルマ作りという時代は終焉しつつあると考えています。

次の衝撃はキヤノンであります。4-6月の決算は88億円の赤字となり同社初の四半期赤字を計上、御手洗冨士夫氏が3度目の社長復帰を果たしました。通期の見通しはまだ黒字予想ですが、私は下振れするような気がしています。

まず、御手洗氏が一時的とはいえ社長に復帰せざるを得ないところが面白みのない日本最大級の同族経営会社の一つと言われるゆえんであります。複写機はペーパーレスの現代において世界で2-3社しか残れず、それも他に事業の柱があって生き延びられるような状況になりつつあります。しかし、キヤノンは富士フィルムのような業態変換がいまだ出来ていません。もがいていますが花が咲かないのです。

日経には御手洗氏の手腕を期待するとあります。御手洗氏は確かに若い時は素晴らしい功績を残しましたし、長くアメリカに駐在したこともあり、国際派として経営界に新風を巻き起こしましたが、御年84歳にして社長は厳しいのではないでしょうか?次の次のビジネスを仕込むためにはもっと若手の登用が必要だとみています。

最後、三越伊勢丹の赤字を考えてみます。21年3月期は600億円の赤字を見込むと発表しました。デパートという業態がもう時代のニーズではないということは伊勢丹の前社長の大西さんが就任したころにこのブログに指摘し、ご本人からもっと意見を伺いたいといわれたことがあります。

「消費に華を添える必要があるか」、これがキーワードではないかと思っています。アマゾンで買う商品はそもそも倉庫でロボットやスタッフが棚からかき集め、配送するという実に実務的な流れの中で自宅に味気ない箱が届く仕組みです。消費者、特に若い人はこれに慣れ親しんでしまったところに消費の変化を感じているのです。つまり、店員とあぁでもない、こうでもないという接客会話を通じて消費者のハートがくすぐられるのを求めているのは50代から上の世代ではないでしょうか?若い世代には店員は傍に来ないで、という風潮が20年も前からあり、一部の店では「店員からのお声がけはいたしません」とお断りを入れるような店も出現したのです。

今の消費の基本はインターネット情報で自分なりに調べて買うです。よってピンポイント消費に近いので店員が「こちらもいいし、あちらもいい」という話ではないし、買い物相談するなら自分の友人をアドバイザーとして連れてくるのであります。北米にあるデパートにもかつては華がありましたが、今では倉庫に毛が生えたような状態で店員を探すのすら困難であります。私はデパートは何十年後かには死語になると思っています。

自動車、複写機、デパートという業界だけではなく、多くの業界が時代の流れに乗れていません。日本企業がなぜ漂流し始めたか、それは経済や消費を高齢者が支え、野心ある若者が十分育っていないからかもしれません。また日本人の超安定志向が真綿で首を絞められても我慢できてしまうところにも見いだせるかもしれません。

私が求めているのは世界第三位の経済大国として時代の先端を走り、日本発の技術や商品、サービスが世界を席巻するという夢です。かつては実現できていたあの夢よ、もう一度です。それをあえて求めないならじわじわとランクを落としながらも細々と生きていけるかもしれません。でもそれでよいのか、という気持ちをいつ誰が持つのか、これには答えがないような気がします。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年7月30日の記事より転載させていただきました。

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