コロナが変える常識、消える外食

ワシントンD.C.の外食風景。マスク姿で接客がコロナ時代のノーマルに(Barnes/flickr)

私の3月から7月末までの5か月間の外食回数はコロナ発生前に比べて概ね3分の1に落ちました。一つには集まりが極端に減ったこと、もう一つは店に行く楽しみが減ったことがあります。

行きつけの一つ、カナダでも有名なチェーンハンバーガー店。店の人を良く知っているのでワインを頼んでもいつも大盛りの大サービスでチェーン店とは思えないアットホームさがあります。最近は巨大なこの店も8時を過ぎれば片手で足りるほどの客数しかおらず、その上、1人-2人の客が主体です。なぜ、この店によく行くか、と言えば家と会社の間にあること、店が広くてスタッフが忙しそうに動き回り、いろいろな客が来るのでウォッチングしているのもまたおつなものだったからかもしれません。

では食べるものはどうだったのかといえば私は決まったハンバーガーかサンドウィッチのどちらかしかとらないのでメニューもいらず、であります。たくさんあるメニューを見るのが面倒くさいのとセントラルキッチンのチェーン店で提供できる味には限界があるからであります。つまり、まずくはないけれどどうしてもその店のハンバーガーないと困るわけではなく、単に入りやすく店員を知っているから、というだけの理由なのでしょう。

他にも「行きつけ」はたくさんあるのですが、最近は店の前を通るだけで店から顔見知りの店員が「ひろさーん」って声をかけてくれるんです。嬉しいんですけれどその居酒屋にも以前ほど足が向かなくなったのは居酒屋としてのエネルギーが消滅してしまったからなのです。威勢の良い掛け声は消え、皆、黙々と仕事をしているとなにか通夜飯のような感じがして滞在時間も短く、すぐに出てきてしまうのです。

つまり、行く回数が減っただけではなく、一回の消費額が大きく減っているのです。飲食経営者には厳しい状態だと思います。

日経に「外食1000店超が閉鎖 業態転換などで長期低迷に備え」とあります。よく読むと1200店が閉店で600店が新規開店なので差は600店の減でタイトルは盛り過ぎだと思います。ですが、個人的にはこれはチェーン店のような予想可能な店の閉鎖数で個人店や小規模店を入れると1000店閉鎖どころではなく、その2-3倍あってもおかしくないとみています。

個人的には食事の仕方、酒の飲み方は大きく変わったと思います。家で日本のテレビ、YouTubeに上がる日本のバラエティや各種番組、更にネットフリックスのリアリティものあたりを見ていれば飽きないのです。そして家で作れない寿司などは買ってくればよいし、そうなると総合的な食事への消費額は相当減少しています。

更に奇妙なことですが、どうやったらもう少しうまく料理ができるか、レシピを探るだけではなく、YouTubeでコツを探し出しているのです。こうなると下手な外食なんてできません。(海外には日本のような便利食材やスーパーの出来合いコーナーはほとんどないので自分で作るしかないのです。)

日本になぜ、6万店もの飲食店があるのか、その支えとなっていたのはサラリーマンだったと思うのです。家にまっすぐ帰りたくないし、そうするとウザがられたり、挙句の果てに「どこか体が悪いんじゃないの?」と疑われること自体が北米に長くいる者からすると喜劇のような悲劇なのであります。ある意味、本来あるべきサザエさん一家のような家庭のスタイルに戻すことができるのかもしれません。

日本には外食店が多すぎると思うし、新規参入しやすい業種の一つでありますが、レッドオーシャンで激しい勝ち抜き競争があります。確かに当たれば左団扇になるのですが、昔のようなたやすさはもうありません。

厳しい淘汰が始まるような気がします。人々の生活の変化が生み出すビジネス環境の変化の猛威はこれからやってきます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年8月2日の記事より転載させていただきました。