国益損なうエネルギー政策を転換し、日本は改めて「富国」を目指せ!

2020年08月04日 06:00

アラブ首長国連邦(UAE)のバラカ原発が今月1日に稼働した。UAEが世界有数の産油国であり、またこの原発を完成させたのが韓国であることは、日本をして、国益を著しく損なっている現下のエネルギー政策を転換するに充分な説得力がある、と筆者は思う。

2日の日経は、「太陽光や原発で生みだす電力を国内需要にまわし、貴重な外貨獲得手段である原油の輸出収入を減らさないようにする」とのUAEの経済改革を原発の稼働と合わせて報じた。一見奇異に思える、産油国の原発投資が経済改革になる理由は、極めて安く調達したことにもあるようだ。

ロイターは10年前の09年12月、「総額400億ドル規模の大型事業の受注競争で韓国企業連合が契約を獲得し、原子炉4機の建設・運営を請け負う」と報じていた。「フランス企業連合や、米ゼネラル・エレクトリック率いる企業連合」を競争相手とも書いているが、後者は日立とGEの連合だ。

記事は、韓国が提示した設計・建設契約の200億ドルは、フランス連合の提示額を160億ドル下回るとし、韓国連合は原子炉の共同運営で200億ドルの利益を得る見通しとする。都合400億ドルになるが、フランスと日米の提示額は各々700億ドルと900億ドルとも言われた。

現代建設の社長だった85年にマレーシアのペナン大橋を受注した李明博ならではのトップセールスも奏功したようだが、文政権の18年1月、契約に付随したUAEとの軍事秘密協定が露見した。韓国がUAEに武器を売り、その運用をUAE軍に教える名目で韓国軍を派兵し、原発を守るという。

政情不安な地域ならではだが、尖閣などの自国の守りすら覚束ない日本にはできない芸当だ。しかも日米連合は価格が高いのみならず、東芝・WHの加圧水型ではなく、日立・GEの沸騰水型(福島原発と同型)で応札したという。これでは韓国に到底太刀打ちできまい。

秘密協定の暴露にアブダビが激怒したことの他にも、技術面で東芝に支援を仰いだり、建屋の亀裂を起こしたりと、幾多のトラブルに見舞われながらも足掛け10年、何とか稼働にこぎ着けた韓国の粘り強さ(執念深さ?)は、格好ばかりつける今日の日本が失ったものの一つと筆者は思う。

一向に進まない原発再稼働と中国製パネルを増やすだけの太陽光発電タリフのお陰で、日本国民は毎年何兆円もの余分な出費を高い電気代として強いられている。これは家計を圧迫するだけでなく、国内産業の競争力を削ぎ、産業の国内回帰や海外企業の日本立地を妨げている。

筆者は太陽光や陸上風力の発電装置は、あたかも生活習慣病のように日本の国土を緩慢に蝕み、知らぬ間に緑豊かな日本を荒廃させると予想する。耐用年数を過ぎた有毒な太陽光パネルの膨大な残骸が、切り開かれた山林や原野に放置されているのを国民が目にする日は、そう遠くはなかろう。

そこへ7月3日の朝日の石炭火力記事だ。非効率な石炭火力9割を休廃止する話ではなく、「石炭火力、輸出支援を厳格化へ」と、輸出の件を報じている。国益を考えず他国の評判ばかり気にする政府のエネルギー政策(やレジ袋などの百害あって一利もない環境政策)には心底腹が立つ。

梶山経産大臣が公表した、「140基の石炭火力のうち非効率な約100基を30年度までに段階的に休廃止し、発電効率の高い新型発電所26基は維持・拡大する」との方針は、第5次エネルギー基本計画に沿った既定路線、結構なことだ。むしろ前倒し、拡大にも意を用いてもらいたい。

一方、朝日は

「世界的な批判を浴びている日本の石炭火力発電の輸出について、政府は、相手国の脱炭素化への移行が促進されないかぎり公的支援をしない方針を固めた。また相手国が脱炭素化に向かう政策の策定支援を“基本方針”にする」

と、嬉々として報じる。

7月9日の石炭火力発電の輸出支援要件の見直し決定に向け、経産省と環境省の折衷案が纏まりかけた6月下旬、小泉環境大臣は「原則、政府は石炭火力発電所の輸出支援は行わない。こうした文言は入れられないのか」と、事務方が示した文書案を突き返したそうだ(7月7日産経「ポスト安倍の夏」)。

が、朝日の書きぶりと裏腹に、日本の石炭火力輸出は「最新鋭技術のみで、かつ発電効率などに基準を設ける」との条件付きながら何とか維持された。当然だ。例えばJパワーの超々臨界圧発電(USC)は世界最高水準の熱効率約48%を達成し、CO2のみならずSOXやNOXの排出も圧倒的に少ない。

日本の石炭火力を必要とする諸外国の期待に日本が背けば、UAE原発の韓国のように、中国を富ませるだけのことだ。中国は提案中を含め、パキスタン、ベトナム、インドネシア、南アフリカ、エジプトなど20ヵカ国以上の石炭火力発電事業に300億ドル(約3兆2千億円)以上に投資している

その中国のCO2排出量は世界の28.2%とダントツ。2位の米国は14.5%、日本は5位だが3.4%に過ぎない(EDMC要覧2020年版)。しかも、パリ協定で中国は発展途上国扱いだし、米国は協定から抜けた。つまり、両国はCO2を出したい放題だ。だのに、日本はいつまでイイカッコし続けるつもりか。

2020年版の「世界競争力ランキング」で日本は63ヵ国中で34位だった(92年までは1位)。一人当りGDP(ドル換算。18年)も世界26位の39千ドルで、世帯当り可処分所得3万ドルも18位だ。これを見る限り、もはや日本は経済力も人件費も一流の国ではない。

それにも拘らず、国民にもこの体たらくの認識が薄く、地道で懸命な努力をする姿や執念を以て貪欲に仕事をすることを、なにかカッコワルイと軽視する風潮があるように思う。

確かにドイツは、この20年間で再エネを2.6%から27.5%まで引き上げ、原発は30%から13%まで引き下げて22年までに閉鎖すると公言した。石炭火力からも38年までに撤退する脱石炭政策が法制化される見込みという(電気事業連合会資料)。こんな手品のようなことをなぜ公表できるのか。

筆者はいずれドイツがこっそり取り下げると思う。が、前記資料に依ればこの手品の秘密の一つは、送電網が共有される欧州という地域性にあり、島国の日本ではあり得ないという。つまりドイツは、隣国のフランス、デンマーク、スイス、チェコと電気を融通し合い、ピークを乗り切るとのこと。

しかし、風力が主力で人口の少ないデンマークを除けば、どれも原発が頼りの国々だ。しかも色がついていない電気は、例えばスイスが原発で発電した分がドイツを経由してチェコに流れるようなことが普通にあるという。つまり、各国の電気の輸出入量は常に振れる。

この様なからくりのドイツのエネルギー政策を環境先進国ともて囃し、日本も見習えいうのは、隠すことのできない事実であるホロコーストを膝まづいて懺悔したシュミットに倣って、そんな事実のない慰安婦に謝れと安倍総理に強いることと同工異曲の戯れ言だ。

GDPこそ世界3位かも知れぬが、今や日本経済の実力は、一人当たりの諸指数が20~30位の二等国だ。グテーレス国連事務総長が「石炭中毒」と腐そうが、韓国に福島処理水の放出で文句を言われようが、日本には日本の国益がある。政府と国民はこの現実を弁えて、改めて「富国」を目指すべきだ。

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