小売店がポビドンヨードを値上げすべき3つの理由

2020年08月07日 06:00

8月4日の吉村大阪府知事の発表以降、ポビドンヨードうがい液が品薄になっていると聞きます。ポビドンヨードは外科手術前の消毒等にも使用するため、今後品薄がそこまで波及すると影響は大きくなります。

(参考拙稿)ポビドンヨードうがい薬が新型コロナに有効という指摘は既出だった (2020年8月5日)

このような買い占めや転売を誘発したものとして吉村府知事を批難する声もあがっています。しかしそれを理由に得られた情報を公表すべきではないというのは、国民不信に基づく情報統制といえるのではないでしょうか。

市場原理に基づいて小売店は今すぐポビドンヨードを値上げし、転売目的の買い占めを防ぐべきです。マスクやトイレットペーパーの轍を踏んではいけません。

1.需要に応じた価格が転売屋の介入を防ぐ

店舗から消えたうがい薬(編集部撮影)

これは経営の基本ですが、需要があれば価格を上げることができます。歯医者だって自費治療に関しては価格を自由にできるので、市中のニーズに合わせたものに設定しています。

ポビドンヨードもメーカー小売り希望価格はありますが、最終的な売値は小売店が決めます。商売の本質に立ち返れば、吉村府知事の記者会見を見終わったらすぐに店舗の値札を書き換えるというのが健全な経済活動です。

こうならない理由の1つは、世相に応じた値上げをすると批難されるのではないかという同調圧力。もう1つは個人店が少なくなり、大手チェーンが支配的になったゆえの、意思決定の遅さにあると思います。

その結果需要と価格が乖離するため、転売屋が付け入る余地が生まれます。

2.ネットが加速させた自由市場経済を止めることはできない

写真AC:編集部

同調圧力によって実店舗が価格を固定していても、ネットオークションやフリマアプリが発展した現在では、需要に対して「割安な」商品はすぐにネット上で転売されていきます。

これはインターネットによる自由市場経済の実現という側面を持ちます。

例えばキューバなどは価格統制がつよく、表向きは官製価格です。しかし抜歯以外の歯科治療を受けようとするなら、相応の袖の下が必要になるそうです。価格はいくら固定化しようとしても需要に応じた変化は不可避で、それを防ごうとしても二重経済になるというのが実際です。

アベノマスクのような配給制や、一人一箱などといった制限も本質的な解決にはならず、余計に歪みが大きくなるだけです。

3.商品の所在が消費者に明らかになる

例え実店舗でポビドンヨードの小売価格が数倍になったとしても、マスクやトイレットペーパーのように入手不可能になるよりは良いでしょう。店舗に行けば割高でも購入できるとなれば、本当に必要な人の手に商品がわたります。

転売屋にとって元値が安く保存が効くものは良い商材なので、小売価格が割高になると転売屋は先行投資のリスクが高くなり、買い占めによる寡占も難しくなります。

価格の高騰はこれまでも一時的なものなので、仮に価格が数十倍になっても常に入手可能であるなら、一般市民は多めに購入する必要がなくなり、節約しながらブームが落ち着くまで凌げるだろうと考えられます。

まとめ

一般的には世相に応じた価格の上昇は、拝金主義的だとして批難されることも多いかと思います。

しかしこのような自由市場経済の原則に立ち返ることは、転売屋による寡占や価格つり上げから、消費者を守ります。また小売店やメーカーの収益も確保され、需要が続く場合には設備投資による増産につながり、そうでなくとも雇用は安定するでしょう。

自由市場経済の父、アダムスミスの言葉を引用します。

私たちが食事を期待するのは肉屋や酒屋やパン屋の慈悲心からでなく、彼ら自身の利害関心からである

社会の利益を増進しようと思い込んでいる場合よりも、自分自身の利益を追求する方が、はるかに有効に社会の利益を増進することがしばしばある

最後に付言しますが、ポビドンヨードうがい薬は医薬品なので転売すると犯罪になります。

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中田 智之
歯学博士・医療行政アナリスト

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