ALS患者の尊厳と存在意義を保つためには?

例①
例えば私は毎日19~25時くらいまでiPadをしています。最近は取材対応や患者さんからの相談対応が多いです。私は遅筆を自覚しているので、今日書けることは今日終わらせる主義にALS罹患後はなりました。なので明け方までiPadをしていることも稀にあります。

その時もしヘルパーさんが「そろそろ寝ましょうね」と言って、勝手にiPadを片付けたとしたら私の尊厳はズタズタに傷つきます。ヘルパーさんからしたら私の体調を気遣っての善意の行動なのかもしれません。

しかしALS患者は自分で判断出来るのです。よってALS患者に対して『良かれと思っての行動』は禁物です。その行動が患者の意に反していたとしたら、患者の尊厳を著しく損ねる可能性があります。常に患者の意思を確認することがALS介護の基本であり、留意事項だと当事者として強く申し上げます。とにかく患者本人とのコミュニケーションに真摯であって欲しいです。

例②
私は現在我が家に来る郵便、学校からのプリント、子供達のテストなど全てに目を通しています。また妻はどんなに些細な書類も私が目を通してないものには絶対にサインしません。それは妻がALSでもこの家の家長は私と思っている証拠です。

これは恩田家の判断は全て私が責任を負うという、妻から私へのALSになる前からの変わらない絶対的信頼です。裏を返せば『ALSに甘えないで!あなたなら出来るでしょ!』という、妻からの叱咤激励と共に私の存在意義を全面的に肯定する行為です。ここにも『良かれと思っての行動』は一切ありません。

家族も含めて私のチームは基本的に私の意思を一番に尊重します。つまり私の全ての行動は自己責任で行なっているということです。それって好き勝手に生きてきたALS前と本質的には何も変わってないということです。だから私の尊厳は保たれてるし、存在意義を見失うこともないです。

どうかALS患者を一人前の人間として接してください。勝手に決めないでください。我々は自分で判断出来ます。


この記事は、株式会社まんまる笑店代表取締役社長、恩田聖敬氏(岐阜フットボールクラブ元社長)のブログ「ALSと共に生きる恩田聖敬のブログ」2020年8月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。