野手を投手起用した原監督が失ったもの

2020年08月11日 06:00

巨人の原監督が、8月6日の阪神戦で、内野手の増田大輝を投手として起用するという奇策を打ってファンを仰天させた。

そしてこの「奇策」はプロ野球OBまで巻き込んで白熱。意見は賛否両論、口論乙駁、翌日になっても収まらず、物議をかもすこととなった。

問題の場面

4-0の阪神リードで迎えた8回の裏阪神の攻撃。原監督は堀岡を登板させた。堀岡は2016年の育成ドラフト出身の21歳で昨年の登板回数は4回1/3、今年もここまで5回2/3と経験が浅い投手だ。

4点差がついた終盤、巨人の攻撃は9回の1回だけで敗色は濃厚の場面。こういった勝つ確率が少ない状況で若手を試したり、敗戦処理として使うことはままあるケースだ。

しかし、堀岡は1アウトも取れずに3点を献上。その後1アウトはとったものの、阪神・中谷に満塁ホームランを浴び、点差は11-0と完全に試合を壊してしまった。

問題は次の場面で起きた。原監督は堀岡を降板させると、なんとピッチャーに増田大輝選手を起用したのだ。

増田の登録は内野手、走塁のスペシャリストで、主に1点が欲しい終盤に代走の切り札として使われることが多い選手だ。

今シーズンもその得意の足を生かし、1点差を追う場面で出場すると、果敢に盗塁を決めて、外野への浅いヒットでも俊足を生かして生還してきた。盗塁数は9でリーグ2位、盗塁成功率は.818とリーグ1位の成績だ。

増田の登板に球場はざわめき、ネットは騒然とし、ツイッターでは「投手増田」がトレンドに上がった。

この起用に対する球界OBの意見

この起用に球界OBは賛否は真っ二つに分かれた。

主な擁護派の意見は

巨人OBの上原浩治氏

「きちんと投げれる野手をピッチャーに使うのは失礼にはならない」

現役大リーガーのダルビッシュ氏

「大敗している場面で野手が投げてくれることがどれだけ大きいかを誰よりも理解している」

巨人OBの張本勲氏

「12球団の監督で原にしかできない采配だ。“今日は負け”と腹をくくっている。かつての三原(脩)さんのようだ」とあっぱれ

これに対し批判派の意見は

元西武監督の伊原春樹氏

「考えられない。私がベンチにいたら、原監督とケンカをしてでも絶対にやらせなかった。これはダメ。調子に乗ってどうにかしちゃったとしか思えない」

巨人OB広岡達朗氏

「大差がつき、中継ぎを休ませたいという理由で野手に投げさせるとは、もってのほか。巨人が絶対にしちゃいかん野球」

巨人OBの堀内恒夫氏

「こんなことして相手のチームはどう思うだろうか。馬鹿にされてるとは思わないだろうか」

この件に関して、原監督はこうコメントしている

「俺たちは勝つために、目標(優勝)のために戦っているんだから。今年は、特にケガ人も多い。コロナ禍のルールというのもある。簡単に『ダメだ』と言うのは本末転倒のような気がする。(逆の立場の)俺だったら言わない。(野手の投手起用は)ジャイアンツの野球ではやってはいけねえんだとか、そんな小さなことじゃないんだよ。俺たちの役割は」(東スポより

選手の気持ちをおもんばかった野村克也監督

筆者はこの騒動であることを思い出した。それは、1996年に東京ドームで行われたオールスターゲームだ。

試合は8回を終わって7対3でパがリード。セの9回表の攻撃も2アウト、あと1人で試合終了となった時、パの仰木監督がピッチャーを西崎からイチローに交代した。バッターは巨人の松井、イチローは投手ではなく言わずとしれた外野手だ。

イチロー対松井の対決が見られると球場にいたファンは大歓声、テレビの前のファンも大喜びしていたと思う。

しかし、これに対しセの野村克也監督が血相を変えてベンチを飛び出すと主審に代打をコールした。代打はピッチャーの高津(現ヤクルト監督)。高津は野村監督と同じヤクルトだった。結果、高津はショートゴロで試合終了。

試合後、野村監督は松井をピッチャーに交代した理由を語り、「日本シリーズにも出ている名監督と言われる人が、人の痛みを分からないようでは困る」と、仰木監督を痛烈に批判した。

野村監督の人の痛みとは、松井の気持ちだった。松井は巨人どころか日本球界を代表する打者。その打者がもし、野手の投げたボールを打ち損じたら、ましてや三振でもしたら松井のプライドは深く傷つくと考えたのだ。

原監督が失ったもの

原辰徳(Ship1231/Wikipedia)

問題の場面、まだブルペンには中川、大竹、鍵谷、大江の4投手が残っていた。このことから原監督の意図は明白で、これから過密が日程になるため、少しでも投手を温存しておきたかったのだ。

確かに原監督はこれにより1人投手を使わずにすみ、温存できたかもしれない。しかし、増田選手の気持ちは正直、割り切れないものがあったのではないかと思う。さらに言えば、これによって野手陣も、盗塁王を狙える増田の使われ方に疑問を抱いた選手も多いのではないか。

また、批判のコメントとしてメディアにはあまり現れていないが、代えられた堀岡にしても、専門であるピッチャーが専門外の野手にその座を奪われ、そのプライドは傷ついたのではないか。

あの投手起用から原巨人は、3連敗の後引き分け1つで勝ち星はない。打線も1試合の平均得点数は1、平均安打数は4.5安打と低迷している。

原監督の今回の采配の良否は、これからの試合結果に現れてくるのではないかと思う。

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