フリーズできるものと消滅するもの…コロナ禍での経済 政治 社会

Freezeとは冷蔵庫のフリーザーと同じで氷結させることを意味します。鮮度がよいものを一気に冷凍し、時間を止め、頃合いの良い時に解凍して食べるのは誰でも知っていますが、社会全体の時間がフリーズするとどうなるのだろうと改めて考え始めました。

作:しばいぬだいすき/写真AC

コロナが始まった頃、私は電源を抜いた状態と申し上げました。しかし、思った以上に時間がかかり、最近の新規感染者急増にこれは電源どころではなく、フリーザーで氷結状態になるのかもしれないと思い始めています。

経済は十分ではありませんが、動いています。政治も動いています。人々も活動しているもののかつての自由はなく、マスクは衣服や靴と同様の装着マストアイテムとなりました。集会もできず、大型の会議もキャンセルされ、国外への移動はほぼ消えました。

写真AC

経済の巡航速度とはよく聞きますが、世の中にはあらゆる巡航速度があります。子供たちの学校、病気の治療、出産や葬儀、アニバーサリーや各種イベントや計画…。芸能の世界でも例えば人気グループ「嵐」は今年いっぱいで活動休止をするにあたり、今までの活動精力をすべてこの1年に集約させるぐらいの計画でしたが消えました。高齢者は外出を控え、人との接触を断っていますが、これでは刺激がない生活が続き、痴ほう症の老人が増えかねません。時間が無為に過ぎていくことは止めることはできず、鮮度が落ち、消えていきます。消滅です。

ここにきて政治日程をフリーズする話も多く聞こえてきました。トップを切ったのが香港で9月に予定されている立法会の選挙を延期することになりました。その期間1年。勿論、これには背景があります。コロナにかこつけて長期間選挙を延期し、民主化運動を支援する候補者潰しを行うのでしょう。フリーズにかこつけた消滅戦略です。ただ、初め、1年延期と聞いた時、ずいぶん先送りしたと思ったのですが、ここにきてそれぐらい時間がかかるのかもしれないと思い始めています。

アメリカからはトランプ大統領が11月の大統領選の延期の可能性をつぶやきました。反対論が各方面からすぐに上がり実現性はほぼありませんが、気持ちが理解できないわけではありません。それは国民がコロナ対策で辟易とし、落ち着いて国のことや次の大統領のことをゆっくり考えられないのではないか、と思うからです。

(出典:トランプ氏Facebook、編集部)

日本からはささやかれていた秋の解散総選挙は否定的と菅官房長官が述べました。首相の解散権は学説的には疑義がありますが、首相の専権事項とされています。コロナ状況が目先大きく好転すれば別ですが、今の時点で解散総選挙など仕掛けようものなら国民から大バッシングであることは間違いないでしょう。

ところでクマの冬眠は4-6カ月とされます。コロナが本格化したのが3月だとすれば8月末で6カ月です。クマと我々の社会が一緒だとは言いませんが、フリーズや制限あるライフには限界があります。多くの社会活動は我慢に我慢を強いられています。北米ではほとんどのイベントが中止となり、その多くを占めるファンドレイジングキャンペーンもできません。そうなれば非営利団体などの支援活動も止まりかねません。これらを政府の資金で賄い続けることは不可能です。

東京都は20万円の営業補償金で飲食店に対して再び営業時間の短縮を申し入れました。しかし、金満東京都でももっと出さねばならない支出先は今後、雪崩のように押し寄せてきます。その点からすれば申し訳ないですが、飲食店への20万円の支援は違う気がします。やるなら一人当たり3杯までといった酒量制限だったと思います。さっさと帰ってもらう、あとは酔わせない、これです。

都知事公式Facebookより

国と都道府県は財源も含め、いかにして長期戦に臨み、コロナ後のリハビリ含め、財源を含めた復興策がスムーズに構築できるかが決め手になります。高齢化社会、子供の教育、変化する経済と経営環境など難問山積となってきています。今年春に大学生になった諸君は一度もキャンパスに足を踏み入れたことがない状態になっています。新入社員も会社がどんなものか、いまだに知りません。こんなフリーズはあまりにもかわいそうであります。

いったんフリーズしたものは解凍するのには時間がかかります。この部分の発想も抜け落ちている気がします。目先に追われず、フリーズできるものとできないものを分け、社会的影響度をもっと広範囲で考えないと思わぬところで思わぬ影響が出てくるような気がします。そこにはメディアへの発信の中身の変化も必要かもしれません。新規感染者数で煽るのではなく、我々が何をすべきか考え、訴えることも必要でしょう。暑さもあり、ストレスフルな日々との戦いはもうしばらく続きそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年8月16日の記事より転載させていただきました。