カマラ・ハリスは“スリーピー・ジョー”の伴走者として適任か?

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そのロイターが12日以降、バイデンに伴走する民主党の副大統領候補に選ばれるであろう、黒人女性で史上2人目の上院議員カマラ・ハリスの記事を数本載せている。ランニングメイトというらしいから「伴走」と題したが、バイデンの耄碌ぶり報じる記事を見るにつけ、我ながら「言い得て妙」。

バイデン氏とハリス氏(バイデン氏公式ツイッターより)

それにしても今回の民主党の候補者は、筆者にはどれも首をかしげる御仁ばかりに思えた。バイデンより年長の社会主義者サンダース、急進左派のウォーレン女史、親中派のライス女史、そして若く颯爽とした同性愛者ブティジェッジといった具合。いかにも米国リベラルの面目躍如。

やはりハリスが無難だったのだろう。インドの血のせいか精悍(指揮者のズビン・メータ似)で気が強そうだ。早速、陣営の集会ではトランプのコロナ対応を批判し、バイデンへの交代を訴えた。が、あらゆる意味で馬鹿デカく、そして多様な米国のコロナ対策は誰がやっても難題だ。

ロイターは自社の世論調査も載せていて、ハリスの起用を民主党員の9割が支持しているそうだ。「主要な人口層の大半でハリスはバイデンよりも好ましいかあるいは優れていると見なされて」いて、11月の大統領選に向けて「バイデンの支持層拡大に貢献する可能性が示された」とのこと。

11〜12日の調査では、バイデンのトランプに対する支持率のリードは8ポイントと、ハリス起用が発表される前から1ポイント拡大した。中身は成人の46%がバイデン・ハリス支持、38%がトランプ・ペンスを支持で、前回調査(10〜11日)ではバイデン支持44%、トランプ支持が37%だった。

ハリス起用が概ね好評のようだが、筆者には、副大統領候補の方が正候補より高評価という辺りが、今回の大統領選での民主党の一番の弱みに思える。だったらなぜ初めから正副を逆にしないのか、との疑問が湧くからだ。が、この疑問には答えられまい。弱点を晒すことに他ならないから。

世論調査では、18日の産経もCNNテレビが17日に公表した12〜15日の調査を報じた。記事によれば6月調査でバイデン55%、トランプ41%だったのが、今回はバイデン50%、トランプ46%と一気に4ポイント差に詰まり、激戦州15州ではバイデン50%、トランプ48%とほぼ並んだとのこと。

Gage Skidmore/flickr

ABCテレビの17日発表の調査では、トランプ支持者の65%が同氏を「熱烈に支持する」一方、バイデン支持者の同氏への熱烈支持度は48%にとどまるそうだ。要するに支持者の熱意に差がある。片やエアフォースワンで精力的に飛び回り、片や地下室に籠城では、こういう結果が出るのも頷ける。

そもそも筆者がトランプを支持するのは、彼の対北朝鮮政策と対中国政策に賛同するからだ。確かに北への対応には異論もあるが、核を放棄するまで制裁を緩めないとの国連安保理方針維持は微動だにしない。血を流さずにそれを進めるためなら、金正恩への歯が浮くような世辞も厭わない(参照:拙稿『「図に乗るなよ若造!」と思いつつも、トランプが金正恩に寛容な理由』)。

対中政策でも、習近平を褒め殺して関税合戦を有利に進めた。これが一段落しコロナ問題が出来するなり、一転して習の二枚看板である「一帯一路」と「中国製造2025」を潰しに掛かる。ウイグルや香港で中国共産党が露骨に過ぎたところを鋭く衝くトランプの迫力は、到底バイデンにはなかろう。

産経は18日の別記事で、バイデンが勝った場合の民主党の対中政策について、黒瀬特派員にこう書かせている。

18日に採択された党綱領などから読み解く限り、経済や安全保障など広範な分野で中国に付け入る隙を与えたオバマ前政権のような“対中融和”路線に回帰していく恐れをはらむ。

その綱領は、中国などによる国際規範の弱体化を図る動きには「友邦・同盟諸国を結集して対抗していく」と強調しつつも、「中国からの挑戦は基本的に軍事的なものでないと信じる」とし、「自滅的で一方的な関税戦争に訴えたり、“新冷戦”の罠に陥ったりしない」としているという。まるで共産中国の戦狼報道官のセリフを聞くようだ。

国内政策でもリベラル回帰の様相だが、先のロイターは、ハリスが大統領選で述べた温暖化対策構想「グリーン・ニューディール」や国民皆保険制度「メディケア・フォー・オール」などの進歩主義的な政策をバイデンは支持していない、と両者の政策の齟齬を書いている。

ところで目下のトランプが支持率を落としているのは、新型コロナウイルス禍、景気悪化、人種差別と警察の暴行に対する抗議活動などが原因とされる。

だが、19日のブルームバーグのニュースレターには、「米住宅着工件数、7月は22.6%増-16年10月以来最大の伸び」、「S&P 500最高値更新、ハイテクが主導-ドル全面安」、「中国が米国産原油の購入拡大、前月の2倍余りとなる可能性」など、米国の景気上昇を示す語が並ぶ。

未知のコロナ対応やその悪影響なら、世界各国どこも似たり寄ったりだし、恨むなら時の政権よりも共産中国だろう。人種差別や暴動問題も「マジョリティーはサイレント」ではなかろうか。「あなたの知人は誰を支持しているか」と問う世論調査では、トランプ支持が優勢だそうだ。

12日の米政治メディアPOLITICOは女性副編集長の、過去に女性を副大統領候補にしたモンデールとマケインが共に敗れた記事を載せた。共和党レーガンに敗れたモンデールはフェラーロ下院議員を、民主党オバマに敗れたマケインはアラスカ州知事のペイリン女史をランニングメイトにしていた。

記事は、「行政に立候補する女性は有資格者であることを有権者に証明する必要があるが、男性は有資格と見なされる」とし、そして女性が「タフ過ぎる」場合、「好感度」が低下する可能性があり、有権者は「嫌いな男性には投票するが、嫌いな女性には投票しない」とのある調査結果を書いている。

記事はまた「核のボタン」にも触れている。記事はそこまではっきりは書いていないが、要するに「核のボタン」を押すことは女性には「タフ過ぎる」一方、それが出来そうな女性は選ばれないだろう、と述べているように読める。

脳を何回か手術したとされる高齢者と「タフ過ぎる」ように見える黒人女性のコンビと、普通ではないが実績を積んだ現職と岩のように安定感のある伴走者のコンビ、果たしてどちらが勝つか、筆者には凡その見当がついてきた。