米中冷戦体制の始まり:ココム体制の再構築、発火点は尖閣と台湾か

2020年08月21日 06:01

会長・政治評論家  屋山太郎

米国の民主党が政権を取れば、対中国政策はソフトになると言われてきたが、外交筋の観測は、どちらが取っても対中強硬路線は変わらないとの見方で一致している。

米国の強硬策の一つは、米国の研究所、大学、企業から中国人を大幅に追放していることだ。中国の技術窃盗方法は「千人計画」と言われ、千人規模の技術者を官民両方から送り込んで、技術をそっくり盗んでしまうやり方である。

これで最高級品を製造し、世界規模に発展させる。成功した象徴はファーウェイ(通信機器産業)だが、この企業は実質的な国営企業で、コストが高いときは政府補助金をつぎ込み競争力を高めた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の調査報道によると、ファーウェイ製品には価格の30%相当の政府補助金が交付されていた。

競争相手がコスト負けして企業が傾くと、企業全部を安価で買収する。世界貿易機関(WTO)は自由主義経済でフェアな競争を行わせて製品の向上競争をさせるのが理念だ。フェアな競争を担保するために知的財産権が保護されている。中国の超スピードの繁栄はこうした規則やルールを無視したがために達成できた。

トランプ氏の中国叩きの基本にあるのは知的財産の窃盗、政府補助の禁止で、とりあえず禁止の対象を世界一のファーウェイに定めた。ファーウェイが生産する製品自体は民生品だが、軍需産業にも食い込み始めた。

ファーウェイ製品には秘密のバックドア(裏口)が埋め込まれていて、それは北京でしか操作できないと言われる。「そういう危険な部品を軍需製品には使えない」との安全保障上の理由で米政府は18年8月から使用禁止にした。禁止された中国ハイテク5社はファーウェイ、中興通訊(ZTE)、海能達通信(ハイテラ)、監視カメラのハイクビジョン、ダーファ・テクノロジーだった。さらに米政府は今月からこの5社と取引する企業も調達先から締め出すことを決めた。

この米国の政策は世界にはびこっている中国のハイテク産業と対峙する目的を持っている。5Gと言われるハイテク新時代をリードするハイテク企業をどう育てるのか。台湾企業を米にもってきて育てる案が強い。

一方で西側企業の製品を使おうという意向がファイブ・アイズ(米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージンランド)を加えた5ヵ国でまとまっている。ファイブ・アイズは情報収集、監視体制を備えた組織で、アジア・太平洋機構を唱える日本にもうって付けだ。

すでに河野防衛大臣は英国とのテレビ会談で加入の意向を示した。米ソ冷戦の際、ほとんどの国が、米側に属するかソ連側に属するかで二分され、武器製造に関する製品の輸出入が厳しく監視された。俗にココム体制(対共産圏輸出統制委員会)と言われたが、ファーウェイ追放とか、ファイブ・アイズの拡大も米中の冷戦対決の再構築にほかならない。

その発火点は、尖閣諸島と台湾だろうと軍事関係者は見ている。
(8月19日付静岡新聞『論壇』より転載)

屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生まれ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、解説委員兼編集委員などを歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。著書に『安倍外交で日本は強くなる』など多数。


編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2020年8月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。

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