都民全員にPCR検査は必要か?

2020年08月23日 06:00

最近、識者からも「いつでも、誰でも、何度でもPCR検査ができるようにするべきだ」という声を聞くので、「それは違う」と申し上げている。

IAEA/flickr

たしかに、コロナ発生当初は、検査能力の不足や入院先の不足懸念から、保健所がPCR検査の対象者を絞り込んでいたことが伺えたし、事実、東京都健康安全研究センターには1日100件程度の検査能力しかなかったことから、検査体制に脆弱さがあった。

それを象徴するのが3月頃の都内の陽性率の高さである。当時、陽性率が約30%に達していたということは、「まちがいなくコロナだ」と思われる人しか検査を受けさせてもらえなかったことを意味している。

一方で、検査体制が充実し、感染抑制がはかられた緊急事態態宣言解除の頃の陽性率はというと、1%を切っていたし、第2波かとも言われる現在も陽性率は7%程度なので、「コロナかも?」と思われる患者に対して、十分にPCR検査が行き届いていると言い切れる。この陽性率が15%を超えてくると、検査の絞り込みを懸念しなくてはいけない水域だと付け加えておきたい。

最近は、「コロナかも?」ではなく、「だれでも」受けられるようにして、陽性が出たら隔離するべきだとの声を聞くようになったのだが、ここは、整理して考える必要がある。

まず、PCR検査は無料ではない。一回2〜4万円程度かかるものを、保健所が必要と認める検査については保険適用で自己負担なしにしているに過ぎない。結局は税金だから、皆さんの負担になって返ってくる。症状がある人に検査を受けさせるのは当然としても、安心して仕事がしたいから、レジャーに行きたいから、税金でPCR検査を受けたいというのは、税の公平性から大いに問題がある。

そこで、PCR検査を5つのカテゴリーに分けると位置付けを整理しやすいと思う。

三角形の上から下までをレベル1からレベル5とする。

  • レベル1 コロナ疑いの人または陽性患者の濃厚接触者
  • レベル2 業務上感染リスクが高く、感染させた場合に重症化しやすい方に対応している、例えば医療従事者や高齢者施設の職員など。
  • レベル3 仕事をする上で、陰性証明をしたい人たち。
  • レベル4 帰省やレジャーなどで陰性証明をしたいひとたち。
  • レベル5 陽性者を割り出すために、全ての都民。

わかりやすく5段階に分けた場合に、レベル1は、保健所または医師の判断で保険適用して検査を受けることになっており、当然、自己負担はゼロ。

次にレベル2が現在、議論の的になっているが、私は、行政が検査代を負担して、希望者が定期的にPCR検査を受けられるようにすべきだと考えている。例えば、高齢者施設などは、希望する職員のPCR検査代を誰が負担しているかといえば、現時点では、事業者である。4万円の検査を100人が受ければそれだけで施設経営者の負担は400万円で、経営上あまりに痛すぎる。

写真AC:編集部

レベル3は、例えば、プロ野球選手が開幕前に受けていた検査のことである。芸能人も定期的に受けている人が多いと聞く。これらについても、行政が負担すべきとの意見も一部あるが、医療従事者などとは公共性の意味合いが違うことに加えて、線引きも難しいので、税の公平性の観点から行政で負担するのは困難だと考えている。

レベル4については、やはり、個人の都合による検査ということになるので、個人負担でお願いせざるを得ない。

レベル5は都民全員だが、仮に都民全員がPCR検査を受けたとすると、1300万人×4万円で、5200億円になる。これにより、陽性患者が割り出されて、コロナを一気に解決できるかと言えば、そもそも1日で1300万人を検査できるわけではないので、時差が生じ、その間も感染が広がっているから、2週間に1度程度、都民1300万人が2度、3度と検査を受ける必要が出てくるのだ

実際に検査を受けない人も半数以上いるであろうから、際限なく検査が続くだけで、現実的には不可能である。その5200億円を医療機関の支援に回した方が、重症化した患者の命を救う投資になることはご理解いただけるはずだ。

ここで何を指摘したかったといえば、メディアなどの議論がどうも、PCRを増やすか増やさないかに絞られ過ぎていて、PCR検査をどう戦略的に活用していくか、そのコストと効果の検証をどうはかっていくかが乏しく心許ないということだ。

私の結論は、まず、疑わしい症状がある人や、濃厚接触者が必ずPCR検査を受けられるようにしておくことと、保健所が濃厚接触者を絞り込まずに、できるだけ幅広く指定し、検査に回す仕組みになっているか、監督を怠ってはいけないということだ。

加えて、医療従事者や高齢者施設など、感染した場合に重症化しやすい高齢者などの対応にあたる職員、例えば、救急隊員なども含まれるだろう、これらの方々のPCR検査については、公共性の観点から行政が費用負担し、必要に応じて、いつでも検査できることが望ましく、制度化するべきだと考えている。

現時点では、それ以外の方々への検査については、自己負担でお願いするとともに、自己負担の検査が十分にできるように、検査機関に対する支援は行政として行うべきである。さらには、検査コストが下がれば、自己負担の検査も容易に受けやすくなるため、そうした技術開発についても行政が支援すべきである。

しかし、誰でも行政負担でPCR検査を受けられるようにすべきかと言えば、今の検査費用や検査技術においては、妥当ではないと申し上げておきたい。

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伊藤 悠
東京都議会議員(目黒区選出)都民ファーストの会 政調会長代理

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