防衛装備、官民で輸出拡大:取らぬ狸の皮算用

防衛装備、官民で輸出拡大 インドなどで市場調査(日本経済新聞)

政府は2021年度から日本製の防衛装備を海外に売り込むために民間企業との協力を拡大する。新たに輸出先の市場調査などを委託する。当面は台頭する中国への対応で協力を目指すインドとインドネシア、ベトナム、マレーシアの4カ国を対象とする。

装備品の輸出は相手国と防衛装備品・技術移転協定を結ぶ必要がある。インドとは16年3月、マレーシアとは18年4月にそれぞれ協定を発効済みである。インドネシアとベトナムは交渉中の段階で、市場調査と並行して早期締結へ調整を急ぐ。

まあ、河野大臣が張り切っているので、なんかやらないといけないのでアリバイ作りじゃないでしょうか。本気でやる気はないでしょう。

陸上自衛隊サイト

先日はぼくの質問が発端で広域多目的無線機(コータム)のデモを防衛省でやりましたが、ぜったい通じる条件でした。連隊基幹の通信システムを通じてのデモですらなかったし、他国の無線機との比較もなかった。大臣が騒ぐのでやった感を出しただけのセレモニーでした。

常識的に考えたら通信速度は他国の三分の一で、高解像度の静止画はもちろん動画すら遅れない骨董品です。にも関わらず、陸幕はメンツがあるので大本営発表です。負ける軍隊は反省をしません。ホント税金返してほしいです。

長年ぼくが報じているように防衛産業の問題は根が深いわけです。日本の防衛産業をどう振興するか、取捨選択、事業統合はどうするのか、防衛依存率わずか1~3%ぐらいの比率の大企業にまかせておいて本気で取り組んでくれるのかどうか。

防衛省にしがみついていればいいといいう寄生虫みたいなメーカーはどうするのか。そもそも彼らは輸出なんて面倒でリスクを抱えたくはない。こういう企業を切ることも必要です。が、そういう厳しい現実には目を向けることはない。

いつものやっている感だけをだすイベントを行って我々の血税を無駄にするだけです。

政府内には災害対策に使う救難ヘリコプターや通信機器の輸出に期待がある。4カ国は日本と同様に地震や津波などの自然災害が多く、自衛隊の装備をいかしやすい。

政治家ですらこの程度の認識の平和ボケばかりです。自国のヘリが外国製のライセンスや組み立てばかりで、お値段は2~3倍でサポート体制もお粗末。警察海保はもちろん、民間だって国内メーカー製品なんて使っていません。外国が使うわけないでしょう。無線機はコータムの惨状をご存じないのでしょう。

だから陸のUH-Xはエアバスと川重のコンビで新型ヘリを開発する既定路線だったのを安倍内閣(和泉補佐官らしいが)が、アメリカ様に媚びへつらい、歓心をかうために、防衛省の頭ごなしでオスプレイやらグローバルホークやらを調達するので、安かろう、古かろうのスバル案を採用させた。自らヘリ産業の未来を潰したわけです。

まずは自国の自衛隊が一流軍隊であり、防衛産業も一流という幻想というカルト宗教からのマインドコントロールを解かないと話はすすみません。

FH70(陸上自衛隊サイト)

可能性があるのは中古の艦艇や、FH70、P-3Cなどでしょう。あとはアメリカが生産を止めたライセンス品のコンポーネントとかでしょうか。

■本日の市ヶ谷の噂■
河野大臣がうるさいので、広域多目的無線機は通じます!という小芝居をした陸自通信科だが、その実、使えないので、今後野外通信の「最後の命綱」として使用するに留め、民間回線の積極的導入使用によって野外通信量の増大に対応する方針に転じたとの噂。

以下の記事をJapan in Depthに寄稿しました。

陸自 開発実験団評価科長の尊皇攘夷


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2020年8月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。