教育のICT環境整備に見る地域格差とGIGAスクール

2020年08月27日 06:00

公立学校におけるICT環境の整備は長年の課題である。『第1期教育振興基本計画(2008年度)』には「教育用コンピュータ,校内LANなどのICT環境の整備と教員のICT指導力の向上を支援する。また,教材・コンテンツについて,その利用等を支援し,ICTの教育への活用を促すとともに,校務の情報化,ICT化のサポート体制の充実を促す。」と書かれていた。『第2期計画(2014年)』では、2017年度まで単年度1,678億円(4年間総額 6,712億円)の地方財政措置が講じられた。

問題は、せっかく地方財政措置によって交付された資金をICT環境整備に使用してこなかったこと。交付金の使途を判断するのは地方公共団体なので、教育よりも優先すべき施策があるという理由で交付金が「流用」されてきた。

その結果、文部科学省が毎年公表している教育の情報化の実態等に関する調査結果(2018年)によれば、教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数は5.4人と一人一台からは遠く、30Mbps以上のインターネットに接続された学校の割合も93.9%と、全校には行き渡っていない。

さらに問題なのは地域格差。教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数で見ると、佐賀県は1.9人だが、愛知県は7.5人に過ぎない。30Mbps以上のインターネットに接続された学校の割合は富山県では100%だが、山梨県は70.4%である。「教材研究・指導の準備・評価・校務などにICTを活用する能力」があると自己評価した教員の割合は、最高の佐賀県では94.2%だが、最低の滋賀県は81.4%。「児童生徒のICT活用を指導する能力」の自己評価では岡山県は84.4%だが、最低の宮崎県は60.6%にとどまっている。

そのような状況下で、政府はGIGAスクール構想を推進することにした。しかし、交付金を使ってすでにICT環境を整備してきた地方と、他に流用してきた地方とで、対応に差が生まれているそうだ。

GIGAスクールはクラウドに学習教材が置かれ、子どもたちはそれにアクセスして勉強する。どの子どもがどの教材にアクセスし、どんな学習をしたかを記録して指導に利用するには、子ども一人ひとりがアカウントを持つ必要がある。

全国での取り組みを支援するために、文部科学省は「ICT活用教育アドバイザー」という仕組みを作ったのだが、「アカウントって何ですか」とアドバイザーに問いかける教育委員会が存在すると聞いて驚いた。このような教育委員会が、今までICT環境整備に取り組んでいたとは思えない。

先般、全国地方議員勉強会のウェビナーで「10年先を見据えたICT教育」と題して講演した。300名を超える地方議員の聴講を得て、そのうち153名はウェビナー後のアンケートに回答いただいた。その結果は、「未来を担う子供達への教育は重要であり、積極的に推進するのがよい。」が139名(90.8%)、「国策として推進することになったので、地方としても協力するのがよい。」が8名(5.2%)、「他の施策と比べ優先的に推進する理由はない。」が1名(0.7%)だった。

教育に関心を持つ地方議員が聴講したというバイアスはあるが、積極的推進派が圧倒的多数を占めたのは心強い。ICT環境整備に関わる地方財政措置の失敗が繰り返されることなく、GIGAスクールが全国で推進されるように期待する。

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山田 肇
ICPF理事長、東洋大学名誉教授

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