イージス戦艦ってどうよ?

2020年08月28日 06:00

平和が続く日本で高まる「敵地攻撃論」の想像以上の危うさ(ダイヤモンド・オンライン、田岡俊次)

いまの日本のミサイル防衛は、弾道ミサイルに対して、イージス艦の「SM3」ミサイルや航空自衛隊の「ペトリオットPAC3」で迎撃する体制だが、完全な防衛とはならず、突破される公算が大だ。
それでも飛来する弾道ミサイルの一部でも阻止できればその分だけ被害が減じるという、せめてもの効果は期待できる。ただ現状は、ミサイル防衛は実は形だけのものと言わざるを得ない
近く8隻になるイージス艦は、各艦の垂直発射機に90発ないし、96発のミサイルが入り、対航空機用ミサイル16発、対潜水艦ミサイル16発を積んでも、「SM3」ミサイルを58発ないし64発収納できる。
だが1発約40億円もするから、各艦はそれぞれ8発ずつしか積んでいない。北朝鮮は核付き弾道ミサイルを約20発、火薬弾頭付きは約200発持つと推定されている。
相手が核付きと火薬弾頭付きの弾道ミサイルを交ぜて発射してくれば、日本のイージス艦は最初の8発だけに対処すれば、「任務終了、帰港します」とならざるを得ない。
短射程の「ペトリオットPAC3」も同様で、34両の移動式の発射機には各16発を積めるが4発しか搭載していない。
その計画(アショア)は中断されたが、ミサイル48発だけは買い、交代で日本海などに出動して警戒配置につく2隻のイージス艦に24発ずつ追加搭載させれば、1隻で計32発を積むことになり、ミサイル防衛能力は一気に4倍になる。

イージスアショアや敵地攻撃は非現実的という田岡俊二氏の指摘で、お説ごもっともだと思います。

護衛艦「あたご」(海上自衛隊サイト:編集部)

思うのはイージス艦を大きくしてその分ミサイルを増やすことも検討すべきじゃないでしょうか。海自のイージス艦は駆逐艦といいつつ、基準排水量はこんごう級で7250トン、あたご級で7750トンです。米海軍のタイコンデロガ級イージス巡洋艦に匹敵あるいはそれ以上の大きさです。今の海軍は各国「駆逐艦」「フリゲイト」「巡洋艦」の定義もまちまちだから護衛艦=駆逐艦でいいのだという意見もありますが、ぼくは反対です。

それだと専門家やマニアはいいのでしょうが普通の納税者には分かりづらい。サイズ別に「フリゲイト」「駆逐艦」「巡洋艦」を規定してそれぞれ何隻が必要かを納税者に説明すべきです。実際に海自は、既にFFMはフリゲイト扱いにしています。どういう目的でこのサイズの艦が何隻、そしてこういうポートフォリオを組むのだという説明が必要です。

ヘリ空母まで含めて全部護衛艦=駆逐艦というのは、大綱で決まった隻数ならば大きなフネを作りたい(これは潜水艦も同じ)からという思惑もあるでしょうが、それは納税者に対する背信行為です。

まあ、そこで某ロボットアニメの中将閣下の「戦争は数だよ、アニキ」じゃないですが、イージス艦を大型化して、その分ミサイルを増やす。あたご級はMk.41発射機64+32セルですが、これを128セルとか160セルに増やした「イージス戦艦」を作る。

セルが増えれば、状況に応じた多彩な弾種を搭載できて戦術的な柔軟性は向上しますし、飽和攻撃にも耐性が高くなります。

レーダーや基本的なシステムにかかる費用は同じですからランチーのコストが2倍になり、船体が多少大きくなるだけです。エンジンも30ノット以上という実用上必要ない高速をあきらめて27~28ノットにすれば、あたご級と同じでいいのではないでしょうか。ぶっちゃけた話し、あたご級の胴体をストレッチすればいいだけの話です。

イージス艦を2隻作るよりも遥かに安価に上がります。また乗員も多少増えるだけで2隻分より遥かに少なくて済みます。これは人で不足海自にとって大きなメリットのはずです。

これを4隻建造すれば火力の面ではイージス艦8隻に相当します。旧式艦を早めに除籍して、FFM、警備艦を削減、キャンセルして海上哨戒にはUAVを導入すればいい。海保はシーガーディアン導入に前向きなようですが、海自もシーガーディアンを導入すれば整備コストや兵站コストは随分と下がるはずです。必要とあらば、武装型の導入も検討すべきです。代わりのDDHはいずも級を発展されたヘリ空母2隻を建造すればいい。

護衛艦「ひゅうが」(海上自衛隊サイト:編集部)

新規に4隻の建造が難しいならば前にブログで書いたように中途半端なDDHである、ひゅうが級2隻を転用してもいいでしょう。飛行甲板剥がせば容易に改修してランチャーが搭載できます。イージスシステム搭載は無理でもあたご級からのスレーブで射撃は可能なはずです。それと別に2隻を建造する。

無論「イージス戦艦」は2隻分の戦力があるとは言え、同時に2箇所には展開できません。ですが、費用対効果は高いと思います。隻数を減らしても火力は増やすということも考慮に入れるべきではないでしょうか。

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
自衛隊装甲車「エアコン装備が後れすぎ」の面妖 -旧日本軍と同様「根性」依存のままでいいのか

以下の記事をJapan in Depthに寄稿しました。
陸自 開発実験団評価科長の尊皇攘夷


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2020年8月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

過去の記事

ページの先頭に戻る↑