金銭補償による解雇、いくら払えばいい?

2020年08月31日 06:00

ちぬる/写真AC

厳格すぎる解雇規制を緩和・撤廃すべきだと、今まで何度も主張してきた。

今の日本の法制度だと、正社員を解雇するのは極めて困難だ。
一度雇ってしまうと、下手をすると(企業側は)定年まで面倒を見なければならない。

雇われている側にとっても悲劇で、邪魔者扱いされていびり出されるか、ひたすら耐え抜くしかない。

厳格すぎる解雇規制を緩和・撤廃すれば、「試しに雇ってみよう。ダメなら解雇すればいい」と考える雇い主が飛躍的に増加する。
結果として、ある企業で解雇された従業員にも敗者復活のチャンスが広がる。

マクロ的に見ても、人材の流動化が進み、旧態依然たる産業から成長産業への人材シフトがスムーズに行われる。

しかし、ある日突然、解雇規制を撤廃してしまうと、教育費がかかる子供や住宅ローンを抱えた従業員が路頭に迷うケースが多々あるだろう。
また、日本の終身雇用は「搾取の構造」と言われている。若い時に安月給で搾取された分を、一定年齢後に搾取し返すというものだ。

搾取されたまま解雇するのは、「搾取し返す期待権」を一方的に奪い取る不当なものだという批判もあるだろう。

そこで、現在考えられているのが、解雇する場合に一定額の金銭的補償をするという案だ。
どのようにして補償する金銭を算定するのか?

補償額の「上限」を計算する方法として、その雇用主の下で働いていたら得られたであろう賃金と転職後の賃金の差額の現在価値を計算するというものだ。

例えば、現在の雇用主の下で働いていたら得られたであろう賃金合計が3000万円であり、転職後の賃金合計が2000万円だとすると、差額は1000万円になる。
それに一定の割引率を用いて現在価値に引き直す。

定年までの残り期間が5年だとすると、その年数に応じて現在価値を計算して800万円くらいになる(厳密な計算はまったくしていない)。

とある研究によると、(割引率を3%として)1000人以上の規模の会社で20年間働いた男性従業員の補償額はおよそ32ヶ月分の賃金になり、100人以上999人以下の規模になると約23ヶ月分、99人以下の規模の会社だと17ヶ月となったそうだ(先述したように、これはあくまで上限だ)。

規模の大きな会社は概ね賃金が高いので、この結果には説得力がある。

以上の計算が妥当かどうかは争いがあるが、一つの目安にはなるだろう。
ざっくり言えば、大企業の働かない40代の中年社員を解雇するには、最大32ヶ月分の補償金を出せばいいということになる。

退職金規定があれば退職金は従業員の権利なので、32ヶ月分の賃金は割増分となる。
もちろん、現在では割引率3%という数字はかなり高いので、上限はもっと少なくなると思われる。

また、この計算方法が妥当かどうかは争いがある。
しかしながら、どんぶり勘定で金額を決めるよりは遙かに説得的で合理性がある。


編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2020年8月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

過去の記事

ページの先頭に戻る↑