バロンズ:テクノロジ―株の急落、ITバブル崩壊の再来か

2020年09月07日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーは定年後の生活と貯蓄を取り上げる。定年後の生活に備え貯蓄することは決して容易ではない。さらに新型コロナウイルスの直撃を受け、貯蓄は一段と困難になった。

証券会社エドワード・ジョーンズの調査によれば、定年を控えた米国人50~64歳の間で「十分に貯蓄した」との回答は8月に48%と、コロナ禍前の65%から低下。また、同年齢層で子供に金銭的支援を与えているとの回答は28%にのぼり、貯蓄にまわす資金を押し下げる状況だ。所得環境も悪化し、保険会社プルデンシャル・フィナンシャルが7月に公表した調査では、中小企業オーナーの3分の1、ベビーブーマー世代の8%がコロナ禍で家計所得が半減したと回答していた。

こうした厳しい環境に配慮し、3月に成立した景気刺激策では年末まで、59歳と6カ月以上の年齢を対象に年金の引き出しにつき最大10万ドルまで、最大10%の罰金を支払わずに引き出すことが可能になった。しかし、税制を含め今後は米大統領選を控え不透明である。予定通り定年を迎えるにあたり不確実性が高まる中、どのような対応が想定されるのか。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週はテクノロジー関連株が主導した米株安に焦点を当てる。抄訳は、以下の通り。

カバー写真:Russ Allison Loar/Flickr

テクノロジー関連株がサマーラリーの後に急落、ITバブル崩壊の二の舞か?Tech Stocks Slide After a Summer-Long Rally. Is It the Dot-Com Bubble All Over Again?

夏の終わりに直撃するスコールは大荒れとなりやすいが、早々に過ぎ去る傾向がある。

米株相場が突如襲われた急落劇も、長く続かないのではないか。大手テクノロジー関連が牽引したメルトアップ相場は9月3日に売りの大雨を浴び、市場全体を押し下げた。ウィルシャー・アソシエイツによれば、9月3~4日のたった2日間米株の時価総額は1.7兆ドル吹き飛んだものだ。8月31日週にS&P500種株価指数は2.3%安と6月後半以来で最も下落し、ダウは1.8%安で引け。ナスダックに至っては3.3%安と3月以来の落ち込みをみせた。

しかし、3月23日の底値から時価総額は13.1兆ドル膨らみ、年末から2.2兆ドル拡大した。S&P500種株価指数も自体も3月23日から55.7%上昇し、年初来のリターンは6.1%高である。

今回の急落劇の引き金を引いたのは誰か。少なくとも、オプション取引が槍玉に挙げられている。日本の通信大手ソフトバンクが資産売却で得た資金で設立した投資運用子会社を通じ、アップルやアマゾン、アルファベット、マイクロソフトなど個別のハイテク株に40憶ドル投資していた。さらに同社はコールオプションを購入、オプション取得でプレミアムを支払えば株式エクスポージャーは想定元本を大幅に上回ることになるが、ソフトバンクのエクスポージャーは500億ドルに達したという。アップルなどGAFA+MなどはS&P500の時価総額の約4分の1を占めるなか、ソフトバンクのオプション取引は相場反転時、指数がこれらIT銘柄の巨人の道連れになるリスクを一段と高めたと言える。

また、小口の投資家にとって、短期的なアウト・オブ・ザ・マネー(原資産の価格が権利行使価格を下回っているとき)のコール・オプションは、GAFA+Mが主導する強気相場において宝くじとなり、米株高を演出したとみられる。

UBSでグローバル・ウェルス・マネジメントの最高投資責任者(CIO)を務めるマーク・ハーフェル氏によれば、テクノロジー株のラリーが長きにわたって続いた後、個人投資家と機関投資家は、損失のエクスポージャーがプレミアムに対し限定的なコール・プションへ移ったという。彼らにコールを売ったオプション・ディーラーは、自身のポジションにヘッジを掛ける必要があり、つまり株式の場合は対象の株価が上昇するときに買い、下落局面で売ってきた。こうした動きは、株価の変動時は特に取引を膨らませ、それが9月3日の急落劇の一因を担ったというわけだ。

チャート:ナスダック、50日移動平均線まで下落。

出所:Stockcharts

テクノロジー関連株の急落にも関わらず、こうした要因を踏まえれば2000年のITバブル崩壊時とは様相が異なる。エバーコアISIによれば2001年当時、油価は2倍に急騰し、米連邦準備制度理事会(FRB)は迅速な利上げに踏み切り1.75ポイント引き上げ、結果的に金融市場から資金が流出し逆イールドカーブの状態となっていた。しかし現状、FRBはゼロ金利を再開させ、保有資産は50%近く膨らみ、油価は低位で推移している。

キャピタル・エコノミクスのジョナス・ゴルターマン氏も2000年と違うと指摘する一人で、大手テクノロジ―関連企業は十分利益を計上できる状態にあり、割高とはいえ危険水域にはないと分析する。その上で同氏は、調整が進んだとしても、経済回復が進むなかでテクノロジー株が他セクターより好業績を達成すると見込む。

ただし、米企業関係者が現金化を待つことはないだろう。英フィナンシャル・タイムズ紙によれば、米国企業の取締役は米株高を受けて8月に自社株を68億ドル相当売却し、その規模は2015年11月以来の高水準だった。株式を売却するときの理由は数あれど、上昇を見込んで売る者はいない。


9月と言えば、前回指摘させて頂いたように年間で最も弱いリターンの月であり、しかも今年は米大統領選を控えるため、不確実性を前に利益確定の動きが出ても仕方ありません。問題はいつまで米株の調整が続くか。明るい材料があるとすれば、9月4日にJPモルガン・チェースなど金融株は0.8%高で引け、資本財や素材などもそれぞれ上昇して取引を終えていました。つまり出遅れ組が買われ、逆にテクノロジー株が1.3%安、割高感が強まっていた一般消費財が1.4%安と弱かったというわけです。

コロナ禍以前から、GAFA+Mの存在感の高まれば高まるほど、米株相場が引きずられると指摘していましたが、ここにきてようやくローテーションの動きが強まり、結果的に米株安になった可能性を示します。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2020年9月6日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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