元総務官僚の告白:政治主導と官僚の人事

2020年09月13日 06:01

元総務官僚の平嶋さんが、ふるさと納税について菅さんに直言したことで左遷されたという記事が話題になっています。

写真AC:編集部

菅氏と闘った元官僚の激白「抵抗したら干される恐怖」(朝日新聞デジタル)

平嶋さんとは、所属省庁も違うし、年齢も僕より大分上の方で面識もありませんが、僕でも知っているくらい有名な官僚ですし、自治税務局長をやられていたくらいだから、おそらく総務官僚のエースだったのでしょう。

僕には報道以上の情報がないので、平嶋さんの人事と菅さんの関係は分かりませんが、この手の話が昨今の霞が関で珍しくないのは事実です。

僕の知る限りでは、官僚の人事に政治家が強く影響を与えて、異例の左遷が起こるようになったのは、民主党政権になった頃からです。

なので、菅さんがとか、安倍政権がとか、そういう問題ではないと思っています。

誰が総理になろうと、どの党が政権をとろうと、大きな組織を動かすために、人事を掌握するということは起こると思いますし、それは一つの政権運営の手段なんだろうと思います。

僕の立場は、意思決定権者がよい政策判断をするためには、多様な意見をよく聞いて真摯に受け止めて結論を出した方がよい政策が作れるということです。

政治家だろうと、官僚だろうと、政策の影響すべてを見通せる人なんていません。だからこそ、信念やファクトに基づく社会課題の解決策を実現していくに当たって、官僚も謙虚に色んな立場の人の意見を聞くべきですし、政治家も意見の違う部下や野党の主張なども含めて、色々な意見を受け止めて少し立ち止まってよく考え、議論をしていくプロセスがとても大切なのです。

写真AC:編集部

政治家が進めようとしている政策について、官僚が課題を感じているのであれば率直に進言できる環境の方がよいと思います。部下が言いにくいことを言いやすい環境を作る上司の方がよいということです。

一方で、部下である官僚は、上司である政治家と議論した結果最終的に政治家が結論を出したのなら従うべきだと思います。

結論たる政策の是非を判断するのは国民であり、その責任を取るのは選挙の洗礼を受ける政治家にしかできないからです。

僕が、平嶋さんの告白について思うことは、ことの真相は情報がないので分かりませんが、少なくとも平嶋さんは「政策についての見解をちゃんと聞いてもらえなかった。議論をしてもらえなかった。」「直言したことで不当に左遷された」と思っているのだろうということです。

官僚の意見とは別の決定を政治家がすることなど、山のようにありますが、わざわざ告白をするのはまれです。

少なくとも、そういう告白みたいなことが起こらない程度には、上司部下の関係でも納得できる議論があればよいなあと思います。

政治家と官僚が戦ってどっちが勝ったからよいというものではありません。

異論を言う部下に丁寧に耳を傾ける政治家は与党にも野党にもいます。

異例の左遷や昇進など、強い人事権を行使する政治家も与党にも野党にもいます。

権力を持つ人には、最終的には強い信念で決断して、ものごとを進めていくとしても、決断の過程では謙虚に異論に耳を傾ける姿勢が望ましいと思いますし、人事には説明責任を持たせるような仕組みも必要かもしれません。

官僚の幹部を見ていても、昔に比べてかなりサラリーマン化していて、正しいことは何かを考えるよりも、どうしたらうまくことが運べるかと、偉い人の顔色をうかがうタイプばかりになったと感じます。

そういう幹部の官僚を見ていて、仕事の意義に疑問を感じたり、仕事の手触り感を失う若手もかなり増えたように思います。

皆さんは、どうお考えでしょうか。


編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2020年9月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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千正 康裕
株式会社千正組代表取締役、元厚生労働省

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