大坂なおみ選手あっぱれ:人種差別反対の意識が精神力を支えた?!

2020年09月14日 06:00

大坂なおみ選手が2回目のUSオープンを制した。試合ごとに、差別的な形で命を奪われた黒人の名前を黒色のマスクの真ん中に示し、人種差別反対の意思表示を行った上での勝利は素晴らしい。

優勝インタビューで笑顔の大坂選手(大会公式YouTubeより編集部)

表彰式後のインタビューで、アナウンサーから「7試合で、7枚のマスクに、7名の名前を示したのは、どのような気持ちか?」との問いに、「あなたはそれをどのように受け止めたのか?みんながそれを見て考えてくれることが大切だ」と切り返した。一部の人が考えても差別問題は解決されない。みんなが考えてこそ、解決される問題なのだ。

世の中には建前と本音がある。「自由と平等」の国であるはずの米国では、不平等が普通に存在している。黒人差別はもちろんのこと、アジア人差別も日常的にある。以前にも触れたことがあるが、日本からシカゴの私の研究室に来た医師の子供がシカゴのダウンタウンの小学校で差別を受けた。英語を話すことができないアジア人の子供たちに対して、教師が「後向きに座れ」と命じたのだ。

民主党が圧倒的に強い、黒人がたくさん住んでいる、4-5年前のシカゴで起こったことだ。同じ教室の白人の子供が教室で起こったことを親に話して、その親が学校に通報して、この教師は追放されたそうだ。子供を教育する立場の教師でさえ、こんな差別主義者がいるのだ。

残念ながら、日本にも理不尽な差別がある。最近ではコロナ差別だ。コロナ感染患者を受け入れている医療機関で勤務している方々の家族に対しての差別など、論外だ。検査を受けたということだけで差別を受けた人もいたという。

コロナ感染対策、経済対策などが議論されているが、この差別問題に対して、国のトップたちが積極的に発言して、それをメディアが取り上げてほしいものだ。しかし、機内でマスクを着けることを拒否したトラブルも報告されている。電車でもマスクを着用していない人が増えてきた。経済を動かすためには、一人一人の努力が大切だ。自分が感染している可能性を考慮した行動が必要だ。

テニスの話に戻るが、政治的な発言をするのが難しい国際大会で、自分の信念に基づき、7枚のマスクを着け、人種差別反対を訴えて、7試合勝ち続けた大坂選手にあっぱれを送りたい。信念があるといっても、このような大きな大会でテニス以外のことを考えるのは精神的に負担ではなかったのかと思うが、逆に、差別された人達への想いが大坂選手を支えたような気がする。

研究者の世界でも、信念を持って研究に取り組んでいる人がどれだけいるのか疑問だ。医学研究者が、単なるサラリーマンであってはならないと思う。誰のために、何のために研究するのか、それが大切だ。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年9月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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中村 祐輔
医学者、内閣府SIPディレクター

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