総裁選のつぎ

総裁選で菅義偉氏が予想通り総裁に選出され、16日には正式に首相として選任されます。専門家が様々な分析を行っているので私はそこには触れませんが、一言でいうなら消去法的選出だったと思います。

自民党総裁選特設サイトより

申し訳ないですが、石破さんは首相としての才覚を見いだせませんでした。あの独特のしゃべり方は野球でいうなら他の人が140キロ、150キロの直球を投げるところを100キロに満たないスローボールで「ほら、これでも空振りは取れるでしょ」と言っているようなものです。それは正攻法ではないと思うのです。

岸田さんはオーラがないのです。政治家として不幸な運命だった谷垣さんと重なるところがあります。ある意味、普通の人なんです。発想も行動も庶民目線である点において安倍さんの後は重任すぎました。今回は派閥などからの後押しもあり、3人の中で2番になりましたが、真の実力票数ではないことは重く受け止めるべきでしょう。

では菅さんなら大丈夫か、というと未知数なところがあるのです。以前申し上げたように彼にはピンポイントで攻め落とす力を持っています。時としてそれをこだわりすぎるときがあります。ここにきて携帯電話会社間の競争を促すために電波利用料引き上げをつぶやき始めました。個人的にはそれは二の次でよい話だと思います。国民が本気で携帯電話料金が高いと思えば格安携帯の契約がもっと伸びるはずですがそうなっていないのです。好き好んでブランド名のある高い携帯会社と契約しているのですから首相になってそれをいつまでも引っ張るのはどうかと思います。

自民党広報ツイッターより:編集部

私が菅さんに期待するのはコロナ禍における「閉塞感の打破」だろうと思います。コロナについては確かに厳しい判断を求められますが、個人的には海外とのアクセスを世界でも一番先に制限付きながらも開放し、ウィズコロナでも乗り越える前向きさを見せてほしいのです。とにかく、菅さんの名前は世界の主要政治家が誰も知らない中でその手腕を見せるにはまずは「世界初」を打ち出すことだと思います。オリンピックの時の宰相になることを考えれば今から緻密なプランを練るべきかと思います。そのための外とのアクセスを少しずつ開放してくことは必須であり、避けて通れません。

さて、そんな中、麻生氏、河野氏が総選挙の可能性についてつぶやいています。本当にあるのかもしれません。麻生さんは国民の信任という言葉を使っています。確かに野党はそのようなことをいつも吠えているので信任を問う総選挙は与党にとっては非常に都合がよいし、野党からすれば菅さんの手腕が見えないので与党批判のネタもありません。国民目線で見れば菅さんは平民からコツコツと積み上げてきた苦労人ですので今のところ否定される理由もありません。総選挙をやればむしろ、立憲民主党の信任を問う選挙になるのかもしれません。

仮にすぐ総選挙となれば10月はそれでつぶれてしまいます。それは戦略的には正しいはずです。理由はそうなれば菅さんが本格デビューするのが11月でアメリカ大統領選挙が終わった頃と重なるわけです。できれば菅さんはアメリカ大統領選に先駆けて日本のトーンを世界に発信しながらそのポジションを明白する戦略を狙いたいところです。

一方、10中8,9、海外メディアは「菅新首相は安倍路線の継承」と解説されるはずです。海外は初めの第一歩に注目します。その具体的評価は外交政策と外交デビューが何処なのか、であります。私は多分、ワシントンに行くのではないかと思います。(ほかに行けるところがないでしょう。)

来年秋までの一時つなぎになるのか、その間に圧倒的政治的手腕を見せつけ、第二次菅政権ができるのかはこれから1年間が勝負どころ。私は組閣人事も注目だと思っています。派閥に所属しない菅さんが個人能力と派閥の綱引きを考えながらどういう人選をするのか、安倍さんの処遇をどうするのか、麻生さんに財務大臣留任を依頼したようですが、副総理も継続してもらうのでしょうか?私は1年の短距離走ですので比較的スライド人事が増えるような気も致します。

菅さんで案外困るのは野党かもしれません。野党はヤジることでナンボの世界と考えれば割と国民目線の菅さんに正面切って「反対!」の声は出しにくいかもしれません。菅さんは調整型の方ですが、いざ首相になればまさか本人が直接調整もできないことも増えるわけで菅さんの影武者を誰にするか、この辺りも見どころかもしれません。

まずは期待してみましょう、久々の新首相にエールです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年9月15日の記事より転載させていただきました。