GoTo医療機関キャンペーンはどうか?

2020年09月21日 06:00

医療機関の経営環境が厳しくなっている。腫瘍外科の医師は、手術が減り、進行がん症例の割合が増えてきていると言う。循環器の医師は、循環器疾患が悪化している人が多いと言う。小児科の医師は、受診者が減り、大変だと言う。マスク、手洗いなどによって、手足口病などの感染症患者が激減しているそうだ。

健康診断やがん検診を受ける人たちが減っていることは、必然的に病気が進行してから見つかる人が多くなる。自覚症状が出現するまで放置していれば、がんは進行してしまい、糖尿病などは悪化し、合併症リスクが高くなる。自粛で家に引きこもっていると、認知機能が落ち、運動機能も低下する。

オンライン診療を進めれば問題が解決すると言う人が多いが、やはり、医療で最も必要なことは患者と医師の信頼関係だ。私が昭和20年代生まれで、アナログの世界で生きてきたためか、Web会議では、場の雰囲気がわからなくて戸惑うことが多い。生で顔が見えると、その場の空気が読めるのだが(読めても爆弾発言することが多いが)、Web会議だとそれがわからない。診察室で目を見ること自体が少なくなってきているが、パソコンのスクリーンに映し出された顔を見るだけの情報で十分とは思えない。

そもそも画面は平面(2次元)の世界であり、診察室では立体(3次元)の世界という違いがある。また、表情以外の体の動きも患者さん情報として重要だ。定期的な検査は病院・医院に出向かなければできないことも多く、がん検診やがん患者さんの定期的な検査は絶対的に必要である。

そこで、コラムのタイトルに戻るが、観光地や飲食業の「GoTo…..」として税金を投入するなら、国民の健康維持、医療の提供の観点から、「GoTo医療機関」も始めればいいと思う。医療機関を受診しない最大の理由は、コロナの感染を恐れているからだ。外に出ること、公共機関を利用することを恐れるが故の受診控えだ。

医療機関を受診する際の交通費は医療費の控除に含まれる。それならば、医療機関へ向かう際のタクシー代をGoTo医療機関として税金で負担してはどうなのか?たとえ、近距離でも受診を促す効果があるかもしれない。

病気の人と病気でない人で不公平になるが、東京に住んでいるという理由だけで、他府県よりも2か月以上もGoToトラベルの恩恵に与れなかった東京都民としては、この程度のことはあってもいいのではと思う。フレイル状態が悪化すると大きな医療福祉問題につながるので、しばらくクリニックや病院の顔を出していない方の健康状態チェックが必要である。

病気のモニタリングがしっかりとできれば、病気の悪化を防ぐことができる。病気が重症化すれば、医療費が膨らむので、国の医療福祉費を考慮すれば合理的な発想だと思うし、タクシー業界の支援にもつながる。そして、医療機関の経営環境の改善に少しは寄与するだろう。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年9月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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中村 祐輔
医学者、内閣府SIPディレクター

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