新しいビジネスの枠組み

2020年09月21日 14:00

我々は会社が当たり前に存在すると思っています。雇う側は良い人材を確保し、会社が目指す事業を推進、拡大し、最大限の利益を得、できれば従業員や株主にもその配分をしたいと思っています。そのためには組織を強化し、連携し、最強集団を作ることを良しとしました。この考え方に誰も疑問の余地を挟まないでしょう。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

私は会社という組織がなくなってもよいと思っています。いや、無くなるかもしれないと思っています。それは会社という枠組みで才能を引き出せなくなっている社員が多く存在することを現代社会においてほぼ誰も気が付いていないからです。

私が20年間に及ぶゼネコン勤務をしていた際、国内の建設現場では日常的にジョイントベンチャー(JV)という企業体が組成されていました。そもそもは地方自治体が発注する公共工事において全国区のゼネコンと地場の建設会社の間で技術力の格差があることからそれを埋め、啓蒙を進めるためというお題目がありました。が、実態はそうではなく、全国区のゼネコンがおいしいところを吸い上げるばかりではなく、地元にも利益を還元させるために名もない小さな地場の建設会社と誰でも知っている大手ゼネコンがJVを組んでいたわけです。(昔のODAのタイドローンもそんなものでしょう。)

その後、この発想は民間にも取り込まれます。横浜のランドマークタワーの建築は私の記憶する限り、十数社ぐらいのJVだったと思います。私が勤務したゼネコンもその一社に入りました。ただ、おかしなことに営業本部が受注するまでそれを想定していないという珍事が起きたのです。秘書だった私は社長から「おい、これどうなっているんだ。誰が営業したか探してくれ」と言われ「もしや?」と思ったらいつも一匹狼で仕事をする営業の顧問氏の一人舞台でありました。

民間企業が多数の企業をJVにする理由は当時は営業上、特定会社だけではなく、あちらこちらに「餅巻き」をするという発想でした。そういう意味では昔のJVは表向きの理念と違い、もっとマネーというニンジンをぶら下がっていたものだったと思います。

1990年代に入り、世界ではPPP(ないし3P=パブリックープライベート-パートナーシップ)が注目され始めました。ただ、個人的には公共事業の効率化推進するために民間の発想を取り入れる、あるいは民間の資金を入れやすくするといったどちらかと言えば官が主体の事業に民が乗っかるという感じであります。現在も件数は増えていますが、正直、欧米では不正など様々な問題も提起され、発展的に増えているという感じはしません。

そんな中で私が会社とは何か、と考え始めたのは才能ある社員、有能な社員が会社という枠組みに縛られるのはこれだけIT化が進んだ社会において無意味ではないかという気がしてきたのです。

会社経営に於いて新たな事業を立ち上げる時、才能と情熱を注入できる人材が主導し事業形をつくります。いったん立ち上がるとそれを安定成長させるための異なる能力が必要になります。飛行機でいうTake-off(離陸)はパイロットに頼るところが大きいですが、安定飛行になると自動操縦になるのと同じです。そして安定飛行はITやAIが作り出す技術でより着実で安定的に運営する手段が構築されつつあります。

ならば様々な人が持つ才能と才能を掛け合わせることでもっと壮大なものが生み出せる組み合わせが可能ではないか、そしてその環境が整ってきたと思うのです。

私は長年経営者として自分の会社に取り込む=買収するという形態により自分の事業範囲をより大きくすることが王道だと思っていました。今、これは大きく変わるかもしれないと思い始めています。つまりパートナーシップ(PS)という形態こそ、これからビジネスを推進するポピュラーな手段ではないかと思い始めたのです。

私はカナダの事業ではPS形態で長くやってきたこともあり、その実務やコンセプトはそれなりに理解しているので今度手掛ける新規事業はPS形態にしました。これにより自分が持つ能力x相手が持つ能力で足し算ではなく掛け算ができると考えています。

ホンダとGMの提携がより深化しそうですが、それは双方が持っている能力を掛け合わせることで今までできなかったポイントに行く、つまりブレイクスルーを達成することができるとも言えます。日本型経営はブラックボックス型なので外との交流がとても下手であります。

一方、日本のハイテク企業もシリコンバレーあたりに事務所や研究施設を設けているところが増えているのはそこに知能や最先端を行く人たちの情報や考え方が集まっているからでコラボをすることで思わぬ事業展開に発展することを探るためなのです。

新しいビジネスの枠組みとは「取り込む」から自分の手持ちカードを切り、「同じテーブルに乗る」になってきているように感じます。例えば私は将来、AI技術をどうにか活用したいと思っています。それは過去の情報分析というAIではなく、考えるAIで必ずしも大企業だけではなく、極小企業でも展開できるようにならないかと考えています。AIの専門家は自分たちの技術をどういうシーンで活用できるか、そこが分からず、もがいていることはほとんど知られていない事実なのです。

こうやって切り口を変えていくところにビジネスの面白み、醍醐味を感じるのです。あぁ、経営者をやっていてよかったと思う瞬間です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年9月21日の記事より転載させていただきました。

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