バロンズ:信用の収縮、米経済回復の足かせに

2020年09月29日 11:30

バロンズ誌、今週のカバーはコロナ禍で開催されたヘルスケア関連銘柄ラウンドテーブルを取り上げる。参加者はキャスディン・キャピタルの創業者で最高投資責任者(CIO)のイーライ・キャシディン氏、サードロック・ベンチャーズのパートナーであるアビー・セルナイカー氏、SVBリーリンクのシニア・バイオファーマ・アナリストのジェフリー・ポージ氏、フィデリティ・インベストメントのヘルスケア・セクターのリーダーでヘルスケア関連投資信託のマネージャーを務めるエドワード・ヨン氏など。彼らの間では、新型コロナウイルス向けのワクチン開発競争をめぐり、概してノババックス、次いでサノフィとグラクソスミスクラインがリードしているとの見解で一致をみせた。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は信用市場に焦点を当てる。抄訳は、以下の通り。

カバー写真:GotCredit/Flickr

信用は収縮中、なぜ経済回復に問題なのか―Credit Is Tightening. Why That Matters for the Economic Recovery.

政治は、信用で成り立つ現実のビジネスや経済にとってスライドショーのようなものだろう。住宅市場は活況に沸き、販売向け在庫が縮小しているにも関わらず、米8月中古住宅販売件数は年率600万件、米8月新築住宅販売件数は101.1万件と、それぞれ2006年以来の高水準だった。単に都市部から郊外への引っ越しが進んでいるだけでなく、米住宅金利が歴史的に低いレベルにあるためで米連邦住宅金融抵当金庫のフレディマックによれば米30年物固定住宅ローン金利は2.86%と過去最低を更新した。

投機的格級の企業も恩恵を受け、ブルームバーグによれば、9月第4週時点で既に7~9月時点で投機的格級の社債発行高は2012年の3,296億ドルを超えている

その裏側で、社債市場の活況が終焉を迎えつつあるサインが現れている。高利回り債の投資信託からの資金流出額は9月24日までの週で50億ドルと、コロナ禍の直撃を受けた3月以来の規模を記録した。さらに、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによれば。ハイイールド債と投資適格級の利回り格差は40bp拡大し5.47bp(1bp=0.01%)へ拡大した。

スプレッド拡大中に、社債を発行した会社こそ中古車販売ネット大手のカルバナだ。同社はQ3の利払い前・税引き前・償却前利益(EBITDA)がブレークイーブンになると予想以上の見通しを示し株価が急騰した翌日に11憶ドルの社債を発行、同社は5年物社債に5.625%、8年物社債に5.875%の金利を支払う必要が生じている。

同時に、カルバナは自動販売機で中古車をミレニアル世代に販売しつつ、信用市場の勝ち組に乗った企業でもある。格付け会社クロール・ボンド・レーティング・エージェンシーによれば、自動車ローン4.95億ドルのうち4.8億ドルを担保に資産担保証券(ABS)を組成、このうち平均信用スコアは554点とサブプライム層でも下位にわたり、彼らの平均金利は19.2%、平均期間は71ヵ月(5年11カ月)である。なお、カルバナの最高経営責任者のアーネスト・ガルシア3世とその父2世は同社の最大株主で、株価が急伸した日の資産は214億ドルに及んだ。

資本市場以外でも、信用が収縮している様子が見て取れる。マルコ・インテリジェンスM・2・パートナーズ(MI2)が米連邦準備制度理事会(FRB)のシニア融資担当者調査を元に伝えたところ、銀行は貸出を厳格化しているという。

チャート:シニア融資担当者調査、クレジットカードと自動車ローンが急速に厳格化

作成:My Big Apple NY

MI2に言わせれば、Fedのゼロ金利政策再開により銀行の純金利マージンが低下する状況で信用市場が収縮すれば、貸出基準はITバブル崩壊や金融危機当時より厳格化する銀行が増えて当然だ。銀行の一部では信用限度額も引き下げ始め、例えばクレジットカード発行3位のキャピタル・ワンでは失業保険の上乗せ分600ドルが失効してから、信用限度額を3分の2引き下げた

サブプライム層の自動車ローンは特に問題で、4~6月に60日以上の延滞率は貸出残高全体の7.25%と前期の4.4%から急伸し金融危機の水準に近づきつつある。消費者信頼感指数でも、自動車の購入意欲は低下してきた。MI2は政府が機能不全のなか、米大統領選の決着がつくまで信用市場のバッドニュースは続くと見込む。


新車販売動向をめぐっては、J.D.パワー・アソシエイツが8月30日週分までリリースしていた週次動向をみると、改善が足踏み状態にあったことが分かります。

チャート:週次の新車販売台数、コロナ禍以前の予測値に戻せそうで戻せない状況続く

作成:My Big Apple NY

8月の新車販売台数はワーズオートによれば年率1,520万台と3月以来の水準を回復したとはいえ、ここからすぐにコロナ禍以前の1,700万台へ戻せるかというと、やはり時間が掛かりそう。その半面、米8月消費者物価指数では新車の在庫不足を背景に中古車人気が高まり前月比で上振れしていました。

新車販売台数の回復が遅々としたペースであるのは、需要サイドだけでなく供給側の問題があることが分かります。いずれにしても9月から10月は2012年のサンディーのようにハリケーンの影響も及ぶだけに、株価同様、新車販売動向のボラティリティが高まってもおかしくありません。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2020年9月29日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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