コロナとメンタルコントロール

2020年09月29日 14:00

私はコロナがもたらした影響は直接的な病気と同等に人々や社会に与えたそれ以外の影響が大きいとみています。そして人類の歴史の中でもあまり経験がなかったような全世界レベルでドアが一斉に閉まり、今までの流れがほとんどストップしたことは日本のみならず、世界の多くの人々に様々なチャレンジを強いたと考えています。

日本の自殺者数は直近では2003年の34427人をピークに減少傾向が続き、直近10年は連続減で昨年は20169人まで減少しています。グラフで見ると1998年に前年比34%増の32863人と突然、自殺者がふえ、その後、2010年ぐらいまで高原状態だったのですが、それから着実に下がってきています。

理由の一つには自殺原因で健康問題に次いで2番目に大きい経済問題について安倍政権時代にそれなりに経済が良化し、失業率が下がり、賃金上昇への圧力、更に雇用環境の改善問題に焦点が当たったことは大きかったと思います。その結果、経済問題を苦にした自殺はこの10年で半減しています。

では今年の自殺の傾向を見るとどうなるか、ですが、1-6月は比較的落ち着いた推移で展開していました。ところが7月、8月と明らかな増加傾向が見て取れます。もう少し子細に見ると概ね今年のボトムだった4月に比べ男性は8月は14%増なのですが、女性は実に48%も増えているのです。自殺男女比はこの20年ぐらいはあらかた男性が2.4倍程度多いのですが、8月に限ってみれば1.8倍までその比率は縮小しています。

切実な理由が背景にあるのだろうと思います。社会事件を見ても金にまつわる強盗、詐欺、殺人が日々、メディアに載らない日はありません。こんなことを書くと昭和の一時期はもっとひどかったというご指摘を受けるのですが、そもそもあの頃と時代背景が全く違うので比較する意味がありません。統計というのは基本前提が同様ではないとApple to Apple にならないわけでその点からすればこの手の比較はバブルが終わった1990年頃からの数字との比較が有益であると考えています。

かつて練炭自殺が流行ったことがあります。今考えれば本当に流行でした。飛び込みは迷惑がかかる、残された遺族に賠償請求が来る、自分の死に姿が醜くなるといった点から練炭自殺が着目されたのでしょう。楽に死ねるかどうか、私は試したことがないのでわかりませんが、自殺の方法を考える余裕があるなら死ななきゃいいのにといつも思います。

自殺が連鎖しやすくなるのはある程度研究されていると思います。事実、有名人の自殺報道の記事の下には必ず「悩み窓口相談室」の名前と電話番号が記載されています。今回、竹内結子さんが自殺しました。私は芸能界に全く疎いし、ここは私の推測なのでご批判もあると思いますが私の考えを述べます。内容にはご容赦を願います。

2015年の東京国際映画祭にて(Johnson/flickr)

彼女のケースはコロナとは直接的には関係ないとみています。多分、非常にストイックな性格だったのではないかと感じています。実は三浦春馬さんとそこに共通点があるように感じるのです。彼女は私生活でも非常に厳しいポリシーを貫いたあまり一度目の離婚がありました。「梨園の妻」を広義の意味でとればその生きざまは竹内さんのそれとは真逆だったはずです。

では彼女に仕事のプロフェッショナリズムや哲学について一定の影響を与えたのが仮に三浦さんだったとすればどうでしょうか?なくはないでしょう。そしてそれを突き詰めすぎて俳優業としての試練とその切磋琢磨という点でナローマインドになった、そんな気がするのです。

では、なぜ、そこまで自分を責めることになったか言えばコロナで世の中に非常に暗い空気が蔓延しており、気分が鬱になりやすく、マインドコントロールを失ったのではないかと察します。普通、幼い子を残して母は死にません。彼女のメンタルは三島由紀夫の小説に出てくるような美学を自らが作り上げたような気がします。

最近、女性の社会進出が進んできています。すでに成熟化しつつある欧米と日本のそれを比べると女性にはやや肩に力が入りすぎているように見えるのです。明白なプランと目標を達成するために必死になるのはいいのですが、オプション2がないんです。つまり、そのプランがダメな場合どうするのか、というフレキシビリティがなく、とにかく驀進型のケースが見えるのです。

それはもしかしたら男性社会への競争心かもしれないし、自分が生きるために身につけなくてはいけないプロしてのノウハウや技術取得への焦りなのかもしれません。しかし、コロナのように誰も予期しないことが起きた場合、それこそ、退避場所も出口もない首都高を走り続けるような状態になっていないかと思うのです。

もちろん、男性にもコロナの影響がもろに出ているケースは数多く見受けられます。明らかに性格や行動規範が変わった人もいます。人生の岐路に立たされている人もいます。ふさぎ込んでしまい、様子が見えなくなっている人もたくさんいます。はしごを外されるような思いをされているのでしょう。バブル崩壊のころ、そんな試練を乗り越えてきた人がたくさんいますが、今回も先が見通せないところに同様の厳しさを見て取っています。

メンタルコントロールとは自分をあまり攻めないことだと思います。自分だけを孤高の人にする必要はなく、自分と同じような境遇の人はいくらでもいると考え、急いでそこから脱却を考えるよりもまずは心を落ち着かせることが重要かと思います。そんな時は同業や友人より普段付き合いのない人からの影響は案外あるものです。自分から一歩外に出てみて、今まで違う人と話をしてみるのは思った以上に刺激があると思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年9月29日の記事より転載させていただきました。

なお、著名人の自殺に関する報道は社会的影響力が大きいことに鑑み、厚生労働省では悩みを抱えている方に次の相談窓口を案内しています。

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