ファンドが変える経営と透明性

よく称される「ファンド」という言葉を十分に理解している方は案外少なかったりするのではないでしょうか?投資ファンドの略称でありますが、どうも嫌なイメージをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。銀行や証券会社から「『ぜひとも』と言われて買った投資信託は配当金は下がるし、基準価格も下がるし」と嘆いている方もいらっしゃるでしょう。今日はそんなファンドについて少し考えてみたいと思います。

(写真AC:編集部)

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街中のオフィスビルの所有者が個人や一般企業からファンドにどんどん変わってきています。理由は管理が難しくなったこと、継続的に投資をし続ける必要があること、不動産所有者にマーケティング能力やビル管理能力が十分備わっていないことが挙げられます。世の中の管理要求度が高くなればなるほどそこから振り落とされる人や会社は多いものです。

同様のことは賃貸住宅やビッグボックス(大規模商業施設)、ビジネスパークなどあらゆるところに波及しています。私は長いことアメリカの刑務所のファンドに投資をしています。犯罪はなくならない、刑務所は不足している、特殊な管理能力を求められるなどからその潜在的必要性は十分にあると思います。日経にはついに日本で病院にもファンドの手が伸びてきていると報じられています。

病院経営は白い巨塔やドクターXではありませんが、患者との日々の戦いとは別に理事長室や院長室を中心とした権力争いが展開されているイメージがあります。あのドラマほどではないにせよ、何らかの利権やお金や権力をめぐる争いはありそうです。そこにファンドがメスを入れるなら今後日本でファンドが牛耳る病院が雨後の筍のように増える可能性は大いにあるでしょう。

私の会社の元従業員は退職後バンクーバーでMBAを取得し、当地の病院経営の効率化の業務に携わっており、時々その話を聞かせてもらっています。大量の患者にどう対応するのか、スタッフの効率配置はどうすべきかなど医療が無料で全額、健康保険でカバーされるカナダでは切実な問題なのであります。このような経営にメスが入っていない分野は割と多い気がします。

例えば私は学校経営もファンドにゆだねる時が遅かれ早かれ来るとみています。学校経営とは何か、と考えると売名主体で運動部や特定分野が秀でている学校もありますが、本来は勉学の成果を問うところ。となれば例えば〇〇大学を出た学生は他大学とは違うといわせれば学校の価値は上がり、ファンドの価値も当然上がるので資金はどんどん集まると思うのです。

日本に私鉄の会社がなぜこんなに多いのか、考えたことがありますか?130社ぐらいあると理解しています。その多くは赤字です。効率的経営ができないことは否定できないでしょう。特に地方は切実です。今後、10年ぐらいのうちにEVの自動運転車が普及を始めるとすれば鉄道のあり方は大きく変わります。ならばもっと抜本的な対策と資金が必要だと思うのです。ファンドはこういう業種にも入り込める余地があると考えています。

ファンドと言えば村上ファンドや物言う株主といった形で「うるさ型」と思われてきました。しかし、それは門外不出のパンドラを開けさせ、ごく一部だけが独り占めしてきたものを投資家と従業員に再配分し、社会により貢献するというスタンスを持っています。

日本ではどうもファンド=マネーの匂い、というイメージが先行してしまっていますが、REITは9割以上を配当することで運営主体が法人税を逃れることができるなど、非常にうまくできている仕組みも存在します。また、特定のマネーではなく、様々な人のお金が入り込むことによる公共性も期待できるわけで私は企業の新規事業立ち上げがテイクオフの役割を果たすなら運営の安定飛行部分はファンドに任せるというやり方が増えるのではないかと思うところであります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年10月2日の記事より転載させていただきました。