情報アクセシビリティに依然対応しない東京都

2020年10月03日 06:00

studiographic/写真AC

情報が入手できないという理由で障害者等が新型感染症に感染しないように、公共機関が運営している特設サイトにはアクセシビリティが求められる。そこで僕らは、総務省と厚生労働省に対して、4月15日に「デジタルを活用した公と民のサービスにおけるアクセシビリティ向上について(緊急提言)」を提出した。

参照:新型コロナ情報のアクセシビリティ向上:総務省と厚労省に緊急提言 

提言を受けて両省は各府省と地方公共団体に対して、4月30日付で、アクセシビリティの向上を図るように依頼する文書を発出した。提言を受け止めた両省に改めて感謝する。

東京都も依頼文書を受け取ったはずだ。しかし例えば、8月18日に東京都が公表した「新型コロナウイルス感染症を乗り越えるためのロードマップ」のPDFは、Acrobat Readerでは「警告 空のページです」としか読み上げない。読み上げ機能に対してPDFからテキストが提供されないので、視覚障害者などに情報は伝わらない。

東京都は総務省と厚生労働省からの依頼を無視している。

どうして無視できるのだろう。それは、障害者差別解消法の規定に問題があるからだ。

同法には公共機関のアクセシビリティ対応を義務とする規定(第7条)があるが、罰則は設けられていない。民間事業者には努力義務を課している(第8条)だけだ。公共機関も民間事業者も「厚意で」アクセシビリティに対応すれば、それで十分なのだ。

これに対して、他国ではアクセシビリティに対応しない公共機関や民間事業者は訴訟の対象となる仕組みができている。たとえば、米国では、ウェブアクセシビリティについて連邦裁判所に訴訟が提起された件数が、2017年には814、18年には2258、19年には2256件にのぼったという。

この数値を掲載した「The State of Digital Accessibility 2020」というレポートには、60%の組織が訴訟リスクを回避するためにアクセシビリティ対応を急いでいるとの記述がある。

別の報道もある。VentureBeatというネットサイトは「ウェブサイトへのアクセスは依然として平等性に欠け、訴訟が増加している」という記事を9月26日付で掲載している。

アクセシビリティへの対応が不十分であれば訴訟を提起できる欧米がうらやましい。

東京都だって、訴訟リスクがあるとなれば、今のように役に立たないロードマップなど掲載しないはずだ。多様性(ダイバーシティ)を政治信条としているはずの小池百合子東京都知事はなぜ動かないのだろうか。

都知事Facebookより

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山田 肇
ICPF理事長、東洋大学名誉教授

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