ベーシックインカム導入でどんな日本になるのか想像してみた --- 井上 孝之

2020年10月05日 06:00

先日、「ベーシックインカムの導入について、誰も真剣に考えていない」と書いたところ、誰からも反論がなかったので、「本当に誰も真剣に考えていない」ということが確認できたわけですが、それでも、時々、ベーシックインカムが話題に上るのは、「ただでお金がもらえる社会というものが魅力的だから」だど思っています。

写真AC

そこで、ベーシックインカムが導入されると日本はどう変わるかを以下のように考えてみたわけですが、この原稿を書きながら思ったことは、ベーシックインカムで議論の中心となる「財源をどうするか」という問題は実は小さな問題で、国民のマインドが「安定重視」から「挑戦重視」に変わることの影響をどう評価するかが重要になるのではないかということでした。

国民は大きく3つに分かれる

ベーシックインカムが導入されると日本の国民は大きく3つに分かれると考えています。

①働かないでベーシックインカムの範囲で生活する
頑張らない代わりに多くも望まないという人はこの生活スタイルとなります。多分、一度この生活に慣れてしまうと少し働くことも苦痛になるので、この生活からは抜けられなくなると思われます。

②ベーシックインカムに加えて、そこそこ働くことでそこそこの生活をする
ベーシックインカムだけでは足りないので、少し働くことで足りない分を補填して、そこそこの暮らしをするというライフスタイルとなります。国民の大半がこのライフスタイルを選択することになると考えられます。

③高い目標を掲げ、リスクに挑戦する
ベーシックインカムによって、リスクに挑戦して失敗しても最低限の生活が保障されるので、起業や新規事業のようなリスクの高いことに挑戦する人が多く出てくると思われる。その結果、日本は新規ビジネス大国になるかもしれません。もしかしたら、ベーシックインカムの導入に必要なコストはこの人たちが生み出す富で賄うことができるかもしれないと考えています。

労働者にやさしい社会ができる

「生活が苦しいので、きつい仕事でも働かざるを得ない」という人がいなくなるので、労働者に配慮した業務でしか人を雇うことができなくなります。少しでもきつい仕事を割り振ると、「こんなにきつい仕事をやらされるぐらいなら、ベーシックインカムの範囲でつつましく生活します」と言って労働者は去っていくことなります。

(一部の)地方の再生

東京の都心に住んでも、地方の田舎に住んでも、もらえる額が同じであれば、物価と家賃が安い田舎の方がいいと考える人は出てくるはずです。地方都市もベーシックインカマー(造語!)を誘致するところも出てくることが予想されます。ただし、これで再生されるのは、物価が安くて、移住者の済むところがあって、ネットはつながりやすくて、気候はそこそこ穏やか、自然が豊かという条件を満たすところだけなので、再生される地域は限られそうです。ベーシックインカムができると「職場の近くに住む」必要がなくなるので、夏は北海道、冬は沖縄、春と秋は本州に住むというライフスタイルが出てくるかもしれません。

日本はエンタメ大国となる

「収入が不安定だから」という理由で敬遠されていたエンタメ系の仕事に挑戦する人が増え、日本からも世界的なアーティストが多数輩出されることが予想されます。世界のヒットチャートで日本人アーティストの曲が上位を占め、アメリカのアカデミー賞や世界の映画祭で日本の映画や関係者が賞を受賞することが当たり前となるかもしれません。

日本は科学&学術大国になる

「親の収入が少ないから大学に行けない」ということがなくなるので、科学に限らず優れた才能を持った人が大学に行って、その能力を磨くことができるようになります。特に科学の分野でも「生まれたときに才能を授かったかどうか」が大きいので、科学的な才能のある人がその才能を磨くことができるようになれば、多くの偉大な科学者を輩出できるようになるかもしれません。

大学卒プアが増加する

「親の収入が少ないから大学に行けない」ということがなくなるので、頭脳労働に適さない人も大学に行くようになることが予想されます。頭脳労働に向かない人が「大学卒」の資格を取っても、労働者としての価値が向上するわけではないので、社会に出るのが4年遅れたうえに高卒と同程度の収入に甘んじる人が多数輩出されるようになります。

少子化は解消されるが、幼児虐待やネグレクトも増える

「お金がないから結婚できない/子供を作れない」という人は減るうえ、明確に「子供を作ることのインセンティブ」ができるので、少子化は解消されるかもしれませんが、その一方で、「子供は国から金をもらうための道具」としか考えない親が様々な問題を起こすおそれがあります。

苛烈な競争社会がくる?

上記のライフスタイル③を選択した人に限定した話となりますが、ベーシックインカムは失業保険の代替でもあり、会社をクビになっても「食えない」ということもなくなるので、会社はクビを切りやすくなります。そもそも、「仕事」とは「仕事が好きな人」だけのものとなって、仕事をやる以上は「プロ」としての高いレベルの成果が求められるようになり、働く側も自分の能力を高く買ってくれる職場を渡り歩くことになることが予想されます。その結果、成果連動型の給与体系が一般化し、労働者は厳しい競争のなかで働くことになります。

健全な野党ができるようになる?

野党がお得意の「こんなに貧しくて困っている人がいるのに政府は何もやっていない」と主張して政権を批判することができなくなります。野党がそんな主張をしたら、「ベーシックインカムをもらっているだろ」と野次が飛ぶことになりますね。その結果、野党は政権よりもいい政策を提案することでしか存在をアピールすることができなくなるでしょう。

井上 孝之
ベーシックインカムができた後も現在の大企業の窓際というぬるま湯な職場が存在し続けるのかが気がかりな技術系サラリーマン

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