連載⑱ 新型コロナ第1種の寿命は1ヶ月?モンテカルロシミュレーションで検証

2020年10月06日 06:00

新型コロナ感染の世界の趨勢を、ベルギー、フランス、スペイン、ドイツ、日本、イスラエル、アメリカ、スウェーデン、オーストラリアの9カ国について、モンテカルロシミュレーションで比較した結果、9カ国の第1波ピークの半値幅(ピークのところから半分の高さの山の幅)がほぼ全ての国で同じであることが判明したので速報します。

図1は、9カ国の死亡者と「実効感染者」(後で説明します)の日毎変化を、第1波のピークの値を100人に規格化し、ピーク位置を50日目にシフトして重ねたグラフです。アメリカやスウェーデンのように多少広がっている国もありますが、それ以外は見事にピークの形、半値幅が一致しています。

これは、新型コロナのどのような特質から由来するものなのか興味の湧くところです。大発見なのか、当然のことなのか、どんどん解析してみます。

1.考察

今回比較した9カ国は、第1波のピークで、実効感染者数で最大84倍、死亡者で実に574倍の差がある国々です。それら9カ国で第1波のピークの半値幅が、実効感染者で25日、死亡者で36日、各国共通でした。絶対値は100倍以上の差がある国々ですが、全て第1波の半値幅は同じで、ほぼ1ヶ月で収束しているというのがデータから示された事実です。

これだけ共通する性質に少し驚愕しますが、新型コロナの初期感染拡大に対して重大なヒントがあるように思います。

この結果から想定される最初のことは、第1波に関して各国の対策や社会状況の違いは、その絶対値には表れていますが、形や幅には全く見えないということです。このことから、考えられるシナリオを、シミュレーションでこの状態を作り出す観点で書いてみます。

まず、1ヶ月というのは比較的短い幅です。連載④で示したように、実効再生産数Rを大きくするとピークの幅はどんどん広がります。従って、各国とも第1波では実効再生産数Rはほぼ同じではないか、ということが考えられます。

この点を考慮すると、強度で100倍以上違うが、半値幅が同じピークを各国ごとに作るのに最も簡単な方法は、半値幅の同じ小さな単位となるピークをまず作り、その単位ピークを強度に従って重ね合わせることです。

このシナリオの問題点は、単位ピークを重ねるときに、時間のシフトを許さないことです。生成される単位ピークに時間のずれがあると最終的なピークの半値幅が広がってしまいます。もうひとつの問題は、単位ピークはなぜこの半値幅でピークアウトするかです。

ひとつの解答は、各国とも短い時間に多数の感染者が入国し、それぞれの感染者を核に単位クラスターを生成し感染が拡大した。そして新型コロナの第1種の寿命が1ヶ月なので、それぞれのクラスターは自然にピークアウトし消滅して、感染は第2種、第3種の種によるものに移行した、というものです。

「新型コロナの第1種の寿命が1ヶ月」という唐突な仮定を持ち出しましたが、各国の対策や、社会状況の違いの中で、結果として第1波のピークの半値幅だけが、今回示されたように全て一致するという偶然性に比べれば、あり得ない仮定ではありません。

以下に、解析の詳細を説明します。

2.死亡者と実効感染者

シミュレーションでは、新規陽性者と死亡者の日毎変化のデータを再現するように計算モデルのパラメータを決めています。第2波のように時間とともに感染者数と死亡者の関連(死亡率)が初期値からずれる場合は、死亡率の異なる「種」を新しい感染源として設定します。前回の連載⑰の解析では、「第3種」までの「種」を導入してデータ全体をフィットしました。

ここで示したのは、実際の死亡者のデータではなく、シミュレーションでフィットした死亡者数の計算結果です。実際の死亡者数は統計的変動によるばらつきが大きいので、データを良くトレースしたスムースな計算結果を用いています。

もうひとつの「実効感染者」は連載⑭から導入したもので、第1波を形作る「第1種」の死亡率を固定して、全期間の死亡者をシミュレーションで再現するとき、そのもとになる感染者数という定義です。死亡者数からシミュレーションで逆算した「実効感染者」数になります。

3.規格化した死亡者数と実効感染者数

第1波の半値幅を比較するため、計算で得られた死亡者数と実効感染者数をピーク点で100人に規格化し、ピーク位置を図の50日目にシフトします。各国ごとの第1波の死亡率、死亡者と実効感染者の規格化定数を表1に示します。

ヨーロッパ4カ国、ベルギー、フランス、スペイン、ドイツの死亡者、実効感染者の規格化したものを図2に示します。ほぼ完全に重なります。これら4カ国は、実効感染者で見るとほぼ第1波のみで、その後陽性者は増大していますが、死者が増えていないことが共通しています。

次に、図3で日本とイスラエルを加えます。日本は第2波が第1波ほどではありませんが死者及び実効感染者に現れています。イスラエルは、ロックダウン解除後上昇し、再びロックダウン、その後も迷走し、第2波は第1波を上回っています。しかし、両国とも第1波のピークはほぼ完全に図2のヨーロッパ4国に重なっています。

この図にはピーク位置の縦線、ピーク高100人、その半分の50人に横線、それと半値幅の位置に縦線を入れています。この図より半値幅は、死亡者で36日、実効感染者で25日です。

図3にアメリカ、スウェーデン、オーストラリアを加え9カ国の比較をしたものが、最初に示した図1です。アメリカはニューヨークのように第1波のピークが大きい所と、カルフォルニアのように第1波より第2波の方が大きい州が混在しています。全体として第2波との分離がはっきりしないため、第1波のテールが広がっています。

スウェーデンも細かい第1波、第2波、第3波が混在しているので同様にテールが広がっています。逆にオーストラリアは、厳しいロックダウンのために、第1波のピークが唯一他国よりも細くなっています。実効感染者の分布に比べて死亡者の分布は、ポアソン分布で言うと母数λがひとつ多い事象なので、裾が広がりますが、アメリカもスウェーデンも実効感染者の分布で見る限り、まだ十分に半値幅は他国と同じと言えます。

連載⑯で述べたように、ブラジルは第1波のないアメリカに似ています。インドもそうですが、これらの国は、第1波がなく第2波から始まっているように見えます。

4.新型コロナの短期予報

前回示した9月30日の予測と厚労省のデータを表2に示します。この予測は9月2日の厚労省のデータで調整したパラメータを使ったシミュレーションの結果です。9月30日までは非常によくデータを予測していましたが、10月に入り予測にない陽性者の上昇傾向が見られますので、次回はパラメータの再調整が必要かもしれません。

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仁井田 浩二
一般財団高度情報科学技術研究機構 理学博士

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