【続報】富山知事選「準備疑惑」首謀者は誰なのか?

2020年10月07日 06:01

富山県知事選(8日告示、25日投開票)に立候補を予定している現職の石井隆一氏の選挙用の資料づくりに、県の職員が関与していた疑惑は6日、本サイト既報どおり当事者の県幹部が文書の存在と作成を認めた。

地元放送局は夕方のニュースで追いかけ、北日本放送(日本テレビ系)はアゴラの記事を紹介する形で「討論会用資料準備に県職員関与」と報道。そして渦中の石井知事は同日夜、支援者との集会の後に地元メディアの取材に応じ、富山テレビ放送(フジテレビ系)はネット速報でその様子を伝えた

6日夜、集会で演説する石井知事(ツイッターより)

これによると、石井知事は、問題の2つの文書のうち、立候補予定者討論会の想定問答に含まれていた「当日の留意事項」について言及。この文書は総務省から県に出向中の経営管理部長が作成し、発言中の視線や言葉遣いに対して助言する内容だが、石井氏は記者会見で、アドバイスについて感謝の意を示した上で、「公用のパソコンを使わなければ問題はなかった」との見解を示したという。

そして、もう1つの文書である「政策集」の作成案について、報道陣から知事が職員に指示をしたのかと尋ねられたのに対し、石井氏は「指示したことは全くない」と否定した。

石井知事の発言に妥当性は?

これらの石井氏の発言は妥当性があるのか。

まず1つ目。討論会での振る舞いについて助言した「当日の留意事項」については、石井氏が釈明するように公用のパソコンを使わなければ問題はなかった。経営管理部長はアゴラの取材に対し、作成は職務時間外だったとしているが、それが事実通りであることを前提とすると、個人の有権者として石井氏を支持し、私用のパソコンを使うべきだった。

だが結果として、公用パソコンを使ったことは郷原信郎氏も指摘するように自治体行政上のコンプライアンスに抵触する恐れは高い。経営管理部長は「軽率だった」と非を認めており、謝罪した。

疑問が残る政策集:局長とのやりとり

疑問が残るのは2つ目だ。政策集のドラフトに「●●局長作成ベースのものを整理」と名前が記載されていた総合政策局長(元資料では●●は実名)は、選挙運動性を否定した。以下は主なやりとり(Qは編集部、Aは局長)。

Q:コンプライアンス的に際どかったのでは?

A:と、(アゴラの)記事には書いてあったが、私は作っていない。どうやって作られたかはわからない。ただ途中の過程において副知事から内々に個人的にいただいたというか、いまこういう感じで参考に渡しておくといただいたものだ。(平成)30年3月に(県の)総合計画をつくった表があったものだから、それとどう違うかチェックしてみんといかん、と思って自分で内々に整理してみただけだ。

Q:しかしあなたの名前が書いてあり、作成していたのをほかの職員が整理したかのように見えるが。こちらの取材では複数の部署の職員が政策に関連する情報を出すように要請されたとの苦言もある。

A:そうなんですか。私は別に(石井氏のサイトに)発表された政策集は作っていないから、項目をどうやって決めて、内容もどう書かれたか、わからないが、いま申し上げたように、副知事から「いまこういうものを考えているので」と個人的に、内々にもらったものが表に出てしまった(苦笑)項目のチェックをし、整理をしていたことなので、それはいいのかなと。ただ、表には出せないとは思った。

Q:ある職員は「役所のPCの中にあってはならないもの」と指摘している。

A:内々にもらったものを項目を整理して、置いていたのは確かにまずかった。

Q:県の総合計画と比較したということか。

A:それと比べてみただけ。それ(編集部が持参した完成版をみて)とはまた(中身が)変わっていたようだが。

Q:知事の選挙戦での事実上のマニフェストで使われる認識はあったのか。

A:それはそうだが、私自身が作ったものではない。

Q:「局長作成ベースに整理」との文言からはあなたが作ったものをどなたかが整理したように思えるが。

A:それは財政課長と共有したからかもしれない。

Q:ファイルは総合政策局の方が見える場所にあったようだが。

A:見せるつもりもなかったし、見えないところに置いたつもりだった。

端的にまとめると、局長の見解は「局長作成ベースを整理」というコミット感とのギャップが大きい。山崎康至副知事から選挙の「参考資料」として共有されたものに過ぎず、チェックにとどまり、資料の作成にあたって加筆などはしていないというわけだ。

副知事は当て馬なのか?

実は1枚目の文書を確認した経営管理部長との取材のやりとりでも、副知事の名前は出ていた。そうなると副知事が一連の文書とりまとめを取り仕切っていたとみられるが、「当て馬」にされている可能性は否定できない。

はたして副知事1人の思惑だけで動くのか。今後矛盾する証言が出ないとは限らない。なお、副知事は特別職のため一般職よりは、選挙運動に関する規制は緩いものの、やはり地位を利用をしての選挙運動は禁止されている。

富山県庁(編集部撮影)

政策集の取りまとめに関して選挙運動の性質がどこまであったのか大きな焦点だが、どちらにせよ、局長が「見えないところに置いたつもり」だったというあたり、問題性があるとの認識があったことを示唆している。

さらに副知事が知事の意向を忖度して自主的に動いたものなのか、それとも知事が選挙準備の指示をしたのかが今後の焦点になるのは間違いない。

文書はすでに「消失」。長期政権への不満噴出か

一連の文書づくりを問題視する複数の関係者は、特定の候補者を支持しているというよりも、「資料づくりにかかる人手や経費が税金で賄われてしまう」といった疑問が根底にありそうだ。

石井氏の過去の選挙に際しても、政策資料をあげるなどの「非常稼働」が繰り返されてきたことが指摘され、4期16年の長期政権が続く中でたまっていた不満や怒りが一気に噴出したようにみえる。地元メディアの報道を見る限り、石井知事自身のコメントからは違法性への認識はうかがえないが、今後、実態との解離が浮き彫りになるのだろうか。

関係者によると、当該の文書はこの日夕方までに、県庁内のイントラネットで確認できなくなっていたという。すでに処分されたか、別のフォルダ等に移された可能性がある。アゴラ編集部はすでに情報公開請求をしているが、果たして投票日前に開示されるのだろうか。

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