下降する航空会社、支える政府

2020年10月08日 14:00

ビジネスのトップニュースで全日空が希望退職を実施すべく労働組合との協議に入ったと報じられています。また、冬の賞与はゼロとするともあります。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

かつて日本航空が経営破綻した際には旧民主党政権が稲盛和夫氏を同社再建のリーダーとして指名したことから同社は旧民主党系とみられています。稲盛氏は当時、旧民主党を強く支持していたことも背景にあります。

一方、日本航空への破格の考慮、配慮に対して怨嗟の声が出たのも事実です。全日空はそれらの対応に対して当初から極めて厳しい非難をトップ以下が公然と発し続け、航空路線拡大交渉では海外路線を中心に全日空に圧倒的有利な采配がなされたのもご存じのとおりです。そして当然ながらそれは自民党が後ろから猛烈な支援をし続けた結果でもあり、傍で見ている一般人の我々でも全日空の快進撃というより攻めすぎ、やりすぎでやや無謀なところも無きにしも非ずでした。

経営成績で見ると与党主導で下駄をはかされた全日空と比べて、地道で堅実な再建をしてきた日本航空が財務的に体力があります。全日空は6月末で長短借入金だけでも1兆円規模、機材数も従業員数も日本航空に比べ全日空がはるかに多くなっています。

全日空が国際線に積極攻勢をかけたのは日本の人口が減少し、新幹線網もどんどん拡充していく中で成長の余地が限られるからであります。一般的なイメージなどの評価は全日空の方がよいようですが個人的には日本航空に軍配を上げます。理由は国際線に限って言えばCAの質です。日本航空の方が英語も概して上手だし、サービスに落ち着きを感じます。全日空は飲み物のサービスを飛ばしたりCAの動作が全体的に落ち着きがないように感じます。あくまでも私の主観なのですが、急成長させたために人材が育っていないのではないかというふうに感じています。

さて、話は変わりますが、海外在住の日本人の方にはやや朗報が入ってきました。日本に入国の際に要求されていた14日間の隔離が免除方向で検討が進んでいるようです。但し、現時点では行動計画を提出するのはともかく、自宅と勤務先のみの移動に制約され、公共交通手段は使えないとなっています。はっきり申し上げるとこれでは商用にならないです。ビジネス目的の相手に自分の会社に来いという横柄な仕事はできません。では商用ではなく、冠婚葬祭ならどうなるのでしょうか?(今は大々的な冠婚葬祭はないにしてもそれなりに人が集まるところにはいかざるを得ません。)

以前から申し上げているように日本はオリンピック対策もあり、世界に先駆けて国の扉を開けています。これは大きなチャレンジですが、コントロールがうまく機能するならば先々、極めて称賛されるべき英断であります。

ただ日本が積極的に人の移動を促進させる「GO TOキャンペーン」などをコロナのさなかに展開せざるを得なかったのも「ウィズコロナ」政策をとらざるを得なかったからでしょう。観光業や運輸業の下支えという観点には当然ながら航空会社支援も含まれています。しかし、先述の通り、国内航空需要の頭打ちから海外に展開している航空会社への経営的打撃は強烈であり、海外では数多くの航空会社がすでに倒産しています。またアメリカでは航空業界への政府からの支援も行われるなど極めて神経質な展開となっています。

この状況に於いて日本政府はコロナがあらゆる業種に悪影響を与えている中で特定業界、業種、企業だけに支援をするのは日本の従前の方針からして極めて難しいものがあります。仮に全日空を支援するとしても直接的であからさまなことはできません。となれば海外とのアクセスをより広げ、航空需要を高めるしかないというのが苦渋の選択だったのではないかと思うのです。

極端なことを言えば全日空が倒産するようなことがあっても日本航空に行ったような支援は今できないわけで、それゆえに表向き自力再建をしてもらわねばならないのであります。多分ですが、経営側の組合側への希望退職打診も実質的には出来レースのような形で展開すると思われます。

同社の今年の賞与は夏が1カ月、冬がゼロ。日経には「賃金カットで年収3割減に」とあります。経済学的にみると100の給与をもらっていた人は100の生活水準に基づく支出計画をしています。ところが収入が突然70になっても生活水準は簡単に70に落とせないため、多くの家計は貯蓄の切り崩しが行われます。また住宅ローンでボーナス月の返済を多く組んでいる人にとっては目も当てられない事態になるでしょう。

背伸び以上に伸びきった全日空には厳しい試練となりますがどうか乗り切ってもらいたいものです。話題にならない日本航空も同様の厳しさがありますがまだ10年前のあの悲劇が体感として残っているため、耐える力ははるかに強いでしょう。双方、頑張ってもらいたいものです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年10月8日の記事より転載させていただきました。

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