投票日後の混乱と、トランプの米国、バイデンの米国

2020年10月09日 06:00

米大統領選の行方

トランプ大統領は、新型コロナに罹患後一応の回復を得て退院した。まだ予断を許さないが、もし重篤化すれば有権者に単なる肥満した不健康老人と見做されかねなかった所、パワーアップして米大統領選の選挙戦に復帰する趨勢だ。

退院後、健在ぶりをアピールするトランプ大統領(本人ツイッターより:編集部)

 102日に発表された、投票日前の経済指標として最も重要な9月度の失業率は若干の改善となり終わった。113日の投票日までの主な変数は、コロナの状況と舌戦の行方と、オクトーバー・サプライズで何が飛び出すかになった。

 世論調査では、激戦州を含めバイデン元副大統領が依然としてリードしているが、隠れトランプは前回大統領選よりも増えているとも伝えられる。トランプ大統領、バイデン氏のどちらかが圧倒的な差を付けない限り、郵送投票があるためその結果と判定を待たない限り当選者は確定しない。

 この不安定な時期を狙って、中国が何らかの策動をする可能性はある。それは、南シナ海、尖閣、台湾に関するものかも知れないし、米国内の分裂を引き起こすものかも知れない。

 だが、この時期に策動すればトランプ大統領の報復を招く。それは、例えば南シナ海の中国人工島爆撃か、中国元・米ドル交換の制限等、宣戦布告に近いものを含む。そしてそれは米国を大統領下に一つに団結させ、最高裁判断まで行く可能性のある郵便投票結果の判定に於いてトランプ大統領に優利に働くだろう。

 一方、中国が自重していた場合でも、もし郵便投票の結果で再選危うしと思えば、トランプ大統領は黙って負けて行くよりも何らかの対外的アクションを起こす可能性もあり、何れにしても国際的リスクが高まる時期が続く。

 トランプの米国とバイデンの米国

さて、ここまでは仮定に仮定を積み重ねた一つの物語だが、元より如何なる道程を経てもトランプ大統領、バイデン氏の何れかが次期大統領となる。

The White House/Flickr:編集部

 トランプ大統領が再選された場合、上下議会の新たな構成にもよるが、一期目と違い選挙を意識する事なく短期の株価、景気状況と支持率に縛られなくなるので、本格的に対中強硬手段に出る事が出来、棍棒とディールの硬軟織り交ぜて中国の牙を抜きに掛ると思われる

 トランプ大統領は、米国の復活と共に、米中覇権戦争での勝利、中東平定策の完結によって歴史に名を遺す事を目指すだろう。

 一方、バイデン氏が勝利した場合はどうか、内政ではグリーン・ニューディール等の巨額政府投資、福祉の充実、それらの財源としての増税で米国は社会主義化して行く。対中外交では、自身の中国とのコネクションと親近感により緩和的な対応を取ろうとする。

バイデン民主党大統領候補(バイデン氏HPより:編集部)

 議会民主党は対中強硬なのでバイデン氏が大統領になっても緩和的な対応を取れないとも言われているが、議会民主党はロシアにも同時に強硬策を取るため、対中強硬策は相対化される上に、結果として中露同盟を強化し軍事面では米国vs中露の図式がより鮮明となり米国の覇権は大きく後退するだろう。

 ロシアと中国という2匹の悪魔が居れば、マシな方の悪魔と手を結び大悪魔の方を退治する。戦略の本質とは詰まるところ優先順位付けであり、それは古今東西変わらない。米民主党と主流マスコミ、エスタブリッシュメントにはその当たり前の認識が決定的に欠落している。若しくは分っていながら色々な思惑の下に敢えて見ないふりをしている。

 トランプ大統領が再選されても米中覇権戦争に勝利出来るとは限らない、しかしバイデン政権ならほぼ確実に中国に徐々に呑み込まれて行く事になる。

 その場合、日本はこれまでより一層諸外国と結んで米国を踏みとどまらせ、中露の間に楔を打ち込み時間を稼ぎつつ、「次なるトランプ」の出現を待たざるを得ないだろう。

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佐藤 鴻全
政治外交ウォッチャー、ブロガー

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