バロンズ:バイデン勝利が予想されても、米株高の理由

2020年10月12日 06:00

バロンズ誌、今週はカバーに資本財の上昇余地を取り上げる。いま鉱山を訪れれば、キャタピラー797Fを目にするだろう。車高7.6メートル、重量290トンのトラックに、電気自動車大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が羨望の眼差しを向けるはずだ。なぜなら、それは自動運転が可能なのだから。

ただ、未来は利益を生み出すかに掛かっている。キャタピラーの場合、自動運転のトラックに対し500万ドルの値札をつけることができ、そしてソフトウェアやデータを合わせればそれ以上の収益が期待されうる。テクノロジーは単にテクノロジー株だけでなく、資本財も恩恵を得る公算だ。ロックウェル・オートメーションは、自動化のデータを元に売上の安定化を招き将来において利益を計上しうる企業だ。資本財はテクノロジ―株から出遅れてきたが、今後はアウトパフォーマンスが期待できる可能性をはらむ。詳細は、本誌をご参照下さい。

カバー写真:Gage Skidmore/Flickr

突如として、米株相場は増税の可能性を含め何も懸念しなくなった―Suddenly, Nothing Worries This Stock Market—Not Even a Possible Tax Hike.

恐らく、バーに腰掛けるギャンブラーですら、正しかった――株式はただ、上昇する。

新型コロナウイルス向け追加経済対策への期待が10月5日週の米株主要指数を平均4%押し上げ、9月の高値まであと3%に迫る勢いだ。しかし、強気派は追加支援策なしでもV字型回復が市場を支えると見込む。こうした見方は、思い起こせば2010年頃と変わらない。経済がつまずけば米連邦準備制度理事会(FRB)が金融緩和を行い、株価を押し上げ、将来のことはその後に考えればよかった。もし経済が順調に回復し続ければ、Fedの緩和策は必要なく、株式相場も上昇する。足元も、同様な考えが市場を席捲しているかのようだ。

11月3日の米大統領選の見方も、同様にポジティブに捉えられている。ブルーウェーブ(民主党の米大統領が誕生し、民主党が上下院で過半数を獲得する)の展開を迎えても、市場は強気だ。これは、トランプ政権と共和党による上院の多数派獲得がビジネスにポジティブとする従来の見方に反する。

もちろん、誰もが2016年の世論調査の結果を忘れているわけではない。当時はクリントン候補が容易に勝利するすると見込まれ、選挙まで3週間半の間にあらゆる事態が起こりうる。

大統領選での圧倒的勝利は、郵便投票で結果判明が送れるリスクを低下させるだろう。同様に、選挙前に追加経済対策が成立せずとも、寛大な対策が選挙後に通過する公算が大きい。

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作成:My Big Apple NY

3月27日に成立した約2.3兆ドル相当の景気刺激策(CARES法)は、アトランタ地区連銀によれば米7~9月期実質GDP成長率を前期比年率35.2%増へ押し上げるだろう。これにより、4~6月期実質GDP成長率の31.7%減を相殺する。しかし、所得を下支えする政策なしに成長率は10~12月期に再び3%減へ落ち込む見通しだ。

とはいえ、政治的並びに経済的な懸念が後退したことはVIX指数をみても明らかだ。足元、同指数は25~30で安定的に推移している。VIX先物動向も11月12月の先物取引も大幅に減少し、大統領選が接戦となり結果判明まで時間が掛かるリスクなどが後退した様子が浮かび上がる

その一方で。米30年債利回りは1.574%と4ヵ月ぶりの水準まで上昇した。インフレ連動債も1.853%と2019年9月以来の水準へ上昇し、Fedの2%のインフレ目標まで15bpに迫る(ただしFedは2%超えのインフレを許容する姿勢へシフト)。

米長期債の利回り上昇はファンドの資金流入を招き、バンク・オブ・アメリカによれば、前週は259億ドルと過去2番目の高水準を記録した。一方で、株式ファンドへの資金流入は44億ドルにとどまる。

米株市場は、バイデン候補の税制改正法の撤廃すなわち増税を含め問題視していないようだ。民主党の政策綱領に基づけば、キャピタルゲインの最高税率は43.4%と、足元の23.8%(メディケイド向け上乗せなどを含めたもの)から引き上げられる見通し。そこには、所得に紐づき徴収される州のキャピタルゲイン税は含まれていない。

JPモルガン・チェースのニコラオス・パニギルゾグロウス米株トラテジストによれば、1986年から2012年にかけ、キャピタルゲイン税が引き上げられた当時、米株は平均5%下落した。同時に、税制変更は米株相場に一時的ながら影響を与えてきた。仮に民主党の税制案が2022年1月1日に発効するなら、2021年10~12月期に下落が予想される。

長期的なキャピタルゲイン税の影響はまちまちで、経済モデルは成長に大きな影響を与えないとパニギルゾグロウ氏は語る。何より、足元の超低金利政策と米債に対する米株の高いリターンを踏まえれば、キャピタルゲイン税引き上げのによる米株相場への影響は、過去と比較すれば限定的にとどまる見通しだ。少なくとも、パニギルゾグロウ氏はそう予想する。


ブルーウェーブ、あるいはブルーツナミと呼ばれる民主党の大躍進が予想されながら米株高が続く背景として、こちらで紹介したように①税制改正法案の撤廃は数年先(コロナ禍では早々に実施しない、法人税も28%ではなくそれ以下にとどめる)、②中小企業並びに中低所得者層への手厚い支援策を提供、③民主党政権とねじれ回避に伴う円滑な法案可決――が見込まれていると言われています。

バロンズ誌は今回、それに加えて1)選挙結果がもつれるリスク回避、2)キャピタルゲイン増税の影響は限定的――と指摘しました。ただ、ここで挙げられていない点があります。a)ワクチン開発をめぐるワープ・スピード作戦、b)対中政策、c)ツインデミックによる景気減速リスク――などです。

もちろんa)に関して民主党も全力を挙げるのでしょう。b)に関しては追加関税撤廃で喜ぶ業者が想定されつつ、c)に関して言えばバラマキ政策で米国債の増発で他国への依存度が高まるリスクをはらみます。日本と違って以前として約3割がを海外に依存し、しかも海外自体、コロナ禍の経済減速で米国債を取得できる余力が低下しており、再びサステナビリティが意識されてもおかしくありません。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2020年10月11日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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