菅さんの「政治家の覚悟 官僚を動かせ」改訂版が示唆するもの

10月20日に発売されるようだが、菅さんの「政治家の覚悟 官僚を動かせ」改訂版が大評判のようである。

政治家の覚悟 (文春新書 1287)
菅 義偉
文藝春秋
2020-10-20

 

さすが菅さん、と言うべきか。

改訂前の原著はネットでしか流通していないようだが、大変な値段が付いているようである。

これに目を付けた出版社もさすがである。

しかも、改訂版もしっかり売れるような仕掛けが施してあるそうだ。

売れないような本しか出せない私からすると実に羨ましい話である。

どこか私の本を出してくれるような出版社はありませんかね、と聞きたくなる。

さて、どんな仕掛けをされたのか。

改訂前の原著にあったある意味で現在の菅さんにとっては不都合な記述が何の注釈もなくそっくり削除されているようだ。

それに気が付いた人はエライ。

あえて不都合な記述を削除することにした出版社なり編集者。あるは菅さんのアドバイザーもエライ。もっとも、この場合の「エライ」は、多少「エライことをやっちゃいましたね」くらいのニュアンスを籠めた「エライ」なんだが…。

さて、どんな仕掛けか。

朝日新聞デジタル版に井上昇氏の解説が載っているが、これによると、

今回の改訂版で削除されたのは、旧民主党の政権運営などを批判した章。東日本大震災後の民主党政権の議事録の保存状態を問題視し、『政府があらゆる記録を残すのは当然で、議事録は最も基本的な資料です。その作成を怠ったことは国民への背信行為』と公文書管理の重要性を訴えていた。

ということである。

極めて正論で、そうだ、そうだと思わず拍手したくなるような一節だと思うが、改訂版ではこれを外すことにしたようである。

改訂版を購入した方は、改訂前の原著も読みたくなるはずである。

一石二鳥とは、こういうことか。

もっとも、悪くすると、菅さんにもその礫が当たってしまうかも知れないが…。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2020年10月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。