富山知事選:現職敗北の場合でも菅政権「初戦黒星」にならないワケ

2020年10月21日 06:01

終盤戦に突入した富山県知事選(25日投開票)は、前半戦で「横一線」と報じられた情勢に動きがあった模様だ。TBS系のチューリップテレビは19日夕方のニュースで、新人の前日本海ガス社長、新田八朗氏が優勢と伝えた。

石井氏、新田氏ツイッターより引用

一方、地元紙の富山新聞は20日の朝刊で引き続き「横一線でゴールへ」などと慎重な見出しを掲げながらも、新田氏が大票田である富山市と高岡市で共にリードしたと明記しており、5期目を目指す現職・石井隆一氏が苦境に立たされていることがうかがえる。

全国的な視点で見ると、富山の知事選は菅政権発足後、初めての大型選挙だった。石井氏は自民党と公明党の推薦を得ており、仮に石井氏が敗れるような波乱があると、朝日新聞などの“反政権メディア”が「菅政権、船出から黒星」などと論評し、学術会議問題で支持率を落とす政権に対して、攻勢を強めようとする局面が想定できなくもない。

しかし、もし仮に朝日新聞などが投票翌日の朝刊で「政権に打撃」などと書くことがあれば、政治のプロから「フェイクニュース」との指摘を受ける可能性もありそうだ。それは、周知の通り、今回の選挙は半世紀ぶりの「保守分裂選挙」で、新田氏を自民党の一部が支援しているからというだけではない。

注目される「連続3期まで」の自民党則

森氏(富山市サイト)

話は今年1月にさかのぼる。石井知事と対立する富山市の森雅志市長が年頭の定例記者会見で持ち出した、ある「ルール」のことが注目を集めた。

この会見で、森氏は県内の首長で初めて新田氏支持を公言したのだが、石井知事の続投を支持しない要因として、自民党が党則(選挙対策要項)で、都道府県知事選の候補推薦を「連続3期12年まで」としていることを挙げたのだ。

「連続3期まで」の規定は2006年、当時の世の中で批判が多かった首長の多選を抑制する方策として導入された。その後、各地の首長選で、多選の現職の続投に党内で異論が出ると、しばしば揉める原因にはなっている。ただ、自民党の地方組織が4選以上の続投支持を決めた場合は、党本部の代わりに都道府県連が推薦を出すことは認めている。

今回の富山県知事選は、当初、石井氏と新田氏が推薦獲得を競い、自民党富山県連が面接の末に選考するという異例の展開を経て石井氏支持の結論に落ち着いた。しかし石井氏はすでに4期つとめており、一部の報道によっては「自民党推薦」と表記されるものの、先の党則によって党本部ではなく県連からの推薦を得た形になる。

菅政権は「高みの見物」?

だが、裏を返せば形の上では党本部の推薦ではないため、仮に石井氏が敗れた場合でも、党総裁である菅首相の体面をただちに傷つけるとは言い難いことになる。ましてや今回、石井氏と競り合う新田氏を、前出の森市長をはじめ、自民党の一部勢力が支援している以上、新田氏が勝った場合でも結局は「自民系」の知事が誕生することになる。

また、菅首相と近しい日本維新の会も新田氏を支援。維新の会副代表でもある大阪府の吉村洋文知事は先頃、新田陣営の動画に登場し、応援メッセージを送った。

結局、菅首相からみれば「石井氏敗北で黒星発進」どころか「どっちが勝っても白星発進」というノーリスク。政権、党本部としては“高みの見物”と言える状態なのだ。

余裕の笑み?(官邸サイトより)

これは富山県内の自民党関係者にとって、中央政界との“しがらみ”から自由度を高めた形で選挙を戦うことが可能になっているともいえる。保守分裂選挙は近親憎悪的な激しさを伴いがちとはいえ、富山県の民意に即した政策論争を最後まで建設的に行うことが望まれる。

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