移動しなくてもよい新しい社会

2020年10月21日 14:00

私はカナダでの29年の生活で6-7回引っ越しをしていますが、そのすべてがダウンタウンのある一角のエリアのみに留まっています。理由はカナダに来た時に感じた職住接近に非常に高い価値観を得たからです。今は家から会社まで歩いて3分です。職住接近になって思ったことは24時間の価値が非常に高まったことでしょうか?

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

日本に住んでいたときは通勤に片道1時間強、つまり往復でほぼ3時間近くを失っていたわけで1日を21時間しか利用できない状態にありました。

もちろん、音楽を聴き、本を読むなどの工夫をしていましたが必ずしも思った通りにならないこともあります。電車が混んでいる、荷物が多くて手が塞がっている、疲れていてとてもその気にならない…といった具合です。

通勤を会社の業務と家庭との気持ちの切り替え距離という人も多いと思いますが、長時間の電車通勤は多くの勤労者諸氏に仕事が終わってもまっすぐ帰らない癖と理由を作った点は否めません。会社と家の間に「休憩処」「お食事処」(=まっすぐ帰らない)が入ってしまうのです。これをすると余計時間が無駄になるのであります。

日経ビジネスの特集に「首都圏分断 『移動なき社会』の未来」という特集があります。コロナがもたらした移動の短縮化、外国人居住者がもたらした異文化による囲い込み、「昭和の団地」に取り残された高齢者一人住まい、徒歩圏経済圏の再確立といった内容です。なかなか興味深い内容でした。

我々は長距離移動や高速移動できる新幹線や航空機といった利便性に頼り、日帰りや一泊でかなりの遠隔地まで仕事に行くことを良しとしてきました。私もかつてバンクーバーから東京1泊出張したことがありますが、移動時間に対して実労働時間はほんのわずかという事実は見て見ぬふりだったかもしれません。私は新幹線の高速化や伸延を否定するつもりはありません。(リニアはどっちでもいいですが。)ただ、人々はさして移動をしなくても十分に暮らせる時代が来たという実感が強いのです。

東京を例にとりましょう。なぜ、東京都心に行きたがるかといえばそこには「すべてが集まる」と期待していたからです。しかし、最近はチェーン店が増えたこともあり、ほとんどのターミナル駅の繁華街では何処も同じ商品がゲットできます。むしろ東京に出なくても川崎、横浜、大宮、千葉、船橋、北千住、八王子や立川とったサブシティがより大きくなりつつあります。そしてモノをゲットするならほとんどがネットで注文、配達してくれる時代です。移動は最小限で済むと考えてよいのでしょう。

私があえて日本で大して移動しなくてもよい社会が生まれつつある中で不満があるとすれば自然環境との接点が少なく、そればかりは足を延ばさないと駄目だということでしょうか?私は毎週、ここバンクーバーでロードバイクに1時間半ぐらい乗っているのですが、コースを選べば自転車道路が充実しているため乗っている間で信号は10-20以内で収まります。東京では絶対にありえません。

また、バンクーバーは山が迫っており、湖や池も多いのですがトレイルが大変よく整備されており、いたるところでちょっとしたハイキングや散歩がてらの山歩き、はたまたスポーツ登山(走るようなスピードで山を駆け上がっていく)を無料で楽しめます。

私は以前からターミナル駅前繁華街の時代は終わり、もっと私鉄沿線の駅前が再復興する時代がやってくると申し上げていたと思います。コロナは確かに人々の価値観を変えましたがそれ以上にテクノロジーが生み出した移動の短縮化が人々のライフを変えると思います。とすればこれから日本に起きる変革とはクオリティオブライフの追及とみてよいと思います。

日経がカナダの投資ファンドが日本の不動産に1兆円投じると報じています。その記事に気になる記述があります。「日本は住宅が比較的狭く、IT(情報技術)インフラの整備も不十分なため、オフィス需要は大幅には減らないとみる」というわけです。

これは2つの可能性を意味しています。まずは木造の古い小さな家から大きめの集合住宅やより広い戸建てにすること、もう一つはやっぱり事務所通いは必要だということであります。小さな古い住宅地をまとめ、高層にして緑地を増やすといった工夫は可能でしょう。在宅VS通勤については日を改めて近日中に考えを述べたいと思います。

日本はまだまだこれからが面白くなる国だと思っています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年10月21日の記事より転載させていただきました。

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